第二章
翌朝、僕は顔を洗い、テーブルに着いた。お母さんがご飯とみそ汁と焼き魚と納豆を作ってくれていた。
「おはよう」
お父さんはスマホでヤフーニュースを見ながら食事をしていた。
「浩ちゃん今日はなんか元気無いわね」とお母さんが言った。
「そうかなぁ~、俺はいつもと変わらないよ。そういえば昨日変な夢を見た」
「どうせいやらしい夢でも見たんでしょう」
「見ないよ、そんなの」僕は口を尖らせていった。
バスに乗り、作業所へと向かった。途中のバス停から、作業所のメンバーで、いつも乗って来る、畠山さんという、60代くらいのおじさんがいるのだが、今日もバスに乗るなり、「よ~う!」と挨拶してきた。
「今日はなんかいつもと雰囲気が違うなぁ~」
「エッ、そうですか?今朝お母さんからも同じ事を言われました」
「なんか、こう、陰りがあるというか、いつもの峰君とは違う感じがする」
そういえば自分にも内心、いつもと周りの世界観が違うような感じがしていた。うまく説明できないのだが、物事の感じ方がちがうのだ。
「それにしても、富田君ビックリしたな~、家の事故で死んだというけど、多分自殺だろうな!それを大っぴらに公表できないから家の事故、てことにしてるんだろう」
「そうでしょうね」僕は頷いた。
作業所に着くと、僕はタイムカードを押し、みんなに挨拶した。
「おはようございま~す‼」
「峰君おはよう」と、小林さんと田中さんが出迎えてくれた。
あとからメンバーがぞろぞろ来る。
朝の朝礼で職員が今日の作業のあらましを話し出した。
僕はなんか、いつもは意気揚々と聞いてるのに、今日はなんか、(またいつもの作業の説明か、ああ今日もまた作業が始まる。嫌だな~)という気持ちが先に立った。いったいどうしたんだろう?昨日の夢を見て以来…
「さあ、みんな席に着いて、作業を始めてくださーい」と田中さんが支持をだした。
変な気持ちだった。いつもは作業が楽しいはずなのに、今日はなんか意欲が湧いてこなかった。
「峰君、何をボーっとしてるの」と注意された。
「すみません」
僕は早々と作業に取り掛かった。
それにしてもこの倦怠感はなんなんだろう?いつもの僕には考えられないことだった。
もしかしたら、富田君の霊が僕に憑りついたのか?ふとそんな気がした。