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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
食べ物と悪魔の世界
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幼女葉寿司弁当 悪夢入り

「なんだこりゃあああ~~~~!!」

「これはまた見事ですね……光っているように見えます」


 壁の少し低い位置に描かれている太陽の絵。本当に輝いているわけではないのに、青空を描いた影響で本物の太陽の様に輝いて見え、うっすらと虹色の光が表現されているのがさらに陽光という事を強調しているように見える。

 2人は少しの間、時間を忘れて見惚れていた。


「人を描いていた時もそうでしたが、アリエッタさんの絵は本物のようですね。これが明るくなった原因……」

「なんなんだ、ワケがわからんっ。なにをどうやったら、こんなのがかけるんだ!?」

「いやぁ、あたしに聞かれても……」


 頭を悩ませるピアーニャは、思わずミューゼに問いかけたが、ミューゼも当然分からない。

 なにしろすぐ傍で見続けていると、アリエッタが困った顔で見返してくるから、コロコロ変わる髪の毛の色を眺めていたのである。しかし、それはそれで楽しんでいたのだった。


「その絵を完成させて、アリエッタが触れた瞬間、夜が明けたんですよ。どれくらいの広さなのかは分かりませんけど」

「夜が明ける時点で、魔法の域を遥かに超えていますね。しかも我々のいた離れた場所にも影響出ていましたし」

「うぅぅ……わちアタマがハレツしそうだ……とんでもないチカラなのもそうだが、みえないカベをつくったときは、アカだけのカンタンなやつだったじゃないか。いったいどーゆーホーソクがあるとゆーのだ……」


 ピアーニャは膝をついて項垂れながら、思いっきり悩み始めてしまう。

 前回の進入禁止の絵は、前世で色々な場所にあった標識を描いただけで、何者も入れなくなる見えない壁が発現した。しかし今回は決められた色と形も無く、アリエッタ以外は理解不可能なレベルでの絵になっている。

 壁を作る能力という推測は外れ、絵による法則という案も言う前に否定された気分になり、ピアーニャはすっかり泣きそうな顔になっていた。アリエッタ自身の『認識』や『常識』がキーとなっている事だと突き止めるには、あまりにも情報が少なすぎるのである。


「そうですね……それにここまで影響が大きい力となると、さらに目が離せません。おふたりには負担をおかけしますが……」

「いえいえ、アリエッタはもうあたしとパフィの嫁ですから。誰にも渡しませんよ?」

「ヨメっておまえらな……」

「楽しそうでなによりです。さて、パフィさんのお説教も続いていますし、今日のところはここでゆっくり休みましょうか。アリエッタさんもそのまま寝かせてあげたい時間ですし、総長もずっと疲れ切っていますからね」


 強制的に夜が明けてはいるが、夜になって攫われてからそれなりに時間が経っている。アリエッタはもちろん、ミューゼも少し眠くなっていた。


「そうだな……すまんがロンデル、パフィ、ミューゼオラがこうたいでケイカイしておいてくれ……わちはこんかいはムリだ」

「了解しました。ではミューゼオラさん。杖をお返ししますね」

「あたしの杖! ありがとうございます! それじゃあアリエッタとピアーニャちゃんの為に簡易ベッド作りますね」

「おぃっ!?」


 ちゃん付けされた方かアリエッタと一緒の方か、慌てたピアーニャを無視して、座ったまま杖を掲げるミューゼ。


「それっ」


 杖を振り下ろした瞬間、杖から伸びた蔓が絡まって形作り、葉が何枚も開き重なっていく。最後には大きな葉1枚が覆い、天蓋となった。


「おぉ……」


 出来上がったソレに、ロンデルが感嘆のため息を漏らす。ピアーニャはその横で呆れていた。


「ベッド出来ましたっ。さぁ総長もゆっくり寝てくださいね」

「……いっしょにねるのか」


 がっくりと項垂れるピアーニャ。とはいえ、地面で寝るよりはゆっくり寝られる為、文句も言いづらい。

 観念しておとなしくベッドに上がった。


「けっこうフカフカだな。ミューゼオラはこんなマホウもつかえたのか」

「あたしだって、ただアリエッタを可愛がってたわけじゃないですよ。ファナリアで数日間、出かける為に必死で練習したんですから」

「……ヒッシになるのがベッドづくりなのか?」

「当然ですよ。アリエッタが外でも安眠できるようにしないと、可哀想じゃないですか」

「そうか……」


 色々諦めたら力が抜けて一気に眠くなったピアーニャは、そのまま眠気に逆らわずに眠りに落ちる。

 その横にミューゼがアリエッタを寝かせ、先程まで何もやってなかった事もあり、最初の見張りを買って出たのだった。

 ちなみにパフィの父親はいまだに説教をされていて、放心状態となっていた。




「ん……?」


 昼のままだったが一晩経ち、ピアーニャが目を覚ました。しかし身動きがとれない事にすぐに気づく。

 意識がはっきりしてくると、後ろに何かがくっついて、体を抑えているのが分かった。そしてその正体に気づくと、顔から血の気が引いていく。


(たのむ、これもユメであってくれ! さっきまでユメのナカで、オマエにおいかけられていたんだっ!)


