7:無人の島で生きるために必要なもの
それぞれの場所で多少の苦労はあったモノの、ひとまずトーリヤは自身の本体と分身たちを駆使して、かろうじて調達した食料とそれを確保していた三人を連れて野営地点まで帰ってきていた。
ちなみにエルセ達二人を襲っていた巨大な鶏、トーリヤの印象ではジャイアントモアと呼ばれる絶滅した巨大鳥サイズの軍鶏のようなあの生き物については、多少迷いはしたものの、エルセが拾っていたナイフでその死体から肉の一部を切り出し、食料としてこの場に持ち帰ってきている。
【生体走査】で調べた限りでは毒などの直接的な危険がないことは確認できたが、さすがに味まではこの特典能力でも判断できなかったため、ひとまず今晩の食事として食べてみて、問題がないようだったら後で複数の分身を向かわせ、【生体走査】で読み取った情報をもとに解体して今後の糧とするつもりだった。
(――肉以外にも、毛皮的なものが手に入るなら分身に着せる服くらいは欲しいしな……)
食料をはじめとした物資や三人の子供たちを連れ帰るにあたり、利便性の観点からトーリヤはさらに三人もの前世の自分を召喚したのだが、すでに自分の体ではないとはいえ自分だった姿の男たちが全裸で動き回る姿を見るのはなかなか精神に来るものがあった。
能力の性質上生物しか生み出すことのできないトーリヤの能力ではあるが、裸でしか生成できない現状では人間を生み出すことはなかなかに背徳感が強い。
実際村にいた時も、この性質があるために人型の分身を自由に生成できず、その能力の行使と研究に大きな制限がかかっていたくらいなのだ。
一方で、この先自分と子供たちだけで生きていかなければならないとなれば、大人の外見をした分身が必要な局面というのは必ず出てくる。
その時に全員が着られる服を用意するのか、あるいは別の方法で全裸の分身たちが歩き回る状況を回避するのか。
これもまた、他の問題に比べればギャグのようだが、変わらず頭の痛い問題だった。
(まあ、今はまずやらなきゃいけないことが山ほどあるんだが――)
思いつつ、トーリヤは意識のないエルセを背負わせた大型犬を焚火のそばへと慎重に寝かせ、つたで縛った薪を運んできたもう一頭と合わせて二頭の犬の体を簡易的なベットとして使って負傷した少女の体を横たえる。
続けて、先に到着していたシルファに自身の前世が付き添っているのを確認し、まず向き合うのは背後をついてきていたレイフトの方だった。
「悪いな、待たせて。まずはその怪我、見せてみろ」
「――お、おう……。って言っても手当てとかできんのか? 一応、言われた通り水で洗ってはおいたけど……。あとできることと言ったら布でも巻いておくくらいだろ」
「いやまぁ、傷にまく布としちゃ衛生面に不安のあるモノしかないんだけどな……。傷口洗わせた意味があんまなくなるし」
先ほどジャイアントシャモに襲われた際、レイフトが暴れるエルセによって負わされたという、深手とまでは言えないまでも決して浅くないナイフによる切り傷。
そんな負傷について、レイフトにはここに来るまでの間に、彼が使えるという水を生成する魔法で傷口を洗っておくよう指示を出していた。
どうやらこの世界、一般的には傷口から雑菌が入るという認識やそれを忌避する感覚すらないらしく、彼自身はトーリヤの指示に首を傾げてはいたものの、それでもおとなしく指示に従って傷を洗い、今怪我した腕をトーリヤに対して差し出している。
「ちょっと見せてもらうぜ」
(【生体走査】起動――、負傷個所の状態確認――、修復、開始――)
「――え」
傍から見ると四歳の幼女が自分より年上の少年の怪我した腕をつかんでじっと見つめているという、兄を心配する妹のようなほほえましい構図だったが、直後に実際に起こったのはそんな配役にそぐわない明確なまでの変化だった。
