母と父とのブレックファースト
台所...
「二人ともーご飯の時間ですよー」
俺が魔法書に気をとられてるとドアの向こうからおっとりとした女性の声が聞こえた。きっとこの子の母親の筈だ。俺は本を置き、ドアを開けた。
ギィ...
「あらあら、デリーが一番なんて珍しいわね。いつもは私が起こしに行くのに。」
「え?あ!うん、ちょっとなんか目が覚めちゃって。あはは...」
そこにはエプロン姿で卵を焼いているエメラルドのように綺麗な目で多少、豊よかな美しい女性が居た。この人こそ、今現在で俺の母であるポローラ・カリラスである。そしてさっきも聞いたと思うが、この体の持ち主であり、今の俺の名がデリー・カリラスだ。名前はさっき写真を見つけた時に裏に三人の名が書かれてた。
ガチャ
「う~ん、おはようポローラ。ん?なんだデリー、今日は珍しく早起きだな。おはよう」
「あ、おはようお父さん。」
「おはよう、あなた。」
俺のドアの隣にあるもう一つのドアからボサボサの髪を掻きながら剃り残したような無精髭面の父、ビトー・カリラスが起きて来た。ビトーは俺に挨拶した後、直ぐに台所の真ん中にあるテーブルの椅子に座った。それを見てたポローラはビトーに温かそうなお茶を渡して、それをビトーが少し飲んでいた。
「さぁデリー、貴方も早く座りなさい。朝御飯が冷めるわよ。」
ポローラが俺に声を掛け、椅子を引いてくれた。俺はお礼を言って座り、テーブルの上にある皿に盛り付けられた料理を見た。テーブルには一般男性の手のひらサイズのパンが一人一つ、トマトやレタスなどのサラダ、そしてベーコンエッグが置かれていた。俺は料理の美味しそうな見た目と匂いに魅了されながら見ていた。
「それでは揃った所なので、いただきます。」
「「いただきます!」」
俺はポローラの挨拶と共に食事を始めた。こんな時でも俺の体は腹を空かすのかと思いつつパンを噛った。
「そういえばデリー、お前はもう十歳になるな。そろそろ属性魔法が発現するんじゃないか?」
ビトーが俺を見て思い出したかのように話し出した。しかし、俺はまだこの世界の魔法という物がまだ分からなかった。そこで俺は恥を承知でビトーに聞いた。
「お父さん、属性魔法ってなんだんたっけ?」
「なんだデリーまだ寝ぼけてるのか?この前、魔法書をあげた筈だぞ?」
俺はまずいと思い、少し多事炉ってしまった。流石に魔法が存在する世界でこの質問はストレート過ぎたか。
「あなた、デリーはまだ小さいから魔法について分からないのも沢山あるわ。本を与えるだけじゃ無くて、ちゃんと教えないと。」
俺が多事炉ってるとポローラがビトーを宥めてくれたお陰で俺は怪しまれずに済んだが、やはりどの世界でも母には敵わないと心底思った。現にビトーはポローラの言葉を聞き、すまんと言ったのだから。
「いいデリー?属性魔法ってのはね、一般魔法や攻撃魔法みたいに練習して身につけるのじゃなくて、産まれてから十年毎に出てくる魔法なの。でもどんな属性が発現するのかはその時までは分からないのよ。」
成る程、つまりその属性魔法とやらはこの世界の人間は必ず一つや二つ持ってるってことか。他の一般魔法等も気になるが、俺はもう一つ聞いた。
「お母さん、属性魔法ってどんなのがあるの?」
「属性魔法には火、水、風、土、雷、光、闇の七つあるの。因みに私は火と光と風、お父さんは闇と水と土、雷なのよ。とは言っても、私は火、お父さんは闇だけしか使ってないから、他の属性はあまり使えないのよ。」
俺はそうなんだと頷き、両親の魔法を理解した。後は俺の属性魔法だが、どの魔法が出てくるか分からないとは、丸で福袋だなと妙な疑問を感じた。
「はい、じゃあお話はこれでおしまい。早くご飯食べて魔法申断、受けないとね。」
「まほう...しんだん...?」
「うんそうよ。魔法申断はね、私達が十年毎にどんな属性が出るかを役所の人達に確認してもらって、それらを国民魔法札って言って、私にはこんな属性を持ってますよっと皆に知ってもらうカードを作ってもらうのよ。」
成る程、用は車の免許と同じようなものか。それにこの世界だ。きっと将来、仕事とかの履歴書の用な役割を果たすだろう。俺はそう思い、再び食事をした。