12.揺れる心の奥で
翌日、昼休みにいつものようにスマホを開くと、レンからの通知が届いていた。
「私、時々、自分が自分じゃないみたいに感じるの」
思わず息をのむ。
いままでのレンは、愚痴も不安も、どこかで笑いに変えていた。
けれど今日の文字は、違った。
まるで心の奥にある影を、そのまま差し出してきたみたいで。
俺は画面を見つめたまま、どう答えればいいんだろうと考え込んでしまう。軽く返す事は出来ない。
けど、言葉を重くしすぎたら、彼女を余計に追い詰めるかもしれない。
考えた末の答えを返す。
「レンがそう感じても、俺はレンをちゃんとレンだって思ってる」
送信してからが、やけに長く感じる。
ようやく返ってきたのは、少し間を置いたメッセージだった。
「変なの。カケルに言われると、少し安心する」
安堵と同時に、俺はこのためにここにいるんだと、そんな実感が心を満たしていく。
放課後、図書室の窓辺に座り、夕陽を眺めながらスマホを開く。
「でもね……安心した次の瞬間に、自分が怖くなるんだ」
短い一文に込められた震えが、痛いほど伝わってくる。
怖いってなんだろう。
自分を見失うこと?誰かに本当の自分を知られること?
――いや、きっとその両方だ。
「大丈夫。どんなレンでも、俺はちゃんと受け止める」
送信したあと、窓の外を眺める。
燃えるような夕陽が、どこか不安定に揺れる彼女の心と重なって見えた。
夜、布団に入っても、レンからの返信はなかった。
俺はスマホを枕元に置き、目を閉じた。
レンの揺れる心が、少しずつ俺に預けられていく。
その重みを感じながら、眠りについた。




