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第四話 家族

後々色々分かると思います。



今は何時だろうか。随分ぐっすり眠れた気がする。私は目を擦りながら目を開ける。そこには、青い空は広がっていなかった。あるのは、……巨乳。は?巨乳?何を言っているんだ私は。だが確かにそこにあるのは胸だった。


何かがおかしいと思った私は直ぐに周りを見渡した。見たことのない部屋、窓から見える風景は白一面に覆われた雪。部屋の内装からして随分裕福そうだ。皇族の部屋と近い爵位の持ち主だろう。


と言うか、ここは一体どこだ。



暫くして、情報の整理がついた。ここは、セレス王国と言うとこらしい。聞いたことないが、無ければここは一体どこなんだと言う事になる。因みに私の名前はエリス・ヴィ・セレスティらしい。名前自体は変わっていないがしっかり苗字は変わっている。さっきの巨乳も恐らく乳母、のものだと思う。なんというか、新鮮だった。そうじゃない、私は何故赤ん坊になっているのだ。


私は部屋の中をあちこち確認した。然し、随分と部屋の装飾品は最上級でありながら、赤子を見守る者がまともについていない所を見ると恐らく私はあまりこの家の者に大切にされていないのだと感じる。様々なことが推測出来るが、どこまでが真実かは私にはわからない。


仕方ないので大人しくすることにした。そうするとドアが開いた。私は生まれたばかりの様でうまく立ち上がる事ができないし、誰か判別できそうになかった。然し、この足音からして女ではない。男それも少々重量がある、然し足取りは軽やか、高身な男性だろうか。私は近付いてくる男にさっきがない事を確かめ、一体誰なのかとその人物を確認した。


目の前には推測通り高身長な男性が立っていた。瞳は浅瀬色、髪は銀髪に青のメッシュが入っている長髪を一つに括り、メッシュの所だけ三つ編みになっていた。人の好みにどうこう言うつもりはないが、少し派手だな。と思った。それにしても、こいつは私にとってなんだ。私に対して敵意があるわけでは無いようだが、目付きが鋭い。殺しに掛かるつもりか疑う程には酷い目をしてる。顔は整っているんだからその眉間の皺をなんとかしたらどうだと口に出しそうだった。


「当主様、どうかなさいましたか」


「これが、レイが産んだ子供か」


使用人がそうだと肯定する。レイとは私の生みの親だろうか。


「小さいな、直ぐに死ぬんじゃないか?これがこの領地を守れると?」


使用人は言葉に詰まった。然し、先ほどの乳母と思わしき人が言う。


「人間の赤子も動物の赤子もみな生まれたばかりは弱いものです」


私の父親だと判明した男はそうかと言ってそのまま部屋から出た。あれは私に何をさせたいんだか。赤子が喋り出して剣でも振るって見せるべきか?領地を守れる赤子がいたら空が真っ二つに割れるような天変地異でも起こるんじゃ無いか?と思いながらその背中を見れる所まで見つめた。





__________________________________________________




そして幼児と呼べる年頃になった。あの父親はあれ以降私の元へは現れなかった。私は特に興味もないので無視した。今は暇潰しがてら、この家の書斎の本を片っ端から読み漁っている。特に面白くも無い本ばかりだ。唯の暇つぶしには丁度いい。本当なら狩りにでも行きたいが、この地は魔物の多い所らしく、それだけ魔物も凶暴な為子供1人で外に出させる訳にはいかないらしい。


この数年調べてわかったのは、この地はセレスティ大公によって統治されている国境付近の領地らしい、そして魔物の森という大きな未開拓の地が隣接している都市だ。その為、戦争になることも多いし、魔物の軍勢によって危険な年も多々あるらしい。そして、私の父と母だが、母はいないらしく、父は忙しいとか。母に関してはみな何も言わないのでうまく探ることができなかったが、一つわかる事とすれば、私は母親殺しらしい。私にピッタリだと思う、そう、前世というべきなのか、以前も母をこの手で殺めた。兄妹を殺めた時一番口うるさく私に暴言を吐いたから、不愉快だとお思いやってしまった。今世も同じように母親を殺したのか、と思うとなんとも胸が痛むと思う。(多分)どうせ、父もそんな私のことが憎いのだろう。いっそそのままでいてくれれば良い。憎むだけで何もしてこないのが一番楽だ。