 夢なら覚めてほしいと願うピアーニャだったが、その願いも虚しく、背後に寝ているアリエッタが笑顔で抱きしめているのだった。


「ぴあーにゃ~おはよ~」

「ひっ……お、おはよう……」

(起きたら横にぴあーにゃがいてビックリしたけど、風邪引かないように温めてあげないといけないからね。でもちょっと汗かきすぎ? 暑かったのかな?)


 悪夢(アリエッタ)による冷や汗である。


「総長お目覚めですか。現在3刻ですよ。疲れは取れましたか?」

「たったいま、ねおきでイッキにつかれたぞ……」


 アリエッタに起こされながら愚痴をこぼすと、夜間の報告を聴き、今日の予定を決めにかかる。

 その間にアリエッタはミューゼに身だしなみを整えられていた。


「うー」

「はいはい、良い子だからじっとしててね~」


 そんな光景を、離れた場所から太った団体が「可愛い」と言いながら拝んでいた。


「アクマはまったくこなかったと。やはりあかるいとスガタすらみせんな」

「あの絵がいつまで効力を発揮するのかは分からないのよ。早めに川を調べた方がいいと思うのよ」


 予定はすぐに決まった。

 まずアリクルリバーの上流を調べ、可能ならアリエッタの昼の範囲を調べる。そしてここにいる連れ去られてきた人々を連れ帰って、再度攫われないようにダイエットさせながら夜は監禁してしまうか、もしくはリージョンを出るかを、本人たちを交えて決めなければいけない。

 話し合った結果、調査に向かうのはピアーニャとミューゼ。残って話し合うのはロンデルとパフィ。アリエッタはパフィと一緒にお留守番となった。

 予定が決まってからは、パフィが壁の外から摂ってきた木と草と土(しょくざい)で朝食を作り、腹ごしらえをしてからすぐに行動を開始した。


「あたしもアリエッタと一緒にいたかったなー」

「今日は私に譲るのよ。それに、その上じゃ私よりもミューゼの魔法の方が役に立つのよ」

「ではいってくるぞ」


 ミューゼが手を振ると、アリエッタが手を振り返す。そのまま上空へと昇っていった。


(あれ? ぴあーにゃのお父さんはこっちにいる? じゃああの白いのはどうやって動いてるんだ?)


 今までロンデルが『雲塊(シルキークレイ)』を動かしていると思っていたアリエッタは、パフィの隣で首を傾げる。自分より小さいピアーニャが動かしているとは、まったく思っていなかった。


「さて、こっちも一仕事なのよ。パパをどうにかしないと、家に帰れないのよ……」


 自然とパフィの目はジト目になり、やや離れた場所にいる父親を睨みつけていた。




 広い範囲を見る為に、やや上空へとやってきたピアーニャとミューゼ。今回は下を見なければいけないため、『雲塊(シルキークレイ)』の外側を柵へと変形させていた。


「わー、山頂がよく見えますね。白いモコモコがいっぱい積もってる」

「あれは『わたアメ』だな。そらにうかぶアメからふりつもっているんだ。それがじめんにとけて、アリクルリバーになっているんだが……サンチョウふきんにヘンカはなさそうだな」


 しれっとアリクルリバーの酒成分の謎を話し、山頂以外を見始めるピアーニャ。ミューゼも酒を飲まない為、その辺の話は聞き流して川へと目を凝らす。

 そしてすぐに、原因と思える物を見つけた。


「総長、アレは……」

「みずうみか? ずいぶんとフシゼンなかんじだな……」


 2人の視線の先にある物……それは、四角形に区切られた大きなため池(プール)だった。

 視線を交わし頷き合うとゆっくりとその場所へと向かう。しかし……


「う……凄いお酒の匂い……」

「それにあまい。アリクルリバーのじょうりゅうだからな……だいじょうぶか?」

「ちょっとフワフワ……」

「っておぉい!? おまえサケによわいのか!?」


 色々あって、全員がアリクルリバーの性質をすっかり忘れていたのだった。そして道中では酒気だけで酔ってしまい、大変な目に合った事も……。

最初の頃に「パフィの武器どうしよう、剣はありきたりだし…」とか悩んでたんですよね。で、なぜかそのタイミングで思い出したのが『海上レストラン バ〇ティエ』だったという。


連休も終わり……また激しい日々へと戻っていく。

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