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22.境界線

レンが学校を休んだ翌日。

登校したものの、俺は一日中、上の空だった。

黒板に書かれる数式も、クラスメイトの笑い声も、ほとんど耳に入らない。

気づけば、机の中に隠したスマホを何度も確かめていた。

――完全に依存しているのは、俺の方かもしれない。


放課後、レンからメッセージが届いた。

「今日は行こうと思ったんだけど、玄関の前でまた立ち止まっちゃった」

「みんな普通に学校に行けてるのに、私だけどうして…って思ったら涙が出てきた」

俺は返事を打ちながら、心が揺れる。

励ましたい。支えたい。

だけど、どうしても引っかかる。


「レンはそのままでいい。無理に行かなくていい」

――これでいいのか?

彼女にとって俺は「逃げ場所」になっている。

でも、ずっと逃げたままでいいはずがない。

それをわかっているのに、俺は「逃げてもいい」としか言えない。


夜、レンから長い文章が届いた。

「カケルに話してるとね、自分が本当にここにいていいんだって思える。

 でも同時に怖いの。

 カケルがいなくなったら、私どうなっちゃうんだろうって」

画面を見つめる指先が震えた。

――もし俺がいなくなったら、レンは崩れてしまう。

でも、もしレンにすべてを預けられたら、俺は背負いきれるのか?


返事を書こうとして、何度も消した。

「大丈夫だよ」

「俺がいるから」

そう言いたい。

けれど、それだけでは足りない気がした。

やっと送った言葉は、これだった。


「レン。俺は君のそばにいたい。

 でも……俺たちは、どこまで踏み込んでいいんだろうな」

しばらくして返ってきた言葉。

「私もわからない。でもカケルがいる限り、私はここにいる」


その瞬間、俺たちは一つの境界線に立っていることを自覚した。

依存と救いの境目。

ただの会話相手と、誰にも言えない特別な存在の境目。

――このまま踏み越えてしまえば、もう元には戻れない。

レンがそこにいる限り、俺は境界の手前で立ち止まることもできないのだ。


画面越しのやりとりが、もうただの会話じゃなくなっている。

俺はレンを必要としていて、レンも俺を必要としている。

――これは恋なのか、それとも依存なのか。

答えはまだ出ない。

だけど、この関係を失いたくないと強く思う自分だけは、はっきりしていた。

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