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家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
二章 駄メイドと送る同棲生活

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わたしの聖剣……じゃなくて、光剣だった

 どうやら、本日やってくる予定の、我藤(がとう)さんとは別のもう一人の(さかき)さんの友達も女性のようだ。


 僕の部屋に女性を二人も招くのはなんだか凄く恥ずかしかったので、榊さんの部屋にきてもらうことにした。

 今の榊さんの部屋は僕の部屋よりも広いし、麻雀(まーじゃん)卓もあるし、その方が都合がいいだろう。


 ……まあ、どちらの部屋にせよ、大人の女性三人に囲まれて緊張しないはずはないのだが。

 耐えられるか? 僕の心臓。


   〇


 榊さんの友達がくる前に、簡単に部屋の準備を済ませてしまうことにした。


 ちなみに榊さんは、今日は普通のメイド服姿。

 ジャージメイドだと、我藤さんにいじられそうだから、という理由らしい。


 まず、榊さんと二人で中央のちゃぶ台を隅にどかす。

 そして、ちゃぶ台の代わりに麻雀卓を置いた。折り畳み式のコンパクトな麻雀セットだ。

 あまり高さがないため、床に腰を下ろして打つことになるだろう。

 榊さんの部屋にはよれよれでしなしなのクッションが二つあったため、これらを客人に使ってもらうことにした。


 もてなしようのお菓子やジュース、お酒を用意しているときに、榊さんが声をかけてきた。


「ガトさんと別の、もう一人くるあたしの友達な」

「はい」


「あたしと同年代で、名前は舞姫(まいひめ)っつぅんだけど」

「舞姫さん……」

 この間、我藤さんがバーで名前を出していた人のことだよな?


