フレイ
「ちょっと飲み過ぎだってばフレイ」
「だって、だってぇ!もう!」
女は数刻前の出来事を思い出しながら机を叩く。
「自業じ……そんなこともあるって!」
友人の女は悪酔いしているフレイの背を擦りながらどう慰めるか思案しているようだ。
「だって、軽い女だって思われたくないからちょっとだけ焦らそうとしたのに!したのに!!」
「はいはい、瞬きした間に消えてたのね。その話三回目」
「だって!」
「あんた知らないんだっけ? アレクさんの伝説」
「・・・何それ?」
「告白して成功したこと無いんだって」
「なによそれぇ……」
「500年だって」
「500年!?」
「何でも北の魔王討伐の時に魔王から放たれた膨大な魔力を浴びて死ねなくなったんだとか。本人に聞こうにもその話題になるとあんたみたいに逃げられるんだって」
「知らなかったし……知らなかったし!」
「ちなみに一回フラれた相手の前には現れないんだって」
「! なんで……」
「ストーカーみたいで嫌なんだって」
「だーーーーもう!私!何で!!」
「かくいう私も前に告白されたわー」
「はぁ!?」
「素敵なんだけどって言った瞬間“すみませんでした!”て消えてたわ」
「そ、その後は?」
「一回も会えてないのよ」
「絶望」
「なんか告白される前にそれ聞いてたらって思うよね」
「同意」
「ちょ、フレイ?」
「失意」
フレイは机に突っ伏して動かなくなってしまった。