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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
雲の大地と始まりの夢
89/404

ある意味地獄のようなお屋敷だった

 パーティが終わり、ハウドラントの夜を堪能した後、庭ではメイド達がせっせと片付けにいそしんでいる。

 その端で、3人のメイドが数人に囲まれて、お叱りを受けていた。


「貴女達、何をしたか分かっているの?」

「………………」


 囲まれているメイド達は、表情を消して無言を貫いている。


「喋らないつもりであれば、こちらも考えがあります」

「………………」

「これをごらんなさい」


 それでも黙っているメイド達に、リーダー格のメイドが手に持ったそれを見せた。

 その瞬間、2人が明らかに動揺し始める。


「そ…それはっ!」

「まさか!」

「そう……貴女達は分かるようね」


 ()()に手を伸ばすが、横から叩かれ悔しそうに引き下がる。その様子を見た後、リーダーは残る1人のメイドにも目を向けた。

 変わらずに無表情で佇んでいるが、この後の事が予想出来たのか、少し目が泳いでいる。


「貴女は()()で動揺すらしないわよね。だったら……」


 リーダーがパチンと指をならすと、隣のメイドが何かを差し出した。すると、無表情を装っていたメイドの顔つきが変わった。


「それ…は……」


 リーダーの顔がニヤリと歪む。


「そう、ネフテリア王女が齧った食べかけよ」

「っ!!」


 リーダーを睨み、手を伸ばしたメイドの手は、先程と同じく横から別のメイドに叩かれる。


「何するのよ!」

「いや貴女が何してるのよ」


 呆れながら再度聞くと、鬼のような形相でその事を話し始める。


「あの美しいネフテリア王女のフォークを丹念にペロペロして、何が悪いのですか!?」

「業務的に悪いし気色も悪いわ!」

 ばこん!


 ツッコミと同時に、リーダーは自分の『雲塊(シルキークレイ)』をメイドに投げつけた。

 ちなみに、『雲塊(シルキークレイ)』はハウドラントの大人であれば、ほぼ全員持っている。生活や仕事などで日常的に活用しているのだ。


「いったぁ……」

「貴女達も! 誰にも見られていない隙を見計らって、あのアリエッタちゃんのコップとスプーンをペロペロしてたでしょ! お嬢様の『お姉様』ですよ! 失礼にも程があります! あと気持ち悪い!」


 続いて残りの2人にもまくし立てる。ついでにピアーニャを妹扱いしている。

 気持ち悪いと言われた2人は憤慨し、リーダーに言い返し始めた。


「あれだけ可愛い子ですよ! ペロペロしないなんてありえません!」

「貴女はどうしてペロペロしないんですか? あれほどの美幼女に欲情しないとか、ありえませんね」

「開き直って私がおかしいみたいに言うな! この変態ども!!」


 徐々にリーダーの言葉が崩れてきた。さらに……


「た、たしかに……」

「そう考えるとペロペロしたくなるような」

「……ごくり」

「ちょっとコラ待てや! なんで今ので心を動かされてんの!? っていうか手に持った食べ残しを見て生唾を飲み込むな!」


 メイド達の中に、ペロリストが増加する兆候が見られる。リーダーが叱りつけるが、それを見逃す現役ペロリストではなかった。


「皆さん想像してください。あの可愛らしいお嬢様が可愛らしいお口でくわえたスプーンを。そしてそのスプーンがお口から引き抜かれた瞬間の舌を」

「いや貴女なに言ってるの……?」


 その説得に、周囲のメイド達の顔が少し紅くなり始める。


「なるほど……たしかにペロペロしたくなる気持ちはばっちり理解しました」

「理解しちゃダメでしょ!」

「しかぁし!」


 ツッコミを無視し、メイドの1人が目をカッと開いて力説を始めた。


「私はペロペロするよりも、脇の下の香りを堪能する方が好きなので、スプーンをペロペロする事はございません!」

「それも大問題よ! ってゆーか、たまに密着してくると思ったらそんな事してたの!?」

「あ、あの…わたしはペロペロよりも、パフィ様のような方に足蹴にしてもらえれば……」

「私はミューゼ様派です。これは肩についていた髪の毛をそっと拝借しました。もぐもぐ」

「うあぁぁ! この屋敷のメイドは変態ばかりだったのーっ!?」


 何故か連鎖的に始まったメイド達のカミングアウトに、リーダーは頭を抱え、叫んでいた。

 その後、メイド達の変態談を交えた後片づけは、大いに盛り上がりながら終わりを迎える。趣味こそ違うが、仲間の性癖(ほんね)を知る事が出来たメイド達は、より一層絆を深めていった。普通で真面目なメイド数名を除いて。

 なお、食べ残しはこの後メイド達によって処理された。どのように処理したかは伏せておく。

 そしてそんなメイド達を、物陰からピアーニャが気持ち悪そうに見ていた。


「……ファナリアにいって、セイカイだったな」




 アリエッタはこれまでで最大の危機を向かえていた。下着姿でじりじりと後退し、ついには壁に阻まれてしまう。

 そんな追い詰められた少女の視線の先にいるのは、笑顔のミューゼ達。ただし、服は着ていない。


「ほらほらアリエッタ、脱ぎ脱ぎしましょうね~♪」

「相変わらず恥ずかしがって、可愛いのよ」

「うわぁ、見ただけでもちもちスベスベのお肌。顔もスタイルも将来性抜群ね」

(ひぃぃ……急募、目のやり場っ!)


