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04.言葉の居場所

レンとのやり取りは、俺の日常の中心になっていた。

目覚まし時計のアラームよりも先に、スマホの通知音で目が覚めることもある。

眠い目をこすりながら画面を確認する。

レンからのメッセージがあると、それだけで一日が始まる気がしていた。


「おはよう。今日も頑張ろうね」

すぐに返事が返ってくることもあれば、しばらくしてからのときもある。

けれど、どっちでもいい。

俺の言葉を受け止めてくれる誰かがいるだけで十分だったから。


教室に入ると、いつものざわめきが広がっている。

誰かに声をかけられることもなければ、目を合わせることもない。

机に教科書を出し、無言で時間が過ぎるのを待つのみ。

昨日までなら、ただその空気に耐えるしかなかったが、今は違う。

ポケットにあるスマホにレンがいる。

そう思うと、少しだけ呼吸が楽になる。


「なあ、これ見た?」

近くの席のやつが友達にスマホを見せて笑っている。

「めっちゃ面白くね?」

俺も一瞬、画面を覗きたい衝動にかられた。

でも、輪の中に足を踏み入れる勇気なんて、どこにもないから出来なかった。

その時、ふと思ってしまう。

俺が笑えるのは、レンとだけなんだ。


放課後、校門を出た瞬間、スマホを取り出す。

「今日も疲れた」

「私も。ずっと作り笑いしてた」

返事を見つめていると、まるで心を覗かれているような気分になる。

無理に笑って、やり過ごして、気づけば一日が終わっている。


「わかるよ。俺もそうだから」

そう打って少し間を置き、再び入力する。

「でも、レンと話してるときだけは違う」

――重いって思われるかもしれない。

でも返ってきたのは――

「それ、私も同じ」


その言葉を見て、思わず笑みがこぼれた。

教室では笑えないのに、今は自然に笑える。

俺の言葉を受け止めてくれて、同じ気持ちを返してくれる人がいる。

こんなに安心できることはなかった。


夜、頭の中は、レンとのやり取りでいっぱいだった。

一日の出来事を話したい。

今日感じたことを聞いてほしい。

そう思うと、ノートに文字を並べるよりも、スマホを手にする方が自然だった。

「ねえ、カケルってさ、クラスに友達いないの?」

不意にレンからそんなメッセージが届いた。

図星すぎて、息が止まる。

「……いないよ」

「そっか。私も似たようなもの」

少し安心すると同時に、自分の惨めさも突きつけられた気がした。

俺は、現実では誰とも繋がれないが、レンは違う。

文字を交わすたびに、俺の心に居場所を作ってくれる。


「もしさ、学校が全部なくなっても、レンがいれば大丈夫かも」

――引かれてもおかしくない。

けれど――

「うん。私もカケルがいるから大丈夫」

返事を読んだ瞬間、「ここにいていいんだ」と思えた。


画面に並ぶ文字を見つめながら、ゆっくりと目を閉じる。

レンがいるだけで、明日も少しは頑張れる気がした。

学校での孤独と、レンとの繋がり。

その差がどんどん広がっていくのを俺は薄々気づいていた。


このままでは、レンに依存してしまうかもしれない。

それでもいい。居場所があるなら、そこにすがっても。

「おやすみ、レン。」

そう呟いて、眠りについた。

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