表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

その10 戦力確認と作戦会議

「皆、おはよう!

じゃあ改めて自己紹介と、

職能ジョブを言い合おうか!

出来れば才能値と技能スキルも!」


ヨシケルが朝イチからハキハキと喋る。

三者三様でボンヤリした返事が返ってきた。


「……ぁあ」

「ん」

「はいぃ……」


「皆、元気無いぞ!? どうした!?」


俺は欠伸を隠さず答えた。


「ふぁああ……どうしたもこうしたも、

眠いだけだよ……低血圧だからな……」


リューナはナイフの腰紐を調整しながら言う。


「オレはいつもこんなんだけど」


トレシアさんは手で口を抑える。


「ぉぇぷ……この身体になってから

陽の光に当たるのが辛くて……朝は特に……」


ちなみにココでもちゃんと太陽は存在している。

ただし異世界のソレは

西から昇って東に沈んでいくのだ。


やっぱりここは地球上じゃないのだろう。

実は南半球で方角を

勘違いしているだけかもしれないけど。


「大丈夫かー?」


「ほら、コレ飲んで」


リューナがトレシアさんの背中をさする。

ヨシケルは器に汲んできた井戸水を渡した。


介護かな?


トレシアさんが落ち着いてきた頃には

俺の眠気も覚めていた。


「じゃあ自己紹介と行こうか」


「あぁ! まずは僕からだ!

僕の名前はヨシケル! 職能ジョブ剣士ソードマンさ! 最強の冒険者を目指している!」


ヨシケルは懐から冒険者カードを取り出した。


どれどれ……3人で一緒に覗き込む。



『ヨシケル


職能ジョブ

剣士ソードマン


才能値


生命 14

筋力 13

頑強 13

器用 8

魔力 7

知能 5

信仰 7

精神 9

敏捷 8

魅力 13

運 12


技能スキル

盾のコツ』



「知能ひくくねー?」


剣士ソードマンなのに

何故か盾スキルだけ持ってるな……」


「信仰が7ですか……」


まぁ、前衛としては優秀なステータスだとは思う。

器用が8なのは……うん。

やたら攻撃外すなー、とは思ってたけど。

俺の方が低いし、ノーコメントで……


あとこのステータス、手先の器用さだけじゃなくて

要領の良さとかの『器用さ』も加味してない?

気のせい?


ちなみにリューナは数字ぐらいしか

読めないので、俺が読み上げている。


「次はオレか」


リューナが首に下げていた

冒険者カードを取り出した。



『リューナ


職能ジョブ

野伏レンジャー


才能値


生命 9

筋力 9

頑強 8

器用 14

魔力 6

知能 8

信仰 6

精神 11

敏捷 16

魅力 12

運 13


技能スキル

逃走 索敵 短剣のコツ』



ギルドでも一度見たが、やはり敏捷16が目を引く。


「あ、昨日のはやっぱり索敵スキルだったのか」


「字が、読めない……」


お前もか、ヨシーケル。

しょうがないので読み上げてやる。


「僕の知能が低いとか言っておいて、

君の魔力と信仰も低いじゃないか!」


「まぁまぁ、1しか変わらないんだからさ」


内容を理解して憤慨するヨシケルをなだめる。

リューナも舌出すなって。


「皆さん、

神を信じてらっしゃらないのですか……?」


悲しそうなトレシアさん。

そんなコトは無いと思うけども。

空気を和ませるために話しかける。


「この逃走ってのは

どんなスキルなのか知ってます?」


「……あっ! 知ってます!

