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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
食べ物と悪魔の世界
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お肉の盛り合わせマウンテンプレート

 アリエッタとミューゼが消えた事で、パフィは冷静さを欠いた目でロンデルを睨みつけている。


「まずは落ち着きましょうか、パフィさん。そして皆さんも」


 パフィの後ろでは、ピアーニャに怒られたくない一心で登山の準備を進めているシーカー達が、ロンデルに従い動きを止めた。


「落ち着いてなんていられないのよ! あの2人が悪魔に──」

「わかってるから、おちつけといっている!」


 台詞と勢いが全く似合わない、少したどたどしい幼い声が響く。

 全員が声のした方……上を見ると、白い塊がゆっくりと降りてきた。


「……どういう事なのよ? そうちょ……総長? 何してるのよ?」

「つかれてるだけだ、きにするな」


 偉そうに言っているものの、ピアーニャは『雲塊(シルキークレイ)』の上でぐったりと寝そべっている。

 というのも、昼過ぎにラスィーテへと到着していたピアーニャ達は、すぐに支部でパフィが山の調査の依頼を受けた事を調べ上げ、全速力で飛び、なんと暗くなる前にシーカー達の野営地の近くへと到着していたのだった。『雲塊(シルキークレイ)』を全力で動かし続けたピアーニャは、到着した途端に疲労困憊で休憩。ついでにアリエッタに会って子ども扱いされるのが嫌だった事もあり、少し離れて様子を見る事にしていた。

 だが疲労に加え、太ってもいないのに悪魔に連れ去られるとは思っていなかった事もあり、動き出すのがかなり遅れてしまったのだ。黙ってはいるが、寝そべったまま出てくる程、内心焦っている。


「とりあえず、パフィ。のれ」

「えっ……」

「さぁ、アリエッタさんとミューゼオラさんを追いますよ」

「!」


 アリエッタの名に反応して、パフィは言う事に従い、『雲塊(シルキークレイ)』の上に飛び乗った。

 続いてロンデルも飛び乗り、下にいるシーカー達に語り掛ける。


「申し訳ございません。これより我々が調査を兼ねてお二人を捜索します。みなさんは夜が明けてからで構わないので、クリムさんを連れてシュクル支部へと向かい報告してください」

「あ、ああ。了解した」


 流石に総長と副総長が出てきては、指示に従うしかない。空を飛べないと、ついて行くことすら出来ないからだ。

 しかしそこに待ったをかける者がいた。


「おいちょっと待て!」

「なんだ?」

「受け取れ!」


 アリエッタから紙を奪って怒られた男が、それを投げた。ロンデルがなんなくキャッチする。


「! ミューゼの杖なのよ!」

「……気をつけろよ!」

「ありがとうなのよ!」


 そして3人はゆっくりと上昇し、山へと入っていった。


「疲れてるって言ってたけど、大丈夫なのよ?」

「これくらいでうごくなら、もんだいない。ただ、なにかあったら、おまえたちにタイショしてもらうことになるぞ」

「わ、分かったのよ」


 パフィが気を落ち着けている間にも、ピアーニャは迷わず山頂へと向かっている。


「……もしかして、心当たりでもあるのよ?」

「うむ。サンチョウにある、ヤツらのすみかにむかっている」

「住処……そんなのあったのよ……」

「総長はこれまで何度か悪魔と対峙した事があるようです。この山の麓で攫われたのであれば、最もアリエッタさん達がいる可能性が高いのは、山頂だそうですよ」


 ラスィーテで悪魔がいるとされている場所は沢山ある。そのうちの1つがリエージュマウンテン山頂だった。

 悪魔は獲物を捕らえると最寄りの住処へと運ぶ習性がある。ピアーニャはそれを知っていたのだ。


「ヤツらはくらいところでしかカツドウしないのだ。そしてくらいとスガタがみえん」

「そうか、だからアリエッタが突然明るくしたら、明るい場所で悪魔がひっくりかえっていたのよ」

「? どういう事ですか?」


 パフィは昼間の出来事を詳しく話した。

 2人は驚いたり唸ったりしながら、真剣に話を聞き続ける。


「なるほどな。それでふたりはさらわれたのか」

「夜を消し去る事が出来るのは、悪魔達には脅威でしょう。ミューゼオラさんが一緒なのは、おそらく抱いていた為にどちらが犯人か分からなかったからではないでしょうか」

「しかし、こんどはヨルすらあかるくするか……アイツのチカラはなんなのだ……」


 他に特殊な事を見ていなかった為、アリエッタの能力を『結界のような壁を作る力』と思い始めていたピアーニャは、またしても頭を抱える事になってしまった。

 悪魔やアリエッタについて話しながら、3人はゆっくりと山頂へと移動していく。




「おい、君」

「わっ!? なに!?」

「うぃっ!?」


 背後から声が掛かり、星空に見惚れていたアリエッタとミューゼは一瞬身を震わせ、振り向いた。そこには丸々と太った男女が数人、不思議そうに少し離れてミューゼの事を見ていた。


