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数年後。

俺は、レシアと、結婚した。

村の、小さな教会で、仲間たちと、村人たち、全員に祝福されて。

父さんの魂も、きっと、どこかで見守ってくれていたことだろう。


ロザールさんは、鍛冶屋の親方に弟子入りし、今では、村一番の腕を持つ、鍛冶職人になっていた。彼が打つ剣は、人を傷つけるためではなく、畑を耕し、家を建てるための、生活の道具として、村人たちに、愛されている。

ナターシャさんは、村に、小さな診療所を開いた。彼女の光魔法と、優しい心は、村人たちの、体だけでなく、心の傷も、癒している。

メアリーは、世界中を旅している。自分の犯した罪を、償うように、各地の孤児院を巡り、親のいない子供たちに、闇の中でも、光はあるのだと、教え続けている。時折、彼女から届く手紙が、俺達の、ささやかな楽しみだった。

そして、俺は。

俺は、レシアと、二人で、父さんが遺してくれた、あの家で、暮らしている。

畑を耕し、家畜の世話をし、村の仕事を手伝う。

どこにでもある、当たり前の、穏やかな日々。

だが、その、当たり前こそが、俺達が、命を懸けて、守り抜きたかった、宝物なのだ。

大魔王の力は、もう、俺の中にはない。

あの戦いで、完全に、燃え尽きてしまった。

俺は、もう、ただの、ウオだ。

それで、良かった。

それが、良かった。

ある、夏の夜。

俺は、レシアと、二人で、あの港町を、再び、訪れた。

「すごい人だね」

「ああ、そうだな」

俺達は、手を繋ぎ、祭りの喧騒の中を、歩いた。

りんご飴を、頬張り、射的で、笑い合う。

あの時と、何も変わらない、幸せな時間。

そして、俺達は、あの丘の上へと、登った。

二人だけの、特等席。

ヒュルルルルル……

ドン!!!!

夜空に、巨大な、光の花が、咲く。

赤、青、緑、金。

色とりどりの、光の粒が、俺達の、未来を、祝福するように、降り注ぐ。

「……綺麗だね、ウオ」

隣で、レシアが、俺の肩に、そっと、頭を、もたせかけた。

その、温もりを感じながら、俺は、彼女の、手を、強く、握り返した。

「……ああ。綺麗だな」

俺達は、言葉もなく、ただ、夜空を見上げていた。

俺の、長くて、苦しい、英雄譚は、ここで、終わりを告げる。

そして、ここから、俺と、レシア、二人だけの、どこにでもある、ありふれた、愛の物語が、始まろうとしていた。

それで、良い。

それが、良い。

俺の心は、満足感に満たされながら、ただ、この、幸せな瞬間を、永遠に、刻み付けていた。




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