えっと、『逃げる』時において、

神に祝福される、という物です!」


抽象的すぎてわかんねぇぞ、オイ。

ゲーム的に言うのなら

逃走成功する確率が上がるといった所だろうか。


「私のカードも出しますね……!」


機嫌を治したトレシアさんは胸元に手を入れる。

なにしてるとですか。


ダボついたシスター服が揺れる。

引き抜かれた右手にはカードが握られていた。


なんつーとこに仕舞ってたんだよ。

童貞には刺激が強すぎるってば。



『トレシア


職能ジョブ

高位神官アークプリースト


才能値


生命 7

筋力 7

頑強 7

器用 8

魔力 13

知能 11

信仰 16

精神 12

敏捷 7

魅力 13

運  9


技能スキル


【地母神の奇跡

癒快ヒール 解毒アンチドーテ

聖撃ホーリースマイト 浄化ピュリファイ

解呪ディスペル 結界プロテクション


【初級属性魔術

アース 小石礫フライングストーン

ライト


基礎魔術 医療の知識 上級識字

初級魔力増強 初級魔力操作


地母神の加護 不死王の呪怨』



おお、スキルがいっぱい。

そして信仰が16、高い。


「この『地母神の奇跡』っていうのが

昨日使ってた魔法ですかね?」


「地母神さまが私に

授けてくださった奇跡です……!」


トレシアさんは、ふふんと胸を張る。

たゆんと揺れるたわわから目を引き剥がした。


「アークプリースト?」


リューナが不思議そうに口にする。

ギルド受付嬢のセラさんとの話を思い出した。


「アレだろ、上級職ってやつだよ。

お前の野伏レンジャーと一緒」


「ふーん」


そう考えると上級職が2人もいるのか。

……あんまり恵まれてる感が無いのは何故だろう。

深く考えてもあんまり良い事なさそうなので

別の疑問を持ち出す。


「トレシアさんって冒険者登録してたんですね」

「……? してないですよ?」


じゃあなんで冒険者カード持ってんだよ。

俺の視線で察したのか、

トレシアさんが説明してくれる。


「あ、コレは不死者アンデッドの浄化を行う信者達に教会から配られるカードです。

才能値によって対応できる不死者アンデッド

変わりますから……

冒険者カードと物は同じだそうですけど……」


そう言いながらトレシアさんが

カードの裏面を見せてくれる。

そこには『大地の恵み教会』と書かれていた。


なるほど。


「そういえばキアンの才能値って

一度も見たコト無かったな」


ヨシケルがふと思い出した、というふうに言った。

あんまり見せたく無かったんだけど、

流石に仲間には見せるべきだろう。


「はぁ、俺も出すよ……」


財布から冒険者カードを抜き出して

トレシアさんに渡す。

自分で読み上げるの辛いから

宜しくお願いします。



『キアン


職能ジョブ

無し


才能値


生命 7

筋力 7

頑強 8

器用 5

魔力 0

知能 17

信仰 12

精神 19

敏捷 8

魅力 8

運 −18


技能スキル


忍耐

強メンタル

初級識字』



「『職無し』……! こ、これは……」

「何て言うか色々すごい才能値だな……」


絶句する2人。

なおリューナは以前に見せている為、

ノーコメントである。


トレシアさんは顎に手を当てる。


魔法使用者マジックユーザー向きなんでしょうか……」

「でも魔力が0だもんなぁ」


ヨシケルの明け透けな発言をフォローするように

トレシアさんは取り繕う。


「……しかしこの精神19は珍しいですよ!

私の記憶だと才能値は高くても

大体は16におさまるのですが……」


どれだけ高くても死にステなんだってば。

ナイフを磨いていたリューナがこちらへ向く。


「改めて見て思ったけど

よくこの才能値で前衛やってるよなー」

「しょうがないだろ、魔法も使えないし

お前みたいに索敵スキル持ってる

ワケじゃないんだから」


今のところ棍棒振り回すしか能が無いワケで。

まぁジョブも無いんだけどね、ハハッ。


そんなやり取りの隣で俺の才能値を

読み進めるトレシアさんが更に絶句する。


「運、マイナス18……!?」


それを聞いて疑問符を頭に浮かべる2人。


「マイナスって何だい?」


「オレもしらねー」


あぁ、そっか。

字が読めねぇくらいなんだから

そりゃマイナスも知らないわな。


「0より低いって意味だ。

この場合だと平均が10だから普通より28、

要は俺の運はびっくりするぐらい

低いって意味に……なるぞ……」


自分で説明してて悲しくなってきた。

トレシアさんが困惑をあらわにする。


「マイナスの才能値なんて

存在しているんですか……? 何かの呪い……?

いや、技能スキル欄には何もなかったはず……」


残念ながら持って産まれただけの運である。

取り敢えずコレで全員の確認は済んだな。


「で、今日も受けるんだろ、ヨシケル?

