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家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
二章 駄メイドと送る同棲生活

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デス寿司酢を使ったデス寿司屋のデス寿司、「デス寿司酢デス寿司」

 (さかき)さんのTwitterアカウント、さかにゃんのフォロワーが爆増していた。


「どっから辿ってきたんだ? コイツら」

 増え続けるフォロワーを見て舌打ちする榊さん。

 なんでフォロワーが増えてるのにちょっと嫌そうなんだよ。


「フォローされるの、嫌なんですか?」

「ありがたいけどさ。もし変にまとわりついてくるようなやつが増えるなら、メンドイな」


 フォロワーが増えた原因を探るため、僕らは榊さんのバズツイートの投稿者のアカウントに飛んだ。


 理由はすぐにわかった。

 投稿者が、バズツイのリプに榊さんのTwitterアカウントをメンションしてくれていたのだ。


「榊さんの名刺って、Twitterアカウント書いてましたっけ」

「店の規定で書くことになってるから、ちっさく書いてる」


 榊さんは、二人の大学生のどちらにも名刺を渡していた。

 きっとこの投稿者は、榊さんの「宣伝してほしい」という旨の言葉を覚えていてくれたのだろう。


 僕は、改めてさかにゃんのアカウントに飛ぶ。

 ツイートはネタツイばかりだが、bioにはしっかり『メイドを(にゃ)めるにゃ!』 所属であるということが書かれてある。これも、店の規定なのかもしれない。

 いや、規定はしっかり守ってるのにネタツイしかしないのはなんなんだよ。


 まあネタツイはともかく、結果的にフォロワーが増えてお店の知名度向上には貢献しているんだよな。


「なんでネタツイしかしてないのに、フォローしてくれてンだ? やっぱ顔か?」

 そうは言っているが、榊さんは本気で怒っているようには見えなかった。


「どうでしょうね」

「……まあ、顔きっかけでネタツイが見てもらえると思えば、いっか」

 榊さんは、自分の顔の美しさと自分の信じる笑いとの歪な関係に、少しずつ折り合いがついてきているのかもしれない。


「榊さんが言った通り、ちゃんとお店の宣伝になってよかったじゃないですか」

「そだな。想定よりもちょっと反応がよすぎるけど……。んー、あたし目当ての客が増え過ぎたらそれはそれで面倒だな。給料増えねーかな?」

「売上アップしたらありえそうですね」


 ……。

 ……?


 大儀そうに欠伸をする榊さんを見つめながら、僕は、自分の胸になにかがつっかえているような感覚を覚えていた。


 榊さんのフォロワーが増えるのは素直に嬉しい。

 でも、彼女が遠い存在になっていくのが少し寂しいのだと思う。


 ……だ、駄目だ。ヘラっていたら、また榊さんに見透かされてしまう。


 気分を切り変えるために、僕は自分の頬を軽く二回叩いた。


 そして、キリッとした顔で榊さんを見ると。

「ヘラりかけたのか?」

「……」

 鋭すぎて怖いんだけど、このメイド。


「別に、あたしはどっこもいったりしねーって」

 思ってることまで見透かされてる。


「……ん?」

 増え続けるさかにゃんのフォロワー数を眺めていると、さかにゃんの最新ツイート、『全然催眠術とか使ってくる格闘家』へのリプが増えてきていることに気が付いた。

 そのリプの内容は、このアカウントが本当にバズツイートの被写体なのかを疑っているものが多かった。


 ……まあ、疑うよな。一応メイド喫茶の店員のアカウントなのに、宣伝ツイ一切なしでネタツイばっかしてるんだから。


 ちなみに榊さんのメディア欄には、彼女の顔写真等は一切存在しない。写真やイラストを用いたネタツイばかりである。


「せっかくフォロワー増えてるんですし、バズツイをリツイートしたり、バズツイに言及したりした方がいいんじゃないですか?」

 本人だと思われずに、せっかく増えたフォロワーが減ってしまうのも勿体ないだろう。


「んー。まあ、そうだな」

 やけに素直に頷き、榊さんは無言でスマホをタップしていた。


 数秒後。

 榊さんに目配せをされたので、僕は自分のスマホでさかにゃんの最新ツイートを確認する。


『デス寿司酢を使ったデス寿司屋のデス寿司、「デス寿司酢デス寿司」』


「なにがそうだななんだよ」

 自分のスマホに膝をぶちこみそうになってしまった。


 榊さんは、翻弄される僕をニヤニヤと歯を溢しながら観察している。


「やっぱお前、いい反応するよな」

「は、はぁ……。そうですか?」


 まさかこの人、自分のバズなんかよりも目の前の僕をいじることを楽しんでるのか?

 そのために、バズツイ直後に謎のネタツイを?

 初めてのバズに浮かれもせず、むしろそれさえも利用して?


 ……。


 クソっ。


 ──かわいいな、この人。


「いや、なんで赤くなってんだよ、コワ」

「なにも言い返せません」


 恥ずかしさから逃れるように、僕は榊さんの投稿したてのネタツイへのリプを見てみることにした。


 反応は、大体こんな感じ。


『は?』

『草』

『おもしれー女』

『感動しました……』

『歌詞に共感した』


 なんだか、意外にも受け入れられているというか、ノリのいい人が多かった。

 榊さんみたいな変な人に惹かれる人は、同様に変な人が多いのかもしれない。


 まあ、僕は変なんかではないが……。


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