【傀儡師】レネ
いつの間にか獣道の様な道と呼べるか分からない場所を抜け、しっかりと踏み固められた道に出ていた。身体についた葉っぱを払っておく。
そして彼女の背中を追い続けて、ふと思った。イノシシとの戦闘(?)と会話に必死だったから何とも思わなかったが、このNPC…結構作り込まれているし、ただのNPCと思えない。
少し暗い赤色の髪に、金の刺繍が所々に縫い込まれた黒いローブを身につけている。顔は元気っ子な性格に対し凛々しさがある。でも、可愛いとも言えるかも。歳は私に近い…高校生ぐらいかな?
まあ、他のNPCを見て無いし、作り込まれているのかの基準が分からないんだけどね。
(あ…そう言えば名前聞いてないや)
「ぁ…あの、今更なんですが…名前って…その……何ですか」
名前を聞いた刹那、彼女は急に立ち止まり驚いた様子で勢い良くを振り返った。
(待って待って!…私なんか変なこと言ったかな?やっぱり今更過ぎた?…ああ…本当にすみま……)
「ああ!すみません!名前、言っていませんでしたよね!私、てっきり最初に言ったと……」
…少し安心した。
「私の名前は『レネ』!【傀儡師】のレネです!」
胸を張り、誇る様にそう言う。
傀儡師?聞いたことがないけど職業かな?でも、キャラクリの時に選択肢に無かったし、違うかも。
「あの…【傀儡師】ってなんですか?」
「それは……後で説明します!」
「ぁ……はい」
「では、空律者さんの名前も教えて頂けませんか?」
(あっ、そう言えば私も言っていなかった…)
「灯花…です。よろしくお願いします…」
「トウカさんですね!よろしくお願いします!」
(は、初めてちゃんとした自己紹介したかも!)
高校の初めも自己紹介する機会が設けられていたが、自分の名前を噛みまくる始末…。第一印象として、「大丈夫か?あの人」なんて思われたな違いない。なので、今回のが短くともまともな事に少し喜びがある。
ちょっと浮かれていると、レナが再び歩き出したので急いで着いていく。
——暫く歩くと
「あ!見えてきました!あれが私の家です!」
あれがレナの家か…なんかThe魔女の家って感じ。全部木造でできていて所々に苔やツダが蔓延っている。あ、煙突は石だね。ただ、花が植えてあったり扉までの道は草が生えておらず、最低限の整備はしているらしい。
「どうそ!中へ!」
そう言ってレネが扉を開けて中に入るよう、手を差した時…
「お帰りなさいー!レネー!」
「ぐはぁ!」
「えぇ……」
銀髪少女が飛び出たしてきた!結構な勢いでレネに抱きついたけど大丈夫か?
(本人はハグのつもりなんだろうけど…タックルじゃん)
「あれ……?レネ、お客さん?珍しいね!」
「〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎」
「レネ〜?」
…大丈夫じゃ無さそう。
「ん〜、レネがなんか伸びちゃったので私がおもてなしします!どうぞ、中に入って下さい!」
「なんか伸びちゃった」じゃ無いよ!あんたのせいだよ!あっ…少し魔力回復してるわ、マナブランクって思ったより短いのね。…暫く戦闘無さそうだし使うか。
「…【ヒールサークル】」
「あっ!レネの為にありがとうございます!」
「ぁ……じゃあ…失礼します」
「はい、どうぞ!」
…なんか、犬みたいだな、なんて思った。