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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
ランページドリーマー
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変な儀式を思い出します

「えっ、エインデル王国の!?」

「ディラン……さま!?」


 ディランの正体を聞いた2人の少女は、ほのかに赤く染めていた頬を青く変え、2人でコソコソ話し始めた。


「どうしよう……噂のディランさまよ……」

「お母様が絶対に近づくなって言ってた……」

(あーあ……)


 ディランの噂は他国の王族やその関係者には有名だったようで、特に女性陣からは要注意人物扱いされている様子。それは敵対国家であろうとも例外ではなかった。

 そのことを実感し、ボルクスがやれやれといった感じに首を振っている。


「でも、助けてくれたし」

「う~ん……」

(こりゃ頼っていいのか迷ってる感じか?)


 先程の危険な状況から、2人の少女が考えている事をある程度察したボルクス。

 しかしそんな事はお構いなしと、ディランが少女達に話しかけた。


「さて、君達はどうしたい? ここにいると危ないと思うのだが」

「ひゃっ。え、えーっとですね……」

「…………あのっ、助けてくださいっ」

「ココネちゃん!?」

「お城に戻れないなら行くしかないよ。いちおう知ってる人だし……」

「う……うん……あの、どこかに連れてってください!」

「わかった、着いてくると良い。ボルクス、後ろから警戒を頼む」

「あれ? わ、わかりました」


 なんとマトモに対応し、城とは反対方面の林の出口に向かって歩き始めた。それも少女に合わせてゆっくりと。

 思っていた動きと全く違い、ボルクスは困惑する。普段であれば、幼い少女を口説き、可能であれば抱っこまですると思っていたのだ。そうなる前にフォローし、いざとなったら攻撃も辞さない覚悟もあった。


「大丈夫……なのかな?」

「うん。血を吸われなかったね」

(どーゆー噂聞いてたんだいキミタチ)


 世話役の教育だろうか、子供に『危ない人物』に近づかないように言い聞かせる為に、近づいたら殺されるような噂を聞かされていたようだ。近づいてはいけない対象を教えるのに『恐怖』を効果的に使うのはよくある事である。


「この国を出るが構わないかい?」


 ディランは一度エインデルに戻る事にしたようだ。幼い少女を2人守りながらでは調査はままならないというのもあるが、城から逃げてきた重要参考人を確保したというのが大きい。現地で慎重に探らなくても、有用な情報を持っている可能性が高いのだ。

 これからの動きを伝えられた2人は目を合わせて少し考え、ディランに向かって頷いた。


『はいっ』


 もちろん緊張の眼差しは解かないまま。しかし警戒の色は少し薄まっている。


(ディラン様一体どうしたっていうんですかい……正常なら捕まえたり匂いかいだりするから止めなきゃいけないってのに。実は洗脳がまだ効いているのか?)


 むしろボルクスの方が警戒していた。(あるじ)に撃つための攻撃魔法を準備していたが、今の所無駄になっている。

 広い場所に出たディランは、来た時と同じように【滑走閃路(スカイドライド)】を発動し、最寄りの塔のある町まで移動を始めた。


「わ、なにこの魔法」

「すごーい!」


 始めて体験する空飛ぶ魔法に興奮する少女2人。

 その少女達を優しい眼差しで見つめ、前方を見直すディラン。

 そんな様子のおかしい王子を心配するボルクス。


(洗脳効いてるのか? 効いてないのか? どっちなんだ? こんなマトモなディラン様はありえないんだが)


 仕えている主君の評価は異常に低いままだが、平常時で性格がマトモになっているのは、それはそれで怖いようだ。

 多方面から警戒されている当の王子はというと、空を見上げて少し前にあった事を思い出していた。




 ──少し前のエインデル王国では、フレアによるディランへの厳しい再教育が行われていた。

 王城のとある部屋、部屋の中心ではディランが天井から逆さに吊るされ、黒いローブを着た者が6人、おかしな歌を歌いながら、怪しい踊りでディランの周りをゆっくりと周っていた。