 ミューゼ、パフィ、ネフテリアの3人が裸でアリエッタを囲んでいる。

 接近する年頃の女性達の裸体は、女の子にやや染まりつつあるとはいえ、男の精神(たましい)を持っているアリエッタにはまだまだ刺激的な光景である。逃げ場を失うと、真っ赤になりながら視線をそらした。


「あらあら。ここには女しかいないんだから、恥ずかしがらなくてもいいのにねー♡」

「ヒトにまだ、なれていないからだろう。あまりコワがらせるなよ」


 ピアーニャとルミルテが先に浴場へと入っていった。

 全員、アリエッタは人前で脱ぐのが恥ずかしいのだろうと思っている。だからこそ警戒を解くために自分達から全てを脱ぎ、何も怖い事は無いと訴えるように無防備さを主張し、ゆっくりと近づいていく。

 それが逆効果だとは知る由も無い。


「あぅあぅ……」(ここ間違いなく風呂だ。女湯だ。他にもこのホテルの宿泊客がいるかもしれないのに、僕が入ったらマズいんじゃ…いや性別的に合ってるけど)


 アリエッタが目をそらしながら困惑していると、スッと腕が伸びてきた。


「つっかまーえた~♪ アリエッタちゃんとお風呂入るのは初めてね~」

「てってりあ!?」

「今のうちに全部脱がせちゃいますね」


 ミューゼが手際よくアリエッタから下着を取り、準備万端。そして今がチャンスと、ネフテリアがアリエッタをそのまま強く抱きしめた。


「ふにぇぇぇ!?」(てりあまでそんなっやわらかっ……だめぇぇ!)

「あぁ♡ スベスベだぁ♡ 宝石みたいなお肌ね~」

「みんなで洗ってあげるから、そんなに恥ずかしがらなくていいのよ」

「テリア様、頭を優しく撫でてあげると、大人しくなりますよ」


 ミューゼからのアドバイスを、さっそく実行してみると、


「へぇー、よしよし♪」

「あっ…♪」(それダメ…好き…)


 強張っていたアリエッタの体と頭から力が抜けて、ネフテリアの腕の中で堕ちた。撫でられる事で幸福感を感じるという()()になっている。


「やーんかわいいー♡ このまま綺麗にしてあげましょ」


 こうして抵抗力を完全に失ったアリエッタは、美女3人に囲まれ、全身くまなく磨かれるのだった。


(こんなの、ダメなのにぃ〜!)


 頑張って逃げようとする度に頭や頬を撫でられ、力が抜けたところでネフテリアの膝の上に戻されるというやり取りを何度か繰り返したが、お湯をかけられようやく解放される……などという事は無かった。


(…てりあが離してくれない)


 手を引かれて浴槽に入ったものの、ネフテリアがニコニコしながら膝の上にアリエッタを乗せる。お湯の高さ的にも、膝の上に座っている状態がアリエッタにとって丁度良い高さになるせいで、動き辛かったりもする。

 恥ずかしさから逃げる様にピアーニャを探すと、同じ様にルミルテの膝の上でお湯に浸かっていた。

 ふと、アリエッタとピアーニャの目が合った。


「うわわっ、かーさま! わざわざだかなくても、はいれるから!」(やばい、アリエッタにみられた!)

「て、てりあ! めっ!」(まずい! 僕の方がお姉さんなのに、抱っこなんて!)


 2人とも考える事は同じだが、離してもらえない。ネフテリアもルミルテも解放などせずに、ほんわかとした顔で膝の上のちびっこを抱き締めて堪能するだけだった。

 その後、妙にぐったりしたアリエッタとピアーニャは、なすがままに服を着せられていった。なぜかお揃いの動物パジャマである。


「かわいいー! 2人とも似合い過ぎでしょ!」

「本当に嬉しいわぁピアーニャにお姉ちゃんが出来たみたいで」

「わち、オトナだからな!?」


 風呂から出て部屋に戻る途中、迷子にならないようにとアリエッタがピアーニャの手を繋ぐ。

 そんな姿を見てしまったメイドが硬直し、姿が見えなくなった瞬間に、赤い液体を噴き出しながら倒れるという事件が相次いだ。その顔は幸せに満ちていたという。

 ピアーニャとルミルテは、ミューゼ達の部屋の前で別れる事になった。実家なので自分の部屋で寝るだけである。

 ここがホテルだと思っているアリエッタは、不思議そうに首を傾げていた。


(ぴあーにゃ、どこいったのかなー。一緒に寝ないのかな?)


 満腹になり風呂で暖まったアリエッタ。次は当然眠気がやってくる。


「ん……」

「今日は綺麗な空とか見れて楽しかったのよ? ゆっくり寝るのよ」


 心地良い眠気と布団、そしてパフィの体温に包まれ、アリエッタはあっさり眠りに落ちた。


「あ……これじゃ動けないのよ。このまま寝るのよ」

「いいなー、明日は私が寝かせるからね」

「順番ですからね。じゃあテリア様、ベランダでお話でも」


 ハウドラントの美しい夜の下で、楽しい時間はのんびりと過ぎていく。




『……あれ? ここって』


 一面の真っ白な場所に、アリエッタはポツンと立っていた。


『ここは見覚えが……』


 思い出そうとするが、それより先に声が掛けられた。


『やっほー! ()()()()()! アリエッタちゃん!』

メイド達にはヒミツがいっぱい。

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