05.近付きたい距離
レンとやり取りを始めてから、孤独な時間は相変わらずたが、毎日は大きく変わった。
ポケットにあるスマホが、俺に「居場所がある」と教えてくれる。
昨日の夜も遅くまでメッセージを交わして、眠りに落ちる直前までレンの言葉を読んでいた。
布団の中で、息を殺しながら笑ってしまう自分がいる。
こんな風に笑えるのは、レンと話すときだけだ。
昼休み、いつものようにひとりで弁当を広げる。
机の上に置いた弁当を食べながら、スマホを開く。
「今、昼休み」
「私も。友達と一緒にいるけど、ぜんぜん話が合わなくて疲れる」
形は違っても、孤独を感じている。
俺はひとりで、レンは“人の中でひとり”。
「俺も。教室で浮いてる」
「それ、つらくない?」
辛いに決まってる。
でも、打ち明けられること自体が、救いになっていた。
「辛いけど、レンに話すと平気になる」
「私も。カケルがいるから頑張れる」
もっと知りたい、繋がっていたい。
そんな欲求が膨らんでいった。
放課後、教室を出ると、ざわめきが遠ざかっていく。
自転車を押しながら、ポケットからスマホを取り出した。
「なあ、レンってさ……どんな学校行ってるの?」
気になっていたことを、とうとう訊いてしまった。
「普通の学校だよ。カケルとは違うとこ」
曖昧な答えだが、不思議とそれで納得できた。
俺と同じじゃない場所にいて、俺と同じように孤独を感じているだけで、十分だった。
「いつか会えたらいいな」
――やばい、重すぎるかもしれない。
返事が来るまでの数秒が、やけに長く感じられる。
でも返ってきた返事は――
「うん。そうだね」
短い言葉だったけど、拒まれていない。
もしかしたら、本当に会える日が来るのかもしれない。
そう思うだけで、前に進める気がした。
「もし、俺がいなくなったらどうする?」
ふいに、そんなメッセージを送ってみた。
自分でも理由はわからないが、自分がどれだけ必要とされているか、確かめたかった。
既読がついて、しばらく返事が来なかった。
――やっぱり重すぎた。
けれど――
「困る。すごく困る」
その言葉を見た瞬間、俺は飛び跳ねた。
てっきり、俺は誰にも必要とされていないと思っていた。
でも、レンは違った。
レンにとっての俺は、ちゃんと意味を持っている。
「よかった。俺もレンがいないと困る」
そう返したあと、しばらくスマホを見つめた。
画面の向こうにいるレンが、もう少しだけ近くに感じられた。
もっと知りたい、深く繋がりたい。
レンに依存してしまっている。
でも、もう止められない。
「おやすみ」
最後にそう送って、目を閉じる。
レンと繋がるこの時間が、俺にとって唯一の居場所だった。




