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14.少しの素顔

次の日の夜。

スマホを開くと、レンからの通知が届いていた。

「ねえカケル。私ね、ほんとは人付き合い、すごく苦手なんだ」

その一文を見て、思わず息を呑む。

昨日まで「怖い」と言っていた彼女が、ついに本音を打ち明けてくれた。

それは、俺にとって何より大きな一歩だった。


すぐに返事を打ち込む。

「そっか。無理して合わせる必要なんてないんじゃないかな」

レンの言葉は、どこか俺自身に重なる。

俺だって、教室で誰かと群れるのは得意じゃない。

一人でいる方が気楽だと感じる瞬間が多い。

だからこそ、レンの打ち明けた気持ちが痛いほどわかった。


「でもね……陽咲でいるときは、苦手とか言えないんだ」

――陽咲

それが、レンの普段の姿なんだと、行間で悟る。

彼女が現実の世界で演じている名前。


「だから、ここだけが本当の私でいられる場所」

――俺は、彼女が本当の自分で居られる唯一の場所に選ばれたんだ。

俺は迷わず、指を走らせた。

「じゃあ、ここではずっと素のままでいい。

 俺が、ちゃんと受け止めるから」


既読がついたあと、しばらく返事は来なかった。

けれど、夜が更けたころ、ぽつりと文字が届いた。

「ありがとう。今はまだ全部は無理だけど、少しなら……」

少しでもいい。

それが、彼女の精一杯の勇気なんだ。

少しの素顔を見せてくれたことが、何よりの証拠だから。


――翌朝。

登校の途中、ふと青空を見上げた。

彼女がまた少しずつ心を開いてくれるなら、俺もそれに応えたい。

焦らず、ゆっくりと。

そう思いながら、俺は歩き出した。

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