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家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
二章 駄メイドと送る同棲生活

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たぶん女体化した公太郎は眼鏡かけてて、前髪長め。アシメで、片目が隠れてる

 飲み放題は九十分で、六十分になるとラストオーダーとなる。

 そして、いつの間にかラストオーダーの時間となっていた。


 僕はウーロン茶、(さかき)さんはハイボールを頼んでいた。


 結局僕は、今頼んだウーロン茶も含めて五杯ほどしか飲めなかった。これでも結構頑張ったつもりだが、榊さんは優に僕の二倍以上は飲んでいる。胃袋どうなってんだ。


 飲み放題が終わるまで、僕らは本当にどうでもいい話ばかりをしていた。

「公太郎が女体化したら、一部のオタクくんにめちゃくちゃ人気になりそうだよな」

 急になんなんだよ。


「そ、そうですか?」

「あと、押しに弱そうだから陽キャにめちゃくちゃ食われてそう」

「……」

 僕にどんなイメージ持ってるんだ? この人。

 ……いや、押しに弱そうというのは、その通りなのかもしれないが。


「たぶん女体化した公太郎は眼鏡かけてて、前髪長め。アシメで、片目が隠れてる。そのせいで顔があんま見えないんだけど、素顔は結構かわいい」

「ほう」

 おお。女体化した僕、結構かわいいではないか。確かにこれは、一部のオタクくんに人気が出そうだ。


「で、むっつりスケベ」

 それは、ただの僕だろ。


「性格は、たぶん今よりももっと大人しめだな。ついでに乳も大人しめ」

「勝手に僕の女体化姿が貧乳にされてしまった」

「巨乳がよかったか?」

「どっちでもいいよ」

 というか、選べるの?


「そういや、巨乳で思い出したけどよ」

「会話デッキになんで巨乳ピン差ししてんだよ」

「……っ、ふッ」

 榊さんの真顔が崩れた。数秒笑いを堪えたあと、息を整えて榊さんが続けた。


「いや、巨乳についてのスゲーどうでもいい話なんだけどさ」

「はい」

「あたし最近まで長乳(ながちち)のこと長乳(ちょうにゅう)って呼んでたんだけどさ」

「本当にどうでもよさそうな話きたな」


「あれたぶん、超乳(ちょうにゅう)と語感が被るから、長乳(ながちち)って呼ばれてるんだろうな」

「マジでどうでもよかった」

「もっと長乳の話してやろうか?」

「なんでまだ長乳の残弾があるんだよ」

 更に長乳の話を続けようとする榊さんを、僕が制した。


「ごめんなさい。僕の女体化に話を戻していいですか?」

「なんでその話題ちょっと気に入ってんだよ。いいけど」


「まあ、したいのは僕の女体化の話ではなく、榊さんの男体化の話なんですがね」

「ん? あたし?」

 榊さんが片眉を上げた。


「あたしの男体化ねぇ。まあ、イケメンではあるのかな」

「それは標準装備でしょう」

「ピアスもしてそうだな」

「今よりも増えてるかも」

「こう、長身で、華奢(きゃしゃ)で……」

「黒髪短髪で、髪質は細いでしょうね。サラサラ。前髪はちょい長そう」

「別に髪とか肌のケアしてなくても、なんか小綺麗なタイプだな」

「凄いモテそうですよね」

「酒も煙草もやってんのかな?」

「やっててほしいですね。今よりもギャンブルが好きだったり」

「あたしよりも借金多そうだな」

「数人の病んでるカノジョがいそう」

「そいつらは、あたしのことカレシと思ってんだけど、あたしはそいつらのこと恋人だとは思ってなさそう」


 僕と榊さんの頭の中に、妄想の榊さんの男体化姿が思い浮かんでいく。きっと、僕らの想像図はかなり似通っているだろう。

 しかし、考えれば考えるほど、この人物像は……。


「榊さん、なんか、この人って」

「あたしも思った」

 僕らは、顔を合わせて同時にこう呟いた。


「めちゃくちゃ女殴ってそう……」

「めちゃくちゃ女殴ってそう……」


 別に、榊さんに対してそういったイメージがあるわけではないのだが、なんだか気まずくなってしまった。

 ……この話、やめた方がいいかな?


 そんなことを考えていると、榊さんが晴れやかな顔でこう言った。

「公太郎。あたしたちの活躍がコミックスにまとめられたら、巻末オマケに性転換姿描いてもらおうぜ」

「なんで女児アニメのCM特有の、『私たちの活躍がブルーレイになるんだって』みたいな言い方なんです?」

 そもそも、一般人である僕らの活躍はコミックスにまとめられないだろ。


「……ふ。ふ、くっ」

 僕のツッコミがツボに入ったようで、榊さんは腹を抱えて震えていた。


 そんな僕たちの元に、店員さんが飲み放題の終了を告げにきたのだった。


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