「お嬢様、そろそろ昼食のお時間でございます」


「あぁ、わかった」


もうそんな時間か、早いな。


「久々に運動でもしたいな」


つい口に出してしまったことに使用人は驚きを隠せていなかった。それもそのはず、私は生まれてこの方この家を出たことが無いし、運動なんてしているところ一度も見せていない。当然驚くだろうな。だって、毎日監視しているのに一度も見たことないのだから驚くに決まっている。


「今のは聞かなかったことにしろ」


私はその使用人に命令した。使用人はすぐさま了承した。さて、早く昼食を食べよう。この家のシェフはなかなかの腕だ、これなら皇族専用の料理人に雇っていたのにな。



__________________________________________________




「以上が本日のご報告でございます」


「…“運動がしたい“か。あれに運動をさせた事などない。そうだな?」


「はい」


銀髪の男は思考する。そしてあることをしようと考えた。


「…明日、そちらに行こう。」


「かしこまりいたしました。ハイドレア様」


__________________________________________________





「今日も書斎へ行かれるのですか?」


私は突然なんだと思い、そうだがそれがどうしたと聞き返した。その使用人は特に深い意味はないとそのまま別の仕事へと向かった。不思議なこともあるものだ、普段必要以上に話はしないのに。


そして私はいつものように書斎へと向かい昨日読みきれなかった本をまた本棚から全て出した。


カツ…カツ…カツ…カツ…


誰かが近づいてくる…いつもの使用人ではい。これは一度聞いた事がある音だ。お恐らく私の父のものだ。今迄会いに来なかったのに突然なんなんだ。


そしてドアの前で音が止んだ。その瞬間凄まじい殺気が放たれた。


「⁈」

そして父が思い切り扉を蹴り私を見据え、標的を発見した鷹のように剣を鞘から引き抜き私の心臓目掛けて走り出した。

…そうか、そうか、そうかっ!私と戦うというのか、ならば致し方あるまい。殺そう…

私は魔力で剣を精製、その後重量を軽量化して、父へと切先を向けた。あぁ、まずいな久しぶりに私に対して殺意を向けた者がいて少々楽しくなってきてしまった。私は笑みを溢した。それは優しい笑みなんかではない。恐ろしく狂気に満ち溢れている笑みを。


(ははっ、)       (お前は私を)      (飽きさせるなよ)


私は静かにそう言った。相手に聞こえないであろう音量で。然し、聞こえていたようで父は言う。


「子供とは思えない言動だな」


「聞こえていたのか、まぁ良い。お前は今ここで殺すのだからっ!」


私の剣と父の剣がぶつかり合い、キンッと金属同士がぶつかりあう音が書斎に響く。なるほど、大公と呼ばれる者とはこの程度なのか、私はそのまま後ろへ後退した。


「…興が削がれた…お前、本気で殺しに来た訳ではないのだろう」


「…あぁ腕試し程度だったが子供でこれだけ動けるのは良いことだ。ただ、口調を直せ。」


なんの話だ、何故誉められている。意味がわからんこの男、これだけ動けるのは良いことだと?殺そうとして来た奴にそれを言うか普通。この時思った、こいつは昔から変だったのかと、今もそうだが何処か変なネジが抜け落ちてしまっているのではと思う。そこに目をつけるか普通?と言うところを気にする。変なやつだ。


