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09.揺れる心

「……ごめん、今は言えない」

その短い返事を見た夜から、落ち着かなかった。

目を閉じても文字が浮かぶ。

“今は”と言った。つまり、いつかは言うつもりがあるってことなのか。

それとも、ただ俺を安心させるためにそう書いただけなのか。

答えはどこにもない。


翌朝、登校途中の道を歩きながら、何度もスマホを覗く。

新しい通知はなかった。

グラウンドを横切ると、クラスメイトの笑い声が耳に入る。

輪に混ざれない俺の心は、ますますレンに縋りついていった。

だけど、そのレンが俺に隠し事をしている。

その事実を考えると、不安でいっぱいになった。


昼休み、机に突っ伏しながら、ポケットのスマホに指を伸ばす。

「こんにちは」

当たり障りのない挨拶を送る。

「お疲れさま。授業、眠かった」

昨日と同じだが、どこか昨日よりも距離があるように感じてしまう。

俺が勝手に意識しているだけなのは分かっていた。

――気にするな。

そう言い聞かせても、頭の中のモヤは晴れなかった。


放課後の帰り道、ふと信号待ちで見かけた制服姿の女子。

一瞬、心臓が跳ねる。

――もしかして、レン?

だけどすぐに、違うと気づいた。

彼女はスマホを見ながら友達と笑っている。

――俺の知らない日常。

――俺の届かない場所。


「俺は、なにを期待してるんだ。」

ため息と一緒に、焦燥感を吐き出す。


「なぁ、レン、本当に……俺に言えないことがある?」

――重すぎる。

また、彼女を追い詰めてしまったかもしれない。

返事が来るまでの時間がやけに長かった。


「……ある。でも、嫌いにならないで」

嫌いになるなんて、絶対にない。

でも、彼女はどんな秘密を抱えてるんだろう。

そして、その秘密を知ったとき、俺は今と同じ気持ちでいられるのだろうか。


布団に潜り込みながら、俺は答えを出せずにいた。

ただひとつ確かなのは、レンを失いたくないということ。

どんな秘密でも、きっと受け止められる。

そう信じたかった。

けれど心のどこかで、怖さが消えない。

揺れる気持ちを抱えたまま、俺は眠りについた。

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