傷口が熱を帯びたような、痛みを伴わない熱さのようなものを感じてレイフトが声を漏らして、直後にじわじわとにじんでいた傷口の地が急速に固まってかさぶたへと変わっていく。
「こ、れって――」
「傷の修復工程を後押しして早めてるんだよ」
自身の持つ特典能力、【生体走査】で腕の状況を常にモニタリングしながら、トーリヤは傷の周囲の治癒機能を後押しし、時には魔法でその働きを肩代わりすることで急速に彼の切り傷を修復していく。
トーリヤが自身の能力に着目し、この魔法を開発したのは、まだトーリヤ自身が満足に動けず、いくつもの分身を作ってはそちらに活動させていたころのことだった。
当時のトーリヤは人間以上の大きさの生き物を作ることの危険性を認識したばかりで、その実験と活動の主体を一部の鳥や小動物に絞って試行錯誤を繰り返していたのだが、ある種の必然というべきか、そうして作った分身たちが他の生物に襲われて、捕食ないしは負傷させられる事態が多かったのである。
なお、ここで言うそうした他生物の中には、トーリヤが暮らしていた村の住人たる人間たちも含まれる。
なにしろあの村、海鳥を見つけたら石を投げて打ち落とし、うまくいけば晩のおかずが一品増えると考えるような土地柄なのだ。
それでなくとも、ネズミや虫などは種類によっては害ある存在として駆除の対象となっていたし、村を囲む海や森などにも決して侮れない野生動物が生息していたことも相まって、生み出した分身を破壊されるという事態は実のところそれなりに多かったのである。
この世界の情報を収集する過程で魔法の存在を認知して、トーリヤが【治癒魔法】という発想に至ったのも、元をたどればこの分身の損傷が発端だ。
ようは消滅を免れながらも傷ついた分身を、わざわざ一度消して新しい個体を作り直すのではなく、魔法で治療して再利用できないかと考えたのである。
もとよりトーリヤの場合、生物の肉体の状況をモニタリングできる【生体走査】の存在は非常に医療向きだ。
加えて将来的なことを考えた場合、詳細不明の魔王なる存在と戦うとなると医療系の能力の有用性は非常に高く、分身だけでなく通常の生き物にも使えればその価値は計り知れない。
そう考え、以降トーリヤは特典能力である【生体走査】の存在を軸に分身や捕らえた野生動物、そして時には自分の体などを用いて独学で【治癒魔法】の研究を重ねていた。
そして――。
「――ふぅ、治療完了。どうだ? 痛んだり、どこか違和感があったりとかはないか?」
「――あ、ああ。すっげぇな。魔法ってこんなのもあるのか……」
完全に血が固まってできたかさぶたを手を開閉させて落としながら、驚き、どこか興奮した様子を見せるレイフトの様子に、トーリヤは内心でひそかにうまくいったことに胸をなでおろす。
一応ここまでの研究の甲斐もあって治療できるだろうという確信はあったのだが、一方でこれまでトーリヤは、人間の治療については分身や自分の体でしかやったことがなかったため、実際に他人の治療をすることについては正直一抹の不安もあったのだ。
「――っていうかこんなことができるならさ、あいつの右腕もそれで治療できたんじゃねぇの……?」
ひとしきり怪我の様子を確認した後、多少なりとも落ち着きを取り戻したレイフトが思いついたように自身にけがを負わせた相手、意識がないまま二頭の犬分身の体の上で眠るエルセの方へと視線を向ける。
その視線には、助けに入ったにもかかわらず怪我を負わせてきた相手への不満のようなものも確かに感じ取れていたが、一方でそれ以上にひどいけがを負って明らかに不調を抱えている彼女に対してそれなりに思うところはあったらしい。
だが――。
「それについては俺も考えたんだが……。単純な切り傷をふさぐ今みたいな治療なりゃともかく、あそこまで厄介な怪我となりゅと俺自身の研究不足でいくつか問題があるんだ」
人間の自己治癒能力を後押しし、傷を短時間で修復する単純な治療に関しては苦労せずできるようになったトーリヤだが、必要な医療工程が複雑になるとそう簡単な話でもなくなってくる。