「お前が私の父親だと思うと頭が痛くなりそうだな」


「何故そうなる」


「自分で考えろ阿呆親父」


私はそう言って本が山積みの机の下へ戻り先ほど読んでいた本を読み始めた。然し、ずっと隣から視線を感じる。鬱陶しいなコイツ。


「お前はもう字が読めるのか」


だからどうしたと目で訴えた。もう会話するのも面倒だ。話す時間が無駄だと私は結論づけた。そもそもコイツからの敵意はないから殺すにも殺せない。どうしたものかと考えあぐねていると私の父が話し始めた。


「この領地は魔物の軍勢に侵攻される事が多々ある。それも冬と言う戦争する時期にはとても部が悪い時にだ。あれらは知能があるからな、自分たちなら生きられる環境であると判断している」


突然なんの話だと思いながら耳を貸すと


「俺は大公として国境を守り、魔物からこのセレスティとセレス王国を守る人がある。然し、俺1人ではこの国をこの街を守るほどの時間がない。だからお前にこの領地の守護を一部だが任せようと考えている。どうだろうか、やってみないか」


「正気の沙汰とは思えないな、国の重要な国境を守るお前ができないでは話にならない。その大公の位、今すぐ国王に返上してしまえ。出なければ身を滅ぼすぞ」


「お前の口調はまるで子供の口調ではないな。…そうだな、国王や皇帝といった高位の位があるもののようだ。まだ齢6程度のお前が何故だろうな、国王のような、全てを支配する者のようなそんな威圧的な雰囲気がある。」


「当たらずとも遠からず、といったところだ。私自身よくわからない。だがお前の娘として生まれたのは確か。だから私は自由に、私のしたいように生きさせてもらう。もう面倒事とはおさらばしたいものでな」


私はそういってもう一度本に目を戻した。然し、父は私から目を離そうとしない。だからは私はいってやった。


「自分の子供を愛しているか?」


父は目を大きく開きながら私を見つめる。暫くして父が口を開く。


「もちろんだ。愛している」


凄いな、その瞳には一つも迷いが無い。とても透き通った目をしている。だが、それでは駄目だろう。


「お前は大公だろう。子供さえも駒にするくらいでなければ臣民は守れない。お前の瞳は純粋過ぎるよ。そんなんだから敵ばかり作るんだ。」


「!」


父が驚いた顔をする。こう言うところもそうだが顔に出し過ぎだと感じる。王では無いにしろ、人の上に立つ存在ならば、感情を表に出すべきでは無い。表に出す事は場合によっては、自分の寿命を縮めることになる。なぜか、簡単だ弱みを曝け出しているようなものだからだ。それは命取りだ。此奴は能力があっても社交界では生きていけない、いや、貴族社会で生きていけない。不器用すぎる、これは私からの忠告だと思え、我が父よ。


私は優しいからな(?)、少しくらいは譲歩してやろうではないか、と思い言った。


「ん‘’ん‘’、私はお父様思いの優しい娘だからな、手伝ってやらないでも無い。決して、魔獣と久し振りに戦いたいとかそんな思惑一ミリたりとも有りはしない。」


そうだ、一ミリたりともそんなこと思ってない。思ってないさ。ただ、話良いの無い瞳で愛していると言ってくれた父に少しだけ感謝の気持ちを込めて、手伝ってやるだけだ。


「…ふっ、そうか、ありがとう。【エリス】」


…なんだかくすぐったいものだな。エミリアに呼ばれた時とはまた違う感覚だ。なんだろう、この気持ち、胸の奥がくすぐったくて、喉の奥が渇くような不思議な感覚だ。父親とはこう言うものだったのだろうか。私の父は一度も私に会おうとしなかったからよくわからないし、私もどうでも良かったから気にしていなかった。だから、凄く新鮮だ。


「エリス、今日は一緒に食事でもしないか」



たったその言葉でこんなにくすぐったい気持ちになるなんてな。中身はすでに成人済みの筈なのにな。


私は父の提案を受け入れ、その後一緒に食事を共にした。





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