空律者
「あの…あなたさっき反対方向に…行きましたよね?」
「……えぅ、ぁ……っと…その……」
……何から話せば良いのかな…。一旦落ち着け、まず「反対方向に行ったはずなのに、何で逃げた先にいるのか」について返せば良いんだよね…。
多分これは、たまたまこの人が私のリスポーン位置の方向に逃げて、私が死ぬことで先回りした形になったんだと思う…。
(えっと…だから「ここが私のリスポーン位置で、さっき死んで先回りしてしまったようです」って言えば良い……はず……)
「あ…あの…ここが……私のリスポーン位置で………さっき死んで………その……先回り……してしまった……ようです………」
………ああもう!結局うまく喋れなかった……なんて思われてるかな?喋り方キモいとか思われてない…かな。
「リスポーン…と言うことは、あなたは《空律者》なのですね」
「え……?」
…空律者って何だろう?
「あの……空律者…って…何ですか?」
もしかして、常識?世間しらずだと思われないだろうか…。
「ああ、あなたはまだ降り立ったばかりの人だったんですね。えっと、《空律者》ってのは、別の世界から来た特別な力を持つ人の事です。その力を奮って魔物を討伐したり、何もない土地に都市を築き上げたりした…なんかすごい人達です!……えへへ、実は私も詳しく知らないんですよ。」
内容がふわふわしてるけど…空律者ってどう考えてもプレイヤーのことだよね。この人はプレイヤーじゃないのかな?
「あの……あなたは空律者……ではないんですか?」
「私は《ホロウズ》です!」
ホロウズ…また知らない単語だ。
「あの……またしても、すみません……ホロウズって……なんですか?」
「えっと、《ホロウズ》は元々この地に住んでいた人の事ですね、私みたいに」
つまりNPCなのか……。
———でも…
(相手が人間じゃないって分かってても上手く喋れそうにない……やっぱり私…)
「大丈夫ですか?あの、実はもう少し先に私の家があるんですけど、よろしければそこで休んでいきませんか?」
「ぁ……良いんですか?」
「もちろんです!そもそも私を助けたせいでマナブランク状態になっているようなので私にも責任があります!」
人の家になんて行ったことがない。行くとなると緊張するな……でも、マナブランクでMP0だし、責任を感じている様だし、断るのも…。
「……じゃあ…その…よろしくお願いします…」
「はい!では、行きましょう!」
かくして《ホロウズ》ついていくことになった。これが私のゲーム生の最大の分岐点になると知らず。
…←これ多すぎ?ごめん