最初にエルセの傷の状態を確認した際に分かったことだが、彼女のあの傷は何らかの獣に噛まれたことによるものらしく、その際に砕けた骨の破片が正しく処置されないままそのままになっていたり、傷口同士がおかしな形で癒着してしまっていたり、何より傷口から何らかの菌が感染したのか、地球でいうところの敗血症に近い症状を引き起こしてしまっている。
正直、切羽詰まった状況でなく、トーリヤの治療能力がもう少し高ければ、あの船で彼女の状態を見たその段階で即座に治療を始めたかったくらいなのだ。
にもかかわらず、今トーリヤがその治療を躊躇している理由、それは――。
「研究の甲斐あって、治療自体はたぶんできりゅ。
けど単純に傷の治りを速めればよかった、【治癒魔法】だけで済んだお前と違って、あっちの子に必要なのは手術の類だ。
おかしな形で癒着してしまった組織をはがしたり、砕けた骨の破片を元の形に整えたり……。それ自体は、まあ俺も研究過程でできるようになってりゅんだが――。
問題なのはそれをやる間痛みを紛らわせりゅ、麻酔に近い薬や手段がまだ確立できてないことだ」
「ますい……?」
「想像してみてほしいんだが、要すりゅに必要なのはケガした傷口に手でも指でも突っ込んで、元の形になるように中をいじくりゅ処置なんだよ。
当然、そんな真似をするとなればどう考えても痛いわけで……。もし仮に、本人の同意も得ずにそんな治療を強行したら――」
「――ふつうは怪我を治そうとしてるんじゃなくて攻撃されていると思う、ってことか?」
「正解……」
頭の回る少年の完璧な回答に、けれどトーリヤは苦い思いと共にそう答えを返す。
実際には、手術を行うといってもその工程は実際に触れるわけではない、魔法による干渉で行う訳だが、それでも実際にやることそのものは確実に痛みを伴う傷口の整形だ。
「だからまあ、治療しようと思うなりゃ、最低限邪魔が入らない場所と専念できる時間、そして何より本人の同意と協力が不可欠なわけなんだが――」
もし本人の同意を得ずに手術を強行した場合、途中でエルセが暴れたり、あまつさえ逃げ出しでもしようものならその時点ですでに大惨事だ。
そうならないためにも、最低限手術を受ける当人には手術中の痛みに耐えてくれるくらいの同意と信用が不可欠になってくる。
「――けど、あいつそんなの協力するのかよ? 俺が助けた時だって、せっかく助けてやったのに――」
「まあ、それについては俺も鳥の目を通してみてたよ。実際にけがもさせられていりゅわけだし、その怒りはもっともだとも思う。
けどな――」
二匹の寝そべる犬を寝床代わりに、弱弱しく眠るその姿を見つめながら、トーリヤは外見にたがわぬ元大人として、少なくともその意識だけははっきりと持ってその言葉を口にする。
「人間がその形をしていることには、絶対に何かそうなるだけの理由があるんだよ」
自身の前世の経験からくるその教訓を。
単にエルセのためのフォローというだけでなく、このレイフトという少年のためにも、それは伝えておくべきだとそう思ったがゆえに。
いくつもの瞼を夜明けの光に刺激され、やむなくといった形でトーリヤは浅い眠りの内から浮上していくこととなった。
「――ふ、わ……」
眠り足りない感覚、よく眠れなかったという自覚を引きずりながら、それでもトーリヤは身を起こし、寝具代わりにしていた自身の分身たる大型犬たちの上から身を起こす。
地球上に存在していたありとあらゆる生物を分身として生成し、その数すらも無尽蔵に生み出すことができるトーリヤの【生体転写】ではあったが、実のところこの特典能力とて欠点や弱点と呼べるものがないわけではない。
その一つとして、この能力は使用中、本体であるトーリヤと分身たちとの間で情報の、具体的には五感情報や意志、思考といったものが常に共有されてしまうという特性がある。
