最終章
僕は虚空を彷徨っていた。生と死の狭間で自分が誰なのかも分からないままあてどもなく、ただ身体を預けていた。
遠くの方で声がした。「おーい、おーい」と誰かが叫んでいた。聞き覚えのある声だった。
僕は声のする方へ向かって行った。声の主は富田君だった。
富田君は言った。「俺はもう君の身体から去らなければならない。俺は魂を君の身体に預けていたのだが、もうこれ以上君に迷惑を掛ける訳にはいかない。俺はもう成仏して君を見守っているよ!じゃあね」
と、富田君はフワッと浮き上がり、天に向かっていった。
そこで、僕はフッと目を覚ました。僕は人口呼吸器を着けられ、頭はグルグルと包帯を巻かれていた。周りをお父さんとお母さん、そして小林さんが見守っていた。
「ああ、目が開いた、意識を取り戻したようだわ」とお母さんが言った。
「峰君、あたし誰だかわかる?」小林さんが言った。僕は頷いた。
「良かった~!」みんな安堵の笑顔を見せた。
どうやら僕は10日間くらい眠り続けていたらしい。事故にあったのは覚えている。車は大破し、僕は頭を強く打って重傷を負った。それから僕は10日昏睡状態だったのだ。
僕は意識を取り戻してからは、みるみると回復していった。どこも後遺症は残らず、リハビリを受け、3ヶ月後には退院した。
性格は従来の僕の性格に戻っていた。
僕は、暫く自宅療養をする事となった。
そんなある日、小林さんが自宅に訪ねて来た。
小林さんは言った。「もう身体の方は大丈夫?」
「はい、だいぶ回復してます」
「峰君、作業所を辞める、て言ってたけど、その辺はとうなの?」
「僕こそ酷いことを言ってすみませんでした。撤回します」
「あらそう、いつでも戻って来てね。待ってるわ]
それから僕は半年後に作業所に復帰した。みんなが出迎えてくれた。僕は幸田さんに「どうも酷い事を言ってどうもすみませんでした、僕はどうかしてたんです」と謝った。幸田さんは「わかれば良いんだよ」と笑顔で言ってくた。
また以前のような生活が戻った。
スマホは以前のガラケーに戻した。車はあんな大事故を起こした為、もう二度と運転しない、とお父さんと約束し、免許証も返納した。それから栗田さんとは友達でいようという事になり、時々メッセージのやり取りをするだけの仲になった。
僕はいつものように作業所にいき、「おはようございます!」と大きく挨拶をした。みんなが明るく出迎えてくれた。
峰君の明るい笑顔が戻って良かったです。
これでこのお話は終わりです!最後まで読んでくれて有難うございました。感想などをお聞かせ下さると幸いです。