下水道の魔物退治」


「あぁ、当然さ! でも戦い方を考えないとね……」


それは昨日のうちに考えておいた。


俺はその辺に落ちていた小石を4つ拾う。

その内の1つを地面に置いた。


「まず、トレシアさん。

貴女は殆ど防具も着けてないので一番後ろです」


「一応、鎖帷子は着ているんですが……

あとはココにも革が貼り付けてあります」


トレシアさんは

冠っていた頭巾をぺろんとめくる。

ヘルメットのような形に革が貼り付けられている。

なるほど、アンデッド退治とか

してたって言ってたな。

非戦闘員ではないのか。


「まぁ、だとしてもです。

治療魔法を唯一使える人には

怪我して欲しくないワケで」


「分かりました……!

皆さんの傷は私が治します!

任せてください!」


聖なる証とやらを握るトレシアさんを横目に、

続けて2つ目の小石を置く。


「リューナはトレシアさんの1つ前だ。

索敵スキルが使えるお前は一番不意討ちに強い。

万一の時にはトレシアさんを守ってやってくれ。

敏捷も高いから突発的な戦闘でも

前衛に追いつけるはずだ」


「わかった」


頷くリューナ。

もう1つ小石を一番前に置く。


「ヨシケル。

言うまでもなく前衛だ、唯一の盾持ちだからな。

お前が死ぬと全滅だろう。

俺には防御力なんか無いからな。

責任はデカいが行けるか?」


「任せてよ!」


ヨシケルが胸をたたく。

よし。

最後の1個の石を置く。

まっすぐな縦の列が出来上がった。


「俺はココだ。

ヨシケルの後ろでリューナの前」


要は一番役立たずのポジションである。


「んで、戦闘時にはこうなる」


俺は石をY字になるように動かす。

ヨシケルが感心したように言う。


「僕とキアンが横並びになるのか」


リューナが続ける。


「そんでシスターをオレが守ると」


その通り。


「リューナには常に索敵スキルを使ってもらって、

トレシアさんが安全を確保できる時にだけ

戦闘に参加するイメージだな」


Y字の真ん中の石を上に動かしてT字にする。


「あとはトレシアさんの魔法で

小石礫フライングストーン』とか言うのがありましたよね?」


「……初級属性魔術のですか?

あまり得意ではないのですけど……」


首をかしげるトレシアさんに続ける。


「そうです。

その魔法って1日何回使えて

どのくらいの威力ですか?」


トレシアさんは指を『ちょっと』の形にする。


「このぐらいの石を

手で投げるぐらいの速度で飛ばせます……

魔法の力なので投擲と違って

ほぼ確実に当たりますが……

回数は……うーん、1日10回は超えてますが……

数えたコトはないですね……」


強ない?

3cmくらいの石を必中で

10回以上投げれるってコト?


「では戦闘中はそれで援護を。

地母神の奇跡は何回ほど?」

 

「使える物の中から2回が限度ですね……

浄化の力が強いので……」


しょげたようにそう答えるトレシアさん。


やはりそれ以上は身体の方が持たないらしい。

要は『癒快ヒール』だろうが『解毒アンチドーテ』だろうが2回使った時点で限界を迎えるという事だ。




つまり今の戦力をまとめるとこうなる。


『ヨシケル』

前衛 盾 片手剣


『俺』

前衛 棍棒


『リューナ』

遊撃 短刀 索敵


『トレシア』

後衛 地母神の奇跡2回 小石礫フライングストーン10回以上


行けそうじゃないか?

……1人ゴブリン並のヤツいるけど。


わかりきってはいたコトだけど、

やっぱり魔法使いの存在は大きい。

怪我しようが毒を受けようが2回までなら

モーマンタイなのはかなり助かる。


ちなみにトレシアさんが使える初級属性魔術の中で

アース』と『ライト』の2つは攻撃力が

皆無のモノらしく、戦力の勘定には加えていない。


ヨシケルがすっくと立ち上がる。


「よーし!

今日こそサクサク魔物を倒してやる!

皆、頑張ろう!」


「「おー!」」


片手を突き上げる俺と、

ぱちぱち拍手するトレシアさん。


「なんだそのテンションは」


呆れ顔のリューナの声は

もはや耳に入っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