これ自体は、分身と本体との間で常に情報共有が行われるメリットでもある訳だが、問題は本体が眠ろうとしている場合で、就寝時にこうした分身からの情報流入が続いていると、周囲の騒がしさで眠れない状況にも似た安眠を妨害する要素としてトーリヤ本体に作用してしまう。
無論、トーリヤの本体が気絶したり、何らかの理由で深い眠りに入ってしまうと、こうした分身からの外部刺激でも起きないことはあるのだが、これは言ってしまえば深く寝入ってしまっているがゆえに揺り起こしても起きないという状態に近く、分身から流れ込んでくる情報というものがトーリヤ本体の安眠をかなり妨害するものであることはこの四年間の検証の中で何度も経験していることだった。
そうした理由ゆえに、ここ最近はトーリヤも眠る前に分身をすべて消して眠っていたのだが――。
(――まあ、まだ冬までは時間があるとはいえ、もう夏も終わるの今の時期に寝具一つない状態で、しかも海辺で眠るのは体にはよくないからな……)
自身が寝具代わりにしていた相手、長い体毛と確かな体温を備えた大型犬のアバターと視線を合わせ、続けてトーリヤは同じように一塊の寝具と化した犬たちの群れ、そこ半ば埋もれるようにして眠る三人の子供たちの様子に視線を向ける。
トーリヤが眠れなかった理由、生成していたアバターから雪崩れ込む情報の大半は、この子供とはいえそれなりの体重を持つ四人が体の上で眠っているという、そんな状況から生み出された感覚だ。
それでも、そうした苦労のかいあってか、この三人も昨晩はそれなりによく眠れていたようだった。
特にシルファなど、目の下に隈を作った様子から心配していたのだが、なぜか眠ることに強い忌避感を見せる彼女を無理やり犬の群れに沈め、とどめとばかりにトーリヤの本体を抱き枕代わりに提供したところ、それがとどめとなったのか力尽きるように眠りの底へと落ちていった。
(――まあ、この子の方も何かあったんだろうな)
起こさないようそっと額に触り、【生体走査】を発動させてその健康状態を確認しながら、トーリヤは内心でつくづくそう思う。
昨晩自身の体を抱き枕代わりにさせたトーリヤだったが、これは犬の体同様体温保持の目的があったのと同時に、シルファの精神の安定と、そして治療のための添い寝という側面が大きい。
どうやらこちらの少女、トーリヤの前世である大人の男に対して強い恐怖心を抱いているらしく、加えて彼女の体を【体内走査】で調べたところ、服の下の体のあちこちに打撲跡らしきものがあったため、外見だけは彼女より年下のトーリヤ本体が彼女に寄り添いつつ、【治癒魔法】をかけて、寝ている間の治療も同時進行で行っていたのだ。
おかげで今の彼女は、少なくとも体の方はほとんどの痣が消え去って、栄養状態の悪さゆえか痩せ気味であることを除けばかなり健康な状態になっている。
(まあ、それでもすべての問題が片付いたわけじゃないが――、より問題が大きいのはこっちだな)
そう思考しながらトーリヤはシルファを起こさぬように慎重に身を起こし、反対側で犬の体を一つ隔てた隣で寝ているエルセの体へと密かに触れる。
昨晩の段階で、すでに敗血症に近い症状を発症し、高熱と意識混濁に悩まされていた彼女だったが、今はトーリヤが簡単な治療を行ったことも相まって多少症状が緩和され、昨晩よりも熱が下がって比較的ましな状態に落ち着いているようだった。
右腕の怪我の治療は本人の理解が不可欠だったため強行できなかったが、昨晩彼女の症状を危険と感じて、ひとまず体内の免疫機能を後押しする形で【治癒魔法】をかけ、体内の毒素をすべてではないにせよ除去できたことで、彼女の病状は完治には程遠いものの大幅に改善できたといえる。
右腕の根本治療はまだできていないため、あくまで症状を緩和するだけの、地球で例えるなら抗生物質を飲ませた程度の治療ではあるが、それでも体力的にひどく弱っていた彼女をある程度持ち直させることができたのもまた事実。