『アァ~オアア~♪ オサナイ~(イクナイ~)♪ ヨウジョ~(キンシ~)♪』

「さぁ心を込めて唱えなさい。貴方の対象年齢(ストライクゾーン)は」

「わ、私は、5さ──」

 バチッ

「ぐああああっ」

「違うでしょう!」


 とても恐ろしい事をしているようだ。初期は準備の為に協力していたメイドが2人程、そこはかとない恐怖を感じて二度と手伝わなくなったという経緯もある程の儀式である。


「貴方の好きな年齢層は同年代です。同年代と言いなさい。さすれば幸せになるでしょう」

「私は、私は……くぅぅ、ピアーニャ……」

「まだ駄目か……()()()は本当に強情ね」


 どうやら異性の趣味を矯正している様子。


「どうしましょう。これ以上強くすると危険ですが……」

「流石に人格破壊は避けたいわ。変態に育ってしまったけれど、それ以外は正しく有能だもの」

「そろそろ始めて1刻経ちます。本日も枕元で『幼な離れの歌』を囁き続けるしか……」

「わかったわ。皆、今日もご苦労さま」


 本日の儀式(きょうせい)は終了したようで、黒ローブの者達は残念そうに項垂れながら、ディランに()()()()()()をかけ直していく事になる。

 ローブを脱いだ胸の大きなメイドをディランの正面に立たせ、頭を掴んでディランの視界を強制的に大きな胸に向け、全員でゆっくりと頭の中に魔力を込めていく。その時に思想を魔力に含めるのだが、フレアが作った専用の詠唱呪文によって、毎回全く同じ洗脳がかかるのだ。


『離れるべし幼きもの。寄り添うは熟れしもの。凍れよ心。演じよ王。真なる愛は民が為──』

 フォォォォン……

「あっ、あっアッ」


 長い長い詠唱をしながら少しずつ魔力を流していくと、徐々にディランの目から光が失われていく。その目は目の前のメイドの胸を凝視するようになっていく。


(うーん、羨ましいが羨ましくねぇな……)


 部屋の隅から遠目にメイドの胸を見ているボルクスが、憐みの目になっていた。

 こうして長時間にわたる不穏な詠唱が終了した。


「今日はもういいわ。部屋に戻りなさい」

「ハイ、ホンジツモ、ゴシドウイタダキ、アリガトウゴザイマシタ。オオキナオッパイサイコーデス」


 解放され、言葉遣いが丁寧なカタコトになったディランが部屋から出て……行こうとしたその時、突然ドアが外から開かれた。


「お母様ー! ちょっとお兄様借りに来たんだけどー!」

「テリア!?」


 入ってきたのはネフテリア。ヨークスフィルンから戻り、ここまでやってきたのだ。


「うわ何この部屋、明かりがロウソクって……なんでローブが……」

「そんなことよりテリアどうしたの? ディランなら……あ゛」

「王妃様どうしました? そんな汚い声をお出しにな……っ!?」


 フレア達が見てしまったのは、ディランと見つめ合う美幼女の姿。しかも簡単なものだがドレスで着飾っている。


「何故ニオが!?」


 フレアは来賓対応時にも会っているので、ニオの魅力を直接知っている。

 そんなニオがディランの前に現れてしまった。


「お、王妃様、あの子は!?」

「アリエッタちゃんと互角の魅力を持つ子、ニオよ」

「なっ!」

「ディラン様が衝動的に攫う程の可愛らしさを持ったアリエッタちゃんと互角……」

「そ、そんなとんでもない子がなぜこの場所にっ」

「魅力については同意するけど、なんなのその扱い……」


 おかしな盛り上がり方をするメイド達。それを不思議そうな目でみるネフテリア。

 大人達が騒いでいる中、ニオはディランの目に不穏なモノを感じ取っていた。


(この人、変な魔法にかかってる……かわいそう……)


 慈愛の眼差しでディランの目を見つめ、そっと手を取る。すると、ディランの頭から湯気のように魔力が沸きだした。


「あっ……」


 フレアが何かに気づいた。


「うちが助けてあげるね」


 ニオがディランの手を介して、魔力を送り込んだ。フレアが止める間もなく。

 ディランの体が光り輝く。フレアが頭を抱える。そしてネフテリアが察した。

 光が消えると、ディランの目に光が戻っていた。そしてニオに跪く。


「ありがとう正気に戻してくれて。貴女こそが運命の人だ。どうか私の愛を受け取っていただけないだろうか」


 当たり前のように口説き始めた。

 その瞬間、大人達は驚愕と絶望に打ちひしがれていた。


『うそおおおおおお!!』

「今までの苦労があああぁぁぁぁ……」

「ちょっとテリア! どうしてくれるのかしら!」

「えぇ……」


 フレアは憤慨する。洗脳は長い時間をかけて行っていたのだが、今の一瞬で無駄になってしまったのだ。

 ニオは事情を全く知らず、善意だけで洗脳を解除した。むしろ洗脳する事自体が悪い事だと自覚しているので、大人達は怒るに怒れない。

 そんな大騒ぎが起こっている中、ニオは何を言われたのかすぐには理解出来ず、首を傾げていた。


「………………ふぇ?」

なぜか強くなってたディランの回想シーン

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