第二話 私 【エリス視点】
私の手はもう赤く染まってしまった。永遠に純白になることの無くなった私の手。私はそれを眺めていた。
「おめでとうございます。エリス様、あなたはこれからこのエルファス帝国の皇帝になります。明日、戴冠式を執り行います。よろしいですね?」
私の元に純白の衣に包まれた大司教が言う。目の前に死体が転がっているのに驚きもしないのは流石だと思った。
神などを崇め奉るイかれた者共の親元となれば当然かと私は納得した。それほどこの帝国は秩序の国とは名ばかりの国に成り下がっているのだ。
「構わない、勝手にしろ」
私はそのまま玉座の間を後にした。ここは血生臭過ぎて嫌だ。まぁ私が殺したのが原因だが。それに服に血がべっとりと付いていて不愉快だ。早く湯浴みでもしよう。
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「なるほど、これはめんどくさいな」
今私の目の前には破かれた洋服が散乱していた。湯浴みをする為替えの洋服を選ぼうと部屋に戻って来た私。然し部屋に入ると一変。部屋のクローゼットからは全ての洋服が出され、全てどこかしら破れていた。
地味な嫌がらせだ。
「全く、何処の馬の骨だか知らないが、この私にこんな事をするなんてな」
正直言って舐められているのは分かっていたが、それ以前に皇帝にこんな事してタダで済むと本気で持っているのか。ただの馬鹿か、楽観的過ぎるのかはたまたただ死に急いでいるのか。このような事が起きない為にも仕置きが必要だ。
「私に面倒ごとを増やさせた罰だ。生きていたく無いと思うほどの後悔を与えてやる。覚悟しておけ、戯け者め」
私はそのまま部屋にある服の中でまだ使えそうな服を探した。一着まだ着られそうな服を見つけすぐにそれに着替え城にいる従者たちを集めた。
「陛下、我々にどのような御用でしょうか。」
私はいまだに血生臭い玉座の間にたった一つある椅子に座り、頬杖をつきながら彼等を見据えた。
「そうか、お前たちは皆まで言わねばわからないのか。」
私は彼らに鋭い眼差しを向け、威圧した。彼らはそれに慄き震えた。こんなもので済むと思うな。
「私の私室が荒らされていた。あぁ、犯人探しなどするつもりは無い」
それを聞いて一部の使用人がホッと肩を撫で下ろした。成る程、あれらか。
「そんな手のかかる事面倒くさい。だから全員ここで私に首を差し出せ」
「なっ⁈」
「そ、そんな…!私は何も!」
「こ、こいつがやっていたのを私は見ました!」
「私もですっ!」
ガヤガヤと騒がしくなる。全く騒々しいな、少しは落ち着けないのか。
「黙れ、私はお前たちに命令しているのだ。“死ね“と。私の命令が聞けないのか?ならばお前達全員自ら命を差し出さなかった事を後悔するだろう」
私は椅子に立てかけていた剣を持ち鞘から出した。次の瞬間、一番近くにいた執事の心臓を一突きした。周りからは叫び声と恐ろしさで床に尻餅をついているもの、血が噴き出た瞬間気を失った者、これこそ地獄絵図と言うものだろう。私は次々と使用人を殺した。
周りは血の海と化した。鉄の匂いと死ぬ時に思わず排泄物を出した者もいた為かそう言った匂いもあり、私の服はまた汚れた。
勿論周りには誰1人、生きている人間はいなかった。それでいい、それがいい、私の周りに私の生活を脅かすものは要らない。私の信頼を勝ち取ったものだけがこの城で生きていける。私は不敵な笑みを浮かべながら、剣を大きく振りかぶり血を落として鞘へしまった。
こうして私エリス・ヴィ・エルファスはエルファス帝国の女帝として即位した。そして、本来なら殺めた兄妹の理由付けは一番初めにやらねばいけない仕事であるにも関わらず私は何もせずにいた結果、私が兄妹を殺めたと言う事は直ぐに帝国中に広まり、忽ち私は最恐の女帝と呼ばれるようになった。
またもグロテスクすみません。