13.隠したい顔
レンからの返事が届いたのは、次の日の昼休みだった。
短い一文。
「私ね、みんなの前では、いい子でいなきゃって思ってる」
――やっぱりそうなんだ。
彼女が時々見せる、無理をして笑っているような言葉。
その裏側に、こんな思いがあったなんて。
俺はしばらく返事を打てなかった。
軽い励ましなんて、意味がない。
本当の気持ちに触れているからこそ、言葉を選ばなきゃいけない。
「レン。無理にいい子でいなくてもいいんじゃないか?
俺は、笑ってなくても、怒ってても、それがレンなら大丈夫だから」
俺の言葉は、彼女に届くだろうか。
放課後、教室を出たときだった。
一件の通知が届く。レンからだった。
「でもね、もし素の自分を出したら、きっと嫌われちゃうと思うの」
彼女は本当の自分を出したら、周りから否定される未来をずっと恐れていたのだった。
俺は立ち止まり、スマホを握りしめた。
「嫌わないよ。俺は、どんなレンでも、ちゃんと見てる」
こんなことを言うのは、もしかしたら重すぎるのかもしれない。
でも、嘘をつく方がもっと良くない。
だから、俺は正直に打ち込んだ。
その日の夜、机に向かっても、勉強がまるで頭に入らない。
送ったメッセージの既読はついたままで、返信は来ない。
もしかして言いすぎたのか――不安が押し寄せる。
レンは、きっと言葉を選んでいるんだ。
自分の隠したい顔を見せてもいいのかどうか、その境界線で揺れている。
そして、ようやく返ってきたメッセージは――
「ありがとう。でも、やっぱりまだ怖い」
短いけれど、その一文に彼女の震える声が聞こえた気がした。
――怖くてもいい。
少しずつでいい。
俺は待つから。
そう心に決め、ゆっくりと息を吐いた。




