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男の娘 第六部 第四章

 俺がシェーンブルグ伯爵家の陣につくと、すでに準備は終わっていた。


「では、父さん。俺は先に迎撃しに出ます」


 そう俺が話す。


「いやいや、待てっ! 皇太子殿下も作戦に参加して欲しいとは言ったし、ある程度の戦いは許されるとしても、皇太子妃が先陣切って行くのは少し違うと思うが……」


「いや、単体でやるつもりだと話しましたが……」


「いや、皇太子殿下の立場もあるだろ? 」


「正体不明の山賊が暴れる訳ですから」


「いや、もう、知られてるだろ。よその国にも……」


「でも、皇太子殿下に何かあれば終わりですし」


「いや、重要度は女神エーオストレイル様を降ろしているお前もあんまり変わらんのだが」


「確かにそれもありますが、この近くの山にかって女神エーオストレイル様が討ち果たしてパーサーギルが封印されているはずです。それと女神エーオストレイル様が戦うと言うのなら、警戒が必要かと……」


 アメリアが心配そうに呟いた。


「なんだって? パーサーギルが封印? 」


 父のシェーンブルグ伯爵が驚いた。


「ちょっと、待ってください……え? なんだって? パーサーギルが封印? って言いましたか? 」


 アメリアの顔が怖い。


「いや……そんな事言ったかな? 」


 父のシェーンブルグ伯爵がしどろもどろに答えた。


「……まさか……シェーンブルグ伯爵も神話をご存じ無いのでは? 」


「いや、知っているとも……知っているに決まっているじゃないか」


 そう父のシェーンブルグ伯爵が必死だ。


 これは神話を知らないな。


 俺がちょっと笑った。


「皇太子妃殿下! 貴方も知らないのは大問題なんですよっ! 」


 そうアメリアが俺が笑ったのを見て眉を吊り上げた。


「あーあー」


 姉が呆れていた。


「では、パーサーギルは何に似ているかご存じですか? 」


「え? 」


 アメリアが容赦せずに父のシェーンブルグ伯爵を追い詰めた。


 全ての指をピラピラさせて困った顔をしていた。


 それで、ちらっと姉を見た。


「いやいや、計画の中核にいた父さんがそれだと私も困るんだけど」


「助けてくれよ」


 情けない顔で父のシェーンブルグ伯爵が呟いたので俺が堪え切れずに笑った。


 本当に、この世界に転生してきて転生者として、どうしょうかと思ったけど、今はこんな家族に産まれてきて良かったと思った。


「蜘蛛です。蜘蛛の姿をした化け物です」


 そうアメリアが呆れ切った顔をした。


「そうだったそうだった。蜘蛛だった。度忘れしちゃった」


 そう父のシェーンブルグ伯爵が答えるが嘘としか思えなかった。


「この戦が終わったら、皇太子妃とともに神話の勉強をしますから」


「ええええええ? 」


「皇太子妃様もですから」


 俺がパニックになっている父のシェーンブルグ伯爵を見て笑ったままだったのが悪かったのか、アメリアがじろりと見た。


「すいません」


 仕方ないのでとりあえず謝った。


 そうしていたら、離れた部分にいる修羅の部隊が騒いでいる。


 冒険者のように10名程度で移動して動いているので、陣の方でも集中せずに全体に300名くらいずつ6つの部隊がぐるっと回るように配置されていた。


 それで中央の3000前後の修羅とゲオルクの騎士団の本陣を守っていた。


 それが騒がしい。

 

 ギードが向かっていると言う方側の外側の陣が騒いでいた。


「何があった? 」


 父であるシェーンブルグ伯爵が大声で問いただす。


 多分、アメリアがブチ切れた状況を誤魔化しているんだろうと思った。

 

 そして、それは姉も同意見のようだ。


「敵だ! 」


「一直線で攻めてきやがった! 」


 そう叫ぶ。


「また並列になって突撃してくる戦列騎馬か? 」


 俺がそう聞いた。


「いや、それが騎馬のまま並列にならずに直列で突撃してくるそうな。ボンが言ってた長蛇の陣だ」


「えええええ? 」


 ヨハンの言葉で俺が動揺した。


「貴族の誇りは捨ててきたか」


 そう父のシェーンブルグ伯爵が横で呟いた。


「どうする……と言うか。勝手に動いてるな」


 ヨハンが一応、現場指揮官なのに他人事みたいに呟いた。


 翼を広げて相手を突っ込む陣形に6つの300の近くの修羅達の陣が動く。


 いわゆる包み込む鶴翼の陣である。


 勿論、中心は俺たちがいる陣だが、それを中心に包み込むように動いた。


 包囲殲滅戦としても正しいのだが、命じてないのに動いちゃうのはなぁ。


「あのさぁ。こないだも思ったけど、お前は修羅を指揮してないじゃん」


 そう父のシェーンブルグ伯爵が俺に突っ込んできた。


 その通りである。


「いや、一応、ボンの命じた調練でこういう動きにはこうって決めてしまっているから」


 そうヨハンが俺をかばう様に話す。


「いや、だからと言って、これはどうなんだ? 」


 父のシェーンブルグ伯爵が呆れた顔をした。


 昔、薩摩の郷中教育がこんな感じで、徹底的に皆で話し合って、こういう時にはこうすると話を詰めて決めてしまうのだそうな。


 それをあらゆる時の対応を全て徹底的に考えて、最初からこうなったらこうすると決めておく。 


 その結果、もしもの時には何か起こってもあらゆる出来事に対して最初に決めてあるので悩むことも無く即座に動ける。


 ここまで徹底的に話を詰めてあったのは当時は薩摩と会津だけだからこそ、幕末に共に最強の藩となった。


 なので、当時は外国とかの問題もあって、思わぬ突発時の問題が起きやすかったが、それに対しても即応出来たんだそうな。


 ちなみに、余談ではあるが、長州は何か起こったらこう対応したと言う記録を大量に残してあり、何か問題が起これば過去の似たような事件を調べて、それで対応すると言うやり方で、多分、それは現在の日本のお役所仕事に相当な影響を与えてるのではないかと思う。


 ぶっちゃけ、修羅はこの世界では考えられない異様な戦い方なので、それを教える過程で俺がヨハンに伝えたのが、こうなったらこう動くと言う薩摩藩の徹底的な条件付けだった。


 その結果、こんなことになってしまった。

  

 確かに、即応性はすさまじく、突破型の長蛇の陣と見た途端に鶴翼の陣に移行し撃退するために動いてる。

 

 指揮官も無しにである。


 やり過ぎたのかもしれない。


 まず指揮官から命令を受けてからだよね。


 とはいえ、見たことも無い行動を軍としてするとなると、先にこう動いたらこうすると教えるしかなかった訳で……。


 まあ、言い訳になるけど……。

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