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家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
二章 駄メイドと送る同棲生活

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そんな二次創作みたいな設定ねぇって

 (さかき)さんは、僕のジャージメイド服姿を何枚か写真に収めたら満足したようだ。なので、僕はその後すぐに着替えさせてもらった。


 そんな僕をよそに、榊さんは着替えるのが面倒だと言って、いつものメイド服姿で酒を飲みながらくつろいでいた。


 その日は、結局ずっと榊さんの部屋で過ごすことになった。

 夜も更け始めた頃。榊さんがふらふらとした足取りで押し入れから敷布団を取り出した。


「今日はここで寝るんですか?」

「ちょっと横になるだけ」

 目が溶けている。絶対ちょっとではない。これは朝まで寝てしまうパターンだろう。


「明日は仕事ですか」

「仕事」

「シャワーだけでも浴びましょう」

「無理。朝いく」

 そう言って、榊さんは乱雑に敷いた布団の上に横になってしまった。


 落ち着く体勢を探しているのか、榊さんは布団の中でもぞもぞと動いている。

 やがて、九割ほど閉じた彼女の目がこちらを向いた。


公太郎(こうたろう)

 榊さんは、掛け布団の端を少しだけ持ち上げて、僕を誘う。

「一緒に寝るか?」


 彼女が僕のベッドに入ってくることは何度かあった。

 しかし、榊さんが布団に僕を誘うのはこれが初めてのことだ。


 勿論僕は動揺したのだが、鋼の意思で首を横に振った。

「いえ。榊さんとの同衾(どうきん)を当たり前にはしたくないので」

「あん? ンだよそれ」


「あなたを大切に思っているということです」

「……」

 榊さんは、声を失ってしまった。


 彼女が今酔っていることがわかっているから、普段は言えないような言葉が脳のリミッターを無視して飛び出してしまう。


 このままここにいると、更に恥ずかしいことを言ってしまいそうだ。

「一旦、僕の部屋に戻ります」

「え」

 榊さんの顔が、おもちゃを取り上げられた子どものように歪んだ。……そんな顔をしないでくれ。


「まっ、待てよ公太郎。この布団、お前の好きなあたしの匂いめっちゃ染み込んでるぞ?」

 どんな引き留め方だよ。


「それは魅力的なのですが」

 僕もなに言ってるんだ。


「すぐ戻ってきますから」

 そうして、僕は榊さんの部屋をあとにした。


「えぇ~~?」

 靴を履いている最中、榊さんのそんな声が玄関まで聞こえてきた。


   〇


 数分後。


 僕の部屋にある榊さんの敷布団を手にして、僕は再び榊さんの部屋に戻った。


「戻りましたよ」

 リビングまでいくと、眠りに落ちかけていた榊さんが焦点の合わない目をこちらによこした。


「あん? あたしの布団か? それで寝るのか」

「はい」


 僕は、榊さんが寝ているすぐ隣に敷布団を並べた。

 そして、静かにその中に体を横たえる。


 僕と榊さんの頭がすぐ横に並ぶ。

 僕たちは、首だけを傾けてお互いを見ていた。


「あー……。確かに、これはこれでいいな。なんか、家族みたいで」

「家族、ですか」

 その発想はなかった。


 僕はただ、榊さんとの同衾を当たり前にしたくなかっただけなのだが。


「僕たちが家族なら……。榊さんはなんか、お姉ちゃんって感じがしますね」

「そうか? まあ、年上だしな」


「お姉ちゃん」

 彼女の顔をじっと見つめながら言ってみた。

「……」


 榊さんは、ちょっと信じられないくらいにニヤけていた。


 その顔を見られたくないのか、彼女はさっと掛け布団を鼻の辺りにまで引き上げた。


「榊さんって、やっぱりめちゃくちゃ年下萌えなんですね」

「あ? ンなことねぇけど」


「少年とか弟とか好きなんですか?」

「そんな二次創作みたいな設定ねぇって」

「お姉ちゃん」

「……。ふふ」

 笑った後、彼女はハッとし、掛け布団で完全に顔を隠してしまった。


「や、マジでちげェから。一人っ子だから、弟か妹ほしいなって思ってただけだから」

「まあ、そういうことにしときます」

「は? 余裕かましやがって」

 舌打ちする榊さん。治安が悪い。


「お前だって結局あたしの布団で寝て興奮してんじゃねぇか」

「興奮はしてません。……まあ、確かに榊さんの匂いがして、安心はしますが」

「うわ。キモ」

 即座に罵倒されてしまった。


「お前、(にお)いフェチ?」

「……」

 肯定も否定もしないでおこう。だって、自覚がないのだから。

 まあ、どっちなのかと言われたら、そうなのかもしれないが。


「というか、お前も風呂入らずに寝ようとしてんじゃん。あたしのこと言えねぇぞ」

「それは……」

 確かに。


 なんか、流れでそうなってしまった。


「お前。大分あたしに染められてきてんじゃねぇか?」

「そうですね。まあ、悪い気はしません」

「お前って、カノジョの好きな音楽とか好きなファッションにめちゃくちゃ影響受けそうなタイプだよな」

「……」

 そんなこと思ったこともなかったが、そう言われるとそんな気がしてきた。


「主体性がないみたいで、なんだか恥ずかしいです」

「別にいんじゃね。そんだけ、お前の目にはあたしが魅力的に映ってるってこったろ」

「そうですね。榊さんは魅力的です」

「ふーん」

 榊さんは、もう照れもしなかった。


 それから僕らは、天井を見上げながらどうでもいい話をした。

 例えば、擬人化したら一番かわいい四字熟語はなにか、とか。


 僕の意見は、「曖昧模糊(あいまいもこ)」。

 そして榊さんは。


「あたし、は……」

 眠気がピークにきたらしい。完全に目を瞑りながら、榊さんはむにゃむにゃとこう言った。


付和雷同(ふわらいどう)……」

「……」


 それはちょっと、かわいさを「ふわ」に頼りすぎだろ。


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