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家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
二章 駄メイドと送る同棲生活

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お前がいいんだよ

 (さかき)さんの煙草休憩が終了した。

 その後彼女はホールへと戻り、再び死んだ目でチェキ撮影に応じていた。


 そして僕はというと、休憩中に溜まった食器をせっせと洗っていた。

 正直、暇よりは仕事があるほうが助かる。

 榊さんは絶対、暇な方がいいと言うと思うけど。


   〇


 十五時頃になると、さすがにお客さんの波は落ち着き始めた。

 その間に僕は残りの休憩をもらい、榊さんも僕と入れ替わりで煙草休憩をしていた。


公太郎(こうたろう)

 裏口から戻ってきた榊さんが、厨房を通る際に怖い顔で僕の方に近づいてきた。


「今日、しこたま酒飲みたい気分だから、仕事終わりに付き合ってくれるか?」

 鬼のような形相に、僕は普通に腰を抜かしそうになった。

 働き過ぎて、榊さんがおかしくなりかけている。


「いいですけど、僕でいいんですか?」

 同僚の人や、お酒を飲める人の方がいいのではないだろうか。

 そう思っていたのだが──。


 凪いだ湖面のように澄んだ彼女の瞳が、ためらいもなく僕にそそがれる。


「バーカ。お前がいいんだよ」


 心臓の鼓動のギアが一段階上がる。

 恥ずかしげもなくそう言われ、僕は完全にノックアウトされてしまった。


「……ぼ、僕でよければ」

「ん。あんがと」


 榊さんが僕に背を向ける。


 無限に上昇する体温を感じながら。僕は、壁の向こうに消えていく榊さんの背を見つめ続けていた。


   〇


 十六時になる頃には、かなりお客さんの数が減っていた。


 唐木田(からきだ)さん曰く、いつもと同じくらいか少し多いくらいの客の数、らしい。

 ということで、僕のアルバイトはここで終了となった。


 唐木田さんに連れられ事務所までいき、僕はそこで、給料の入った封筒を店長から授かった。


「今日はありがとう。また忙しいとき呼んでもいいか?」

「はい。僕なんかでよければ」

 榊さん経由で僕を呼ぶのも面倒だろうということで、一応僕と唐木田さんは連絡先を交換することにした。


「にしても。優秀だし、単発じゃちょっと勿体ないな。有馬くんさえよかったら、うちで長期的にバイトする?」

 唐木田さんの顔を見ればわかる。それは、社交辞令や冗談の(たぐい)ではなかった。


 僕が、『メイドを(にゃ)めるな!』でバイトを……?

 榊さんやまりにゃんさんやルイにゃんさんといった、個性的なメイドさんたちと一緒に働けるのは、正直楽しそうだ。


 でも……。

「たまにならともかく、さかにゃんと一緒に働くの、ちょっと気恥ずかしいかもです……」

 同棲しておいて今更なにを、という感じではある。だが、一緒に住んでいる人とともに働くというのは、なんともむず痒いものがある。


「はは。そっかそっか。ま、気が変わったらまた言ってくれ」

「はい。実はちょうど、バイト探してる途中なので」

「ああ。いつでも待ってる」


   〇


 榊さんは十七時退勤ということで、僕はそれまで適当に時間を潰すことにした。

 そういえば、初めて『メイドを(にゃ)めるにゃ!』を訪れた際も、榊さんの退勤を待っていたんだっけ。


 榊さんは仕事後に一服するみたいだから、店を出てくるのは十七時十五分くらいだろうか。


 不意に、僕の腹が小さくなった。その音で、昼食を食べ損ねたことを思い出した。

 人込みに紛れて道を歩きながら、どこかのカフェで軽食でも食べようかなと考えていた。


 しかし、以前榊さんと居酒屋にいった際のことを思い出した。お酒が飲めない僕を気遣い、榊さんはたくさん料理を食べさせてこようとしたのだ。


 ……カフェは、やめておこうかな。

 今回は、榊さんの期待に応えてあげたいから。


 適当に電気街を歩いていると、榊さんからLINEが届いた。

『仕事終わった。歩きたくないから、メイド喫茶まできてくれ』


「……どゆこと?」


 結局駅までは歩くことになるのに?

 疑問を持ちつつも、僕は雑居ビルに向かうのだった。


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