「正直、お前に会わせるのちょっと怖いんだよな」

 榊さんは、缶ビールのプルタブを押し込みながら、僕に鋭い視線を送ってきた。


「どうしてです?」

「駄目女だから」

「……」


 やっぱり、駄目女なんだ……。

 その情報に、僕の表情は緩んでしまった。

 そして、そんな僕の顔を見た榊さんは普通に舌打ちしていた。怖っ。


「どうして僕と駄目女を引き合わせたくないんです?」

「あ、や……別に?」

 目を泳がせながら、榊さんはビールを一気飲みする。


「僕が、好きになっちゃうかもしれないからですか?」

「──ゴホっ」

 咳き込みながら、缶ビールを麻雀卓に置く榊さん。


「い、いや。別に? お前が誰を好きになろうと、あたしには止める権利なんてねぇし」

 榊さんは、手の甲で口元を拭う。


「ただ、あたし以外の駄目女に鼻の下伸ばすのが、なんか気に入らねぇってだけ。お前が負けていいのは、あたしの駄目さだけだ」

「そんな、バトル漫画のライバルキャラみたいなこと言われましても」


 その後もしばらく準備を続けていると、唐突に玄関のチャイムが鳴った。

 少し時間には速いが、二人の内のどちらか、または二人ともが到着したのだろうか。


公太郎(こうたろう)。出迎え頼めるか?」

 換気扇の下で煙草休憩している榊さんにそう言われ、僕はゆっくりと玄関に向かった。


 解錠し、ゆっくりと玄関を開けると。


「おっ。お久しゅう! 有馬(ありま)くん!」

 扉の隙間から、快活な声が飛んできた。


「どうも。我藤(がとう)さん」

 我藤さんは、細い体を滑り込ませるかのようにして部屋に侵入してきた。


 今日の我藤さんは、バーで見たときとはまた(おもむき)の違うファッションをしていた。


 今回は、深紅のチャイナドレスに身を包んでいる。生地の質感を見る感じ、ペラペラの安いコスプレモノではなく、かなり高価そうだ。

 グラサンも健在だが、今回は以前とは違いレンズが丸く、かなり小さい。それが、チャイナドレスによく似合っていた。


「ん? なんやなんや? じろじろ見て。惚れてもーたか?」

「あ、いや……。そういうわけではないですが、綺麗だな、とは思います」

 我藤さんは一瞬目を丸くした。それからすぐに、快笑(かいしょう)して僕の肩を強く叩いた。


「わは! なんやキミ、えらいモテそうやな!」

「いや、そんなことは」


 我藤さんが背を伸ばし、僕の耳元でこう囁く。

「でも、あんま他の女褒めると榊が嫉妬するさかい、ほどほどにな?」

「は、はぁ……」

 なんで我藤さんを褒めたら榊さんが嫉妬するんだよ。


「アイツ、結構繊細ちゃんというかメンヘラちゃんというか……。まあ、包み隠さず言うと、メンドイからな!」

「それは知ってます。でも、そこがいいんです」

「わかる!」


「楽しそうスね」

 僕と我藤さんが話していると、すぐ近くの換気扇の下で煙草を吸っていた榊さんが声をかけてきた。


「な? 有馬くん。コイツ、嫉妬しとるやろ?」

「してません。てか、我藤さん。その服あたし見たことないんスけど、また買ったんスか?」

「おー。そやねん。結構いい値段したんやけど、一目ぼれしてもーて」

 と、大輪のひまわりのような笑みを浮かべる我藤さんであったが。


「あたしに借金あんのに、新しい服は買えるんスね」

「スミマセンでした……」

 榊さんの一言で、我藤さんの笑顔は一瞬にしてしなびてしまった。


 そんな我藤さんを見て、僕は腕を組んで満面の笑みで頷いていたのだが。

「……がほっ!?」

 榊さんに、煙を吹きかけられてしまった。


「さ、榊さん、なんで……」

「なんかむかついたから」

「……助かります」

「うわっ。そういやコイツ、煙かけたら喜ぶんだった……」

「服売るから許してやぁ、榊ぃ~~」

「や、だから。毎回そう言って売ったことないでしょ、アンタ」


 なぜか不機嫌な榊さん。そんな榊さんに謝り続ける情けない我藤さん。そんな二人のやり取りを見て、脳汁を出し続ける僕。

 そんなカオスな状況に割って入ったのは、チャイムの音であった。


 三人の目が一斉に玄関に向く。


 恐らくだが、舞姫さんが到着したのだろう。


 二人に目配せしてから、僕はゆっくりと玄関を開けた。


 扉の隙間から現れたものを見て、僕はぎょっとした。


 黒い眼帯を右目に装着した、西洋人形のような顔立ちの女性の顔が存在したからだ。

 彼女が纏う雰囲気は、明らかに異端であった。なんだか、僕とは住む世界が違うというか……。


 彼女は、眼帯の付けていない左眼で僕を捉えた。

「我は、大天使アズマエルの第一従者、(レイン)・カナリアよ。大天使様の指令でやってきたわ」

「……?」

 なにを言っているのだろう。

 この人が舞姫さん? それとも人違いだろうか。レイン・カナリアとかよくわからないことを言ってるし。


 首を傾げながら、助力を乞おうと後ろを向いた。


 榊さんと我藤さんは、「そいつそいつ」という顔をしていた。

 いや、この人なのかよ。


「なにやらこの部屋の怨念がエグいと聞いてきたわ」

 エ、エグい?


「ここは我の聖剣……じゃなくて、光剣だった。──光剣キャパラルリリーの出番ね」

 なんか絶妙に語呂が悪いな。


 えっと、これは……。中二病、というやつか?

 確かに、榊さんと同年代の人が中二病だというのは、かなり残念ポイントが高い。

 そんなことを考えていると、後ろから我藤さんの声が飛んできた。


「有馬くん。そいつただの中二病ちゃうで。中二病に憧れとるだけの正常な異常者やねん」

「いや、中二病に憧れるってなんだよ」

 思わず後ろを向いて突っ込んでしまった。そんなの、初めて聞いたわ。

 邪気眼とか異能力に憧れるならまだわかるけど、中二病に憧れるってなに?


 もう一度前に顔を向けると、レイン・カナリアさん……もとい舞姫さんは、我藤さんの言葉に真っ赤になって縮こまってしまった。

 そして彼女は、先ほどまでの妙に作り物めいた声とはほど遠い、かわいらしい声でこう言った。


「あ、うぅ。言わないでくださいよぉ~……」

「……かわいい」

 思わず僕の心情が漏れる。

 すると、後ろから榊さんに思い切り煙を吹きかけられてしまった。

 なんで?


「ゲホぉッ!?」

 榊さんに背を向けていた僕は無事だったが、こちらを向いていた舞姫さんは咳込んでしまった。


「あ。スマン、舞姫。お前にかけるつもりはなかった」

 僕にかけるつもりはあったのかよ。


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