「君は太っていないのか? どうしてここに?」

「え~っと……?」

(おおきい……)


 状況が飲み込めない2人は、思わずキョトンとしてしまう。

 少し呆然としていると、後ろの男性の1人が済まなそうに前に出てくる。


「あ~悪かった。突然暗くなって気づいたらココにいたんだろう? 理由とか分かるわけ無いよな」

「おぉそうだな。すまんすまん、はっはっは」


 なんとなく笑って誤魔化す男性が、横を向いて少し高くなっている場所を指差した。星明りに照らされて川と小さな滝が見えている。


「あそこに流れている川はアリクルリバーだ。そして俺達は悪魔によって連れ去られて来た。ここはリエージュマウンテンの山頂付近だと思う」

「へー、よく分かりましたね」

「あの川は他と違って甘いからな。それを知ってる者ならすぐにそう思うさ」


 シュクルシティ付近で同じ場所は2つと無い。山頂に降り積もった綿アメがゆっくりと溶けて地面を通ってラム酒の川となる。それがアリクルリバーの正体だった。

 川は壁の中にも流れていて、自由に飲むことが出来るようになっているが、丁寧に格子で囲まれ逃げ出せないようになっている。


「俺達は太り過ぎたせいで食料として連れてこられた。今も沢山の食べ物を与えられているんだよ」

「はぁ……痩せようとは思わないんですか?」

「最初はそう思って泣きながら運動してたんだけどねぇ……気が付いたらとても美味しい物が用意され続けるもんだから、なんかどうでもよくなってきちゃったのよ」


 女性が達観したような目で言っている。その様子を見たミューゼは、乾いた笑いを返すしか出来なかった。


「そうなると、私達が連れてこられた意味が分からないですね。別に2人ともラスィーテの住人ってわけでもないですし」

「そうなのか。抜け出すなら協力はしたいが、悪魔がどこにいるか分からないからなぁ。前に壁の上に登ったヤツが、悪魔に突き落とされて戻された事もあるしな」

「気にしないでください、ここがどこか分かっただけでも助かりました」


 ミューゼがそう言うと、数人が軽く手を振って寝転がり始める。今の会話も含め、生きる事を諦めた者達の行動だと、ミューゼは感じていた。

 この地では、それだけ悪魔の存在が大きいのである。


「さて……パフィが来れるか分からないし、杖も無い…か。どうしようかな」


 手を繋いでいるアリエッタの為に、冷静であろうとし、どうにかして脱出出来ないか考え始めるミューゼ。


「絶対助けてあげるからね、アリエッタ」

(そういえばパフィいないな。ミューゼは難しい顔してるし……変な場所だなぁ、屋根も無いし)


 事態を理解する為の材料(ことば)が無いアリエッタは、キョロキョロしながら独自に考え始めた。

 何があるか分からないので、2人はお互いに離れないようにだけはしている。


「杖があれば紙を出してあげられるんだけど……これじゃ絵も描けないよね、暗いし」

「かみ?」

(そういえば杖無いね。空は明るいけど手元は暗いし……だったら……)


 アリエッタはポーチから筆を取り出した。


「うん? どうしたの? ここには紙はないよ?」

「みゅーぜ」


 そのままミューゼを引っ張って、壁の傍までやって来ると、髪の色を変えて壁に絵を描き始めた。

 絵を描けるのは、何も紙だけではない。色が着くもの全てがキャンバスとなる。ただ人の家や物などに落書きするのはよくないという考えがあったからこそ、今までこのような行動に出なかっただけである。

 紙が無いのにどうして?と驚くミューゼの目の前で、壁に丸を描き、その周囲にチョンチョンと点をつけていく。


(絵本風の太陽なら暗くても描けるし、少し明るく出来るハズ……それっ)


 短時間で絵を描き終えたアリエッタは、すぐに絵に力を込めた。するとその一点が眩しい程に明るくなる。


「わっ、まぶしい!」

「なんだっ!?」


 至近距離で目がくらむミューゼと、少し離れた場所で寝ころんでいた男性が声を上げた。突然の明かりに、他の面々も遅れて驚きの声を上げ始める。


「こ、こんな事も出来るの?」

「んっ!」

(やった大成功! 部屋の中とか照らすには丁度いいかも)


 うまくいったと、アリエッタは小さく跳ねて喜ぶ。


「凄いよアリエッタ! これなら明るく出来るし悪魔も近寄れないかも」

「んにゅっ♪」


 思わずミューゼが頭を撫でると、アリエッタから可愛い声が漏れる。それを聞いたミューゼは目を輝かせて、さらに撫でまわす。


(今の鳴き声なに!? 可愛い!! もっと聞きたい!!)

(へ、変な声出た……それになんか凄く嬉しい気分に……なんで?)


 日が経ち可愛がられ続けた結果、幼女としての本能がゆっくりと覚醒していくアリエッタであった。

肉を食べてスタミナつけないと、フラフラしそうです。残暑というやつです、タブン。

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