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男の娘 第二部 第五章

 次の朝、まだ明けきらないうちに目が覚めたので寝室を出た。


 婚約者の部屋だが、広く応接の間からメイドさん達の部屋まである。


 応接の間に出るとアメリアがすでに起きて待っていた。


 そして、ニーナもだ。


 戦闘メイドとは本当だったんだ。


 アメリアは短剣を装備していて、ニーナは剣を左右につけていた。


 ニーナの剣は長剣ではないが俺が持っている突きに特化した剣よりもだいぶ重そうだ。 


 敵地なんで警戒しているのかなと思いながら黙って椅子に座ったらアメリアが俺を怒りながら立たせて皺だらけのドレスを脱がせて、コルセットを締めなおして新しいドレスを着せてくれた。


 物凄く手早い。


 あっという間だ。


 そして、俺が椅子に座ると髪を整えてくれた。


 まさか、第一皇妃に何かあったのだろうか?


 俺が皇太子の城の索敵を開始した。


 そこで気が付いた。


「……誰か待っている? 」


 俺が思わずアメリアに聞いた。


 覚えがある気配が少し離れた場所に居た。


「ええ。流石にレディが寝ている部屋には入れませんから、こちらの準備が終わるのを待っているのでしょう」


 アメリアが少し険しい顔だが笑った。


 ニーナが双剣を抜いた。


 彼女が相当な技量であるのが分かる。


 マジで戦闘メイドとして育ててたんだなと感心するより呆れる。


 多分、師匠であるゲオルクはショックを受けるだろうが、ゲオルクよりだいぶ強い。


 そしてアメリアも相当な腕前だ。


 敵地と見てるのかな?


 それは最初に二人に会わせて貰った時から気になっていた。


 だが、そう言う事か。


 これは確かに護衛がいるわ。


「どうなさいます? 」


「こちらの会話を聞いてるんでしょう? ならば身支度が終わったと思えば入ってこられるでしょう」


 そう答えて。アメリアが目覚めに入れてくれたコーヒーを一口飲む。


 向こうの世界より環境の違いか、それとも単に似た品種を使っているだけなせいか、カフェインバキバキである。


 前に飲んだら夜に全く寝れなくなった。


 昨日は疲れ切って熟睡してしまったので、ここは頭を働かせるためにと入れたのだろう。


 バキバキに目が覚める。


 いやいや、これ今夜は寝れなさそうだ。


 そう思ってうぇぇぇってコーヒーの苦みでなった顔の時に部屋にそっと入ってきた者がいる。


 またしても、仮面の男である。


「失礼、起きてこられたので内密の話の為に参りました」


 などと話す。


 いつか、転生者と言う事を互いにはっきりと確認した時に、やっぱりアレを意識しているんですかと聞きたいような仮面をしたまま微笑んでいる。


「大事な話があると思い、敢えて通しましたが、本来なら皇太子妃になられる御方の部屋に別の殿方などとんでもない事だあると自覚していただきたい」


 そうアメリアが最初に牽制した。


「申し訳ない。私にとっても大事な事なので、是非とも神の子たる、マグダレーネ嬢の本音をお聞きしたいと思って参りました」


 意外と腰が低い。


 その場に騎士のようにして跪いて一礼した。


「二度目ですね」


 俺がそう答える。


「ええ、襲撃前の段階で貴方が私を恐らく把握していらっしゃったであろう事は分かっております」


 いや、目立つんだもの。


 力量的に強すぎる。


 だけど、一対一ならアメリアもニーナも勝てないだろうが、ニ対一なら勝てそうだ。


 それくらい二人も強い。


 姉上は図抜けて強いから、男としては凄く情けなくなる。


 俺はアメリアとニーナの二人の足元にも及ばない。


「今回は初日でいろいろとあったのでお疲れで熟睡されていて良かった。でないと私はこの城に忍び込めませんでした。まあ、おつきのお二方は私が城に入った時点で気が付かれたようですが……」


 そう、仮面の男……エードアルト・ヘルムフリート・アルンハルトが苦笑した。


「率直に聞きますが、第一皇妃の毒殺とは? 」


 俺がいきなり核心を聞いた。


「いやいや、ズバリと聞いてきますね。ぶっちゃけ、アルンハルト公爵家は関係しておりません。そして、ついでに言うとそれ以上のことは私にはわからない」


 そうエードアルトは断言した。


「それは? 他の公爵家の名前は出せないとおっしゃるのですか? 」


 最初は庇っているのかと思った。


 だが違った。


「貴方はずっとシェーンブルグ伯爵家の神の子として特別扱いを受けていた。だから、ご存じないかもしれませんが……」


 そうエードアルトが冷やかに呟いた。


 特別扱いって見逃しの事か?


 などと思っていたら、仮面を外した。


 顔には信じがたい傷跡があった。


 そして、まだ生々しい殴打の後も……。


 決して、あれの真似では無いのだ。


 これでは顔を曝せない。


 どう見ても虐待の後だ。


 転生勇者なので戦えるはずだが、無抵抗で罰として受けているのだろう。


「これは……」


「我々転生者は人間扱いされないのですよ。実際にはもっと多くの転生者がいますが、シェーンブルグ伯爵家に管理されているものは監禁されていろいろとやらされる不自由もありますが、実はマシなのです。実際はこんなものです」


「……貴方はアルンハルト公爵家の次男なのでは? 」


「そう、間違って産まれてきた転生者です。だからこそ人間扱いされずに道具として使われております」


 そう何とも言えない表情でエードアルトが苦笑した。


「道具……ですか? 」


「ええ、斥候から暗殺。そして、戦争で最前線で戦う事ですね。彼らは同じ母から産まれても前世の記憶がある私を公爵家の貴族どころか人間として扱いません」


 俺が息を飲んだ。


 比較的にシェーンブルグ伯爵家ではその辺りは叔父が転生者として特定して攫われた所くらいしか見たことが無かった。


 塔には行ったこと無いし。


 だから、初めて知る現実に震えた。


 エードアルトの苦笑の顔に現れる皺から、その虐待が半端ないことを知った。


 本当にこちらに産まれてきて、血も身体も父と母のもので、ただ転生した記憶が残っているだけかもしれないのにだ。

 

 狂ってると呟きそうになった。


 輪廻転生とか知っていれば、そういう話は実は向こうの世界ですらいろいろと報告があるのに。


 その記憶がたまたま残っている人間が凄く多いだけなのかもしれないのにだ。

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