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01.告白50連敗男

 ガキの頃の夢を覚えている人間は、どのくらいいるのだろう。

 少なくとも俺は、とうの昔に忘れちまった。


 ◆


「一目見たときからいいなと思ってました!俺とお付き合いしてください!」


 夏、放課後、快晴。絶好の告白日和である今日、俺は通っている南山高校の体育館裏にいた。

 勢い良く頭を下げて、どうか掴んでくれと願いながらビッと指を揃えた右手を前に突き出す。


「よろしくお願いしまぁす!!!」


 さながら運動部、もしくはサマーから始まる国民的映画の主人公も顔負けの声量でありったけの思いをぶつける。

 目の前で俺の告白を受けているこちらの美少女は春野ユイさん。ふわふわにカールしたボブヘアと少し下がり気味の眉が最高にキュートな隣のクラスのマドンナ的存在である。ちなみにおぱっいが大きい。

 ドキドキとうるさい心臓を抑えて、くたびれた運動靴の紐を見つめていると「あ、あの、顔あげて」とユイさんの少しトーンの高い声が聞こえた。


「五十嵐くんだよね? E組の…」

「はい!2年E組3番五十嵐秋斗、5月15日生まれおうし座、血液型はB型で今日のラッキーカラーはエメラルドグリーンです!!」

「あ、うん。そこまでは聞いてないかな。あとごめんなさい、お付き合いはできません」

「なんでぇ!?」

「わたし普通に彼氏いるし…」

「彼氏いるのォ!?」

「うん。あれ、知らない?三年の熊谷先輩」

「三年の熊谷?…もしかしてユイさんの彼氏って、南山高のリュウジン・熊谷テ…ツ……」


 ヒクりと頬の筋肉がひきつり、背中に嫌な汗が滲んだ。何故か?俺の背後にとんでもなく凶悪な気配を感じとったからである。

 俺の平凡な人生において命の危険というものを初めて体験した瞬間だった。


「オウ。呼んだか」

「ヒィッ!」


 ポンと背後から肩に置かれた手は俺の手の三倍はあった。常習的に人を殴ってるヤツの手だ。ゴツゴツと飛び出た指の骨からは、この拳の犠牲になってきた男たちの断末魔が聞こえてくる気がした。

 恐る恐る振り返ると、そこにはスキンヘッドの大般若…ではなく三年の熊谷先輩が満面の笑みを浮かべて立っていた。

 全く運命というのはいたずらで困る。こんなゴリラとふわふわ小動物系美少女のユイさんが付き合っているなんて、一体誰がわかるっていうんだ。

 額に青筋を浮かべたゴリラ…もとい熊谷先輩に胸倉をつかまれながら、俺ははーやれやれと肩をすくめた。

 

「ヒトの女にちょっかいかけるたァいい度胸じゃねぇか!!あぁん!!?」

「すいませんでしたァァァァァ!!!」


 かくして。

 スライディング土下座を決めての命乞いも虚しく、熊谷に散々ボコられ、挙句ユイさんにも振られた俺は、真っ赤に腫れ上がった右頬を抑えて体育館裏を後にした。

 まったく、とんでもない目にあったぜ。


ハイファンタジー初投稿です!

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