裏切り者の自分を殺しにきた組織の人間の接近にいち早く気付いたときの強キャラの台詞
「ところでさぁ」
出し抜けに、榊さんは低い声を屋上の入り口に向かって投げた。
「そこにいんだろ? まりにゃん、ルイにゃん。出てこいよ。バレてんぜ」
「なんで、裏切り者の自分を殺しにきた組織の人間の接近にいち早く気付いたときの強キャラの台詞?」
「意識したから」
したのかよ。
数秒の沈黙の後。ゆっくりと音を立てて入り口が開いた。
そこから現れたのは……。
「あちゃ。バレちゃってたかにゃ」
ピンク髪ツインテのまりにゃんさんと。
「なんでわかったの?」
青髪イケメンギャルの、ルイにゃんさんだった。
「なんでって。なんか気配したから」
殺し屋かよ。
「あと、あたしの話盗み聞きすんのなんてお前らくらいだから」
「いや、盗み聞きするつもりはなかったんだけど」
と、ルイにゃんさんが首を横に振る。
「煙草吸いにいこうとしたら話し声がしたから、扉を開けるに開けれずでさ。で、なんだか面白い話が薄っすら聞こえてきたから、同じく休憩中のまりにゃんも連れてきたんだ」
盗み聞きする気満々じゃねぇか。
「んで、あたしらの話は聞いてたのか?」
一瞬の間があった。
まりにゃんさんとルイにゃんさんは一度お互いに目配せをする。そして、頷きとも否定とも取れるような、首をかしげながらの頷きをしたのだった。
いや、絶対聞こえてただろ、この反応。
「まー、どっちでもいいや。よく聞け」
言って、榊さんは僕の肩に手を置いた。
「こいつ、公太郎。今、あたしと同棲してる」
急な告白に、一番驚いていたのは僕であった。
まりにゃんさんは、「おお、甘酸っぱいですにゃあ!」と、頬に手を当てて身をくねらせていた。
ルイにゃんさんは、「もうエッチとかした?」と、絶対に初手にする質問ではない疑問をぶつけてきた。
よく、「もう手とか繋いだのかな」のトーンでそんなこと言えるな。
「ルイにゃん、デリカシーって言葉知ってるかにゃ?」
と、まりにゃんさんがしれっと注意していた。
しかし、ルイにゃんさんのその質問に榊さんは真面目な顔で答える。
「んや、まだ手も繋いでない」
「へー」
「一緒には寝た」
「えっっっろ」
ルイにゃんさんは真顔で両目を少し広げ、手で口を覆っていた。なんなんだよこの人。
「も~。ルイにゃん、デリカシ~~」
「ごめんって。……で、まりにゃん。客と交際っていいんだっけ?」
「うーん。禁止されてないし、別に当人らの自由かにゃあ。それに、見た感じ今回は、御主人様が恋人になったというよりは、恋人がご主人様になった感じだし?」
二人の会話を聞きながら、僕と榊さんは同時に首をひねった。
なんだか、勘違いをされている気がする。
「あ、あの。別に僕らはお付き合いしてるというわけではないですよ……?」
言うと、まりにゃんさんとルイにゃんさんの動きが石像みたいに止まった。
やがて、ルイにゃんさんが静かに口を開く。
「え。付き合ってないのに同棲してるの?」
「はい、色々と事情がありまして」
「あー。さかにゃん、鍵無くしたとか言ってたもんにゃあ」
「ふーん? でも、好き同士ではあるんでしょ?」
「えっと……」
今度は、僕と榊さんが硬直する番だった。
僕は、榊さんと一瞬目を合わせる。
そしてお互いに紅潮し、なにも言えずに顔を逸らした。
そんな僕らを観察しながら、まりにゃんさんとルイにゃんさんは同時にこう溢す。
「えっっろ」
「えっっろ」
「デリカシーどこいったんだよ」
「デリカシーどこいったんだよ」
僕と榊さんのツッコミが重なった。