(とはいえ、いくら免疫機能を後押しできるとは言っても、体力的な限界もあるから完全に治療できたわけでもない……。どちらにせよ腕の治療は急務……。あとは、できれば消化のいい食べ物が欲しいところだな……)
昨晩の夕食は海でとれた魚や採取できた野草、それに仕留めたあの巨大鶏の肉を一部切り出し、海水から精製した塩で焼いて何とか食事としたわけだが、案の定というべきか衰弱したエルセの体はその手の食事を受け付けなかった。
本人も食べる必要があるというのは自覚しているらしく、差し出された食事をわずかに口にしたものの、すぐに限界が来たのかそれ以上の食事を断り、力尽きるように寝込んでしまったのだ。
トーリヤとしても、まともに消化できないほど弱っている人間に無理に食べさせるのも危険と考えて一晩回復を図っていたわけだが、体を治すためにもある程度消化のいい食べ物を手に入れておきたい。
(そもそも食料自体量は手に入ったけど、生肉なんていつまでも保存できるもんじゃないし、栄養バランスだって命にかかわる問題だ……。
ここは孤島みたいだし、あんな海竜がうろついているとなれば【生体転写】を使っても脱出できない……。少なくとも安全に陸地に渡れる方法が見つかるまでは、この島で暮らすことも考えなきゃいけないわけだけど……)
とかく今のトーリヤ達には、衣食住、人間の生存に必要なもの、そのすべてが足りていない。
現在の季節は夏の終わりに差し掛かった比較的温暖な時期で、だからこそトーリヤ達は長時間海水に浸かったり、こうして屋外で寝ていても体温の低下で体力を削がれる事態をまぬがれていたわけだが、これから気温が下がっていけば普通に凍死する事態にもなりかねないのだ。
トーリヤが生み出した人型の分身たちが裸同然の格好で動きまわるのも問題といえば問題だが、それ以上にこれから気温が下がっていけば、生身の人間であるこの四人がこの服装では確実にその寒さに対応できなくなる。
(衣服の問題は、昨日みたいな生き物がほかにもいるならそいつらから毛皮でも手に入れれば最悪なんとかなる……。食料についても同じだが、できれば食べられるもののバリエーションはもう少し欲しい……。
最大の問題は住居……。この辺りは特別豪雪地帯の北国ってわけじゃないみたいだけど、それでも冬に備えるなら雨風をしのげて暖をとれる環境は必須だ……)
どの目標を叶えるにしても、まずは今いる周囲を探索する必要がある。
そう考えて、トーリヤはシルファの抱き枕となった本体をさほど動かさぬまま、【生体転写】を発動させてまずは十羽近くの鳥型分身を次々と生成していく。
それから足が速くて鼻が利く、柴犬型の分身も三匹ほど生成して、地上からの探索役としてこちらも合わせて周囲へと放つと、確認すべき状況、探すべきものを頭の中でリストアップしながら脳裏でつながる分身たちの意識をすべてまとめて俯瞰する。
(それにしても、不思議なもんだ……。これだけの数の分身の五感情報なんて、普通人間の脳じゃ到底処理しきれないと思うんだが――)
以前から抱いていた疑問に首をかしげながら、トーリヤは意識の先にいる分身たちを操り、まず最初に確認しておきたかったことを鳥型の分身越しに目の当たりにすることとなる。
昨日も分身たちが見ていた、現在トーリヤ達がいるそれなりに広い島の様子を俯瞰して、その後鳥たちが別方向に分かれて島内を捜索して――。
「……おお、あった……」
「……んぅ……」
もしかしたらあるのではと期待して、優先して探していたそれを思いのほか早く見つけだしたそれに思わず声を漏らして、それに反応したシルファが目を覚ます。
「ああ、悪い、起こしちまったか」
そう語りかけながら、トーリヤは無人島での二日目の活動を開始する。
若干残った眠気を隠しながら、父を名乗った者として、三人の子供たちの生きる道を見出すために。