17.無理の仮面
レンからのメッセージに少し安心した翌日。
学校の授業が終わったあと、俺はふと廊下から見える中庭に目をやった。
数人の女子が笑い合いながら歩いていく。その中に、レンの影を重ねてしまう。
もし、レンが「陽咲」としてあそこにいたら、どんな顔をしてるんだろう。
きっと、作り笑いだ。
無理をして、周りに合わせて、心の奥では息苦しさを抱え込んでいる。
そんな姿を想像すると、俺は何をしてあげられるんだろうかと考え込んでしまう。
その夜、レンからまたメッセージが届いた。
「今日ね、友達と話してて……笑ってたのに、なんだか自分じゃないみたいだった」
一文だけで、彼女の疲れが伝わってくる。
俺の予想は当たっていた。
「無理に笑う必要なんてないよ。
辛いときは辛いって言っていい」
返事がすぐには来なかった。
既読のまま数分が過ぎて、ようやく届いたメッセージは、短くても真っ直ぐな言葉だった。
「ありがとう。
カケルがそう言ってくれると、少し救われる」
俺は彼女の全部を変えてやれるわけじゃない。
だけど、少なくとも無理をしなくていい場所でありたい。
スマホの画面に浮かぶ彼女の言葉を、何度も読み返した。
画面越しに見えるのは文字だけなのに、その奥に確かに彼女の心がある。
それを感じられることが、俺にとっても救いだった。
レンが「陽咲」として笑えなくなってもいい。
でも、「レン」として本音を言える場所をなくさせはしない。
彼女の隠れた涙も、弱さも、全部受け止めたい。
そう思いながら、俺は静かに目を閉じた。




