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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
ランページドリーマー
400/404

他国の密偵に依頼します

「よう、また邪魔するぜ」

「邪魔だから帰れ!」


 なんとケインとエンディアがエルトフェリアに再度やってきた。しかも姿は名前入りの水着だけではなく、上半身に販売したばかりのセーラー服を纏っていた。そのせいで下半身がかなり強調されている。


「まぁまぁ。そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ」

「あんたらもうちょっと恥を知ってから出直してくんない?」


 V字型の水着で自慢のボディラインを惜しげもなくさらけ出すエンディア。

 2人は周囲の人々の視線を独占し、誇らしげである。

 必死に対応しているネフテリアの顔が赤い。


(ここで追い返したいけど、そんな簡単な相手じゃないし、中に招くのもヤだなぁ……どうしよ)


 この2人をどうするか……ネフテリアが迷っていると、後ろから小さな影が飛び出した。


「あのっ、こんにちはおじさん!」

「おじっ!?」

「えっなんでここに!?」

「なにこの子可愛い!」


 ニオの登場に三者三様の衝撃を受ける大人達。


「は、はっはっは。できればお兄さんと呼んでくれると嬉しいなぁ」


 ひきつった笑みを浮かべて、ニオに呼び方の訂正を求めるケイン。

 呼び方の注文を受けたニオは、少し考え、


「わかりました、オニイサンおじさん」

『ぶふーっ』


 周囲の大人全員が噴出した。ケインは地に倒れ伏した。

 ニオはメレイズがイディアゼッターの事を「ゼッちゃんおじさん」と呼んでいたのをふと思い出したのだ。完全なる悪影響である。

 ケインを慕うエンディアは反応に困り、オロオロするしかない。


「えとあの、テリアお姉ちゃん。オニイサンおじさんとお話したいです」

「え? あー……仕方ない。部屋1つ使っていいわよ」

「わぁい!」

『ぐふっ、かわよ……』


 喜んだニオの可愛さに当てられ、大人達が倒れた。


「一体ケインの何がニオをここまで喜ばせるのか……。まぁあの部屋を使うといいよ。わたくしが2人を連れていくから、クリムにお茶とお菓子を用意してもらいなさいな」

「はーい」


 軽い足取りでフラウリージェに戻っていくニオ。扉を開けようとした瞬間、先に扉が開いた。


「~~~~!?」


 声にならない悲鳴を上げ、ニオは固まってしまった。

 扉の奥から現れたのは、アリエッタとミューゼだった。


「いやタイミング……アリエッタちゃんどうしたの?」

「ニオ、ケイン、だいじょうぶ?」

「えーっと……」(今大丈夫じゃなくなった気がする)


 ネフテリアは色々と諦めて、ミューゼに頼んでケインとニオを部屋まで運ぶことにした。

 以前他国の王族を苦しめ続けた部屋は、今ではフラウリージェの休憩部屋になっていた。豪華な装飾が部屋の半分だけ取り外され、テーブルには華美過ぎないクロスが掛けられ、過ごしやすい雰囲気になっている。もう半分は豪華さをそのまま残し、フラウリージェの新作を着て、シチュエーションを楽しむ場として活用されている。

 部屋を見たエンディアは大いに盛り上がり、本物の王女(ネフテリア)に豪華な椅子に座ってもらうよう必死に頼み込んでいた。ネフテリアはちょっと恥ずかしかったが、優雅に座って見せる事にした。


「うわああああ!! 眩しい! 本物だわ! ほんものおおおお!!」

「うわーーーー!」


 実に楽しそうである。何故かアリエッタも一緒になって眩しそうなポーズで叫んでいる。

 そんな感じの遊びを続けていると、クリムがお茶とお菓子を持ってきた。


「……何してるし?」

「せ、接待かな」


 自信に満ちたアリエッタとケインを中心に、全員でマッチョポーズをしていた最中だったので、ネフテリアとミューゼとニオが恥ずかしそうにゆっくりと腕を下ろした。


「この部屋は面白い事しないといけない呪いでもかかってるし?」

「あはは……」


 気を取り直してテーブルを囲む6人。

 大人4人がテキパキと席を決めたので、残るは隣り合った2席。


「アリエッタ、おいでー」

「あのえと、テリアお姉ちゃん……」

「ほら座って座って」

「う、はい」


 ネフテリアが笑顔でニオをアリエッタの隣に座らせるが、もちろんわざとである。

 ニオがアリエッタを克服出来ればよし。出来なくても面白ければよしの精神だった。後で全力で甘やかすのも忘れない。


「さて、露出狂2人にウロウロされると、お店としては困るのだけれど」

「服は着ているが?」

「下半身の形を隠しなさいよ!」


 ケインには苦言を呈するが、エンディアには何も言おうとはしない。というのも、エンディアの露出癖はサイロバクラム全体の意識に関わるので、個人を責めても意味が無いどころか、リージョン間の問題となる場合があるのだ。


「お客の迷惑になるから連れてきたけど、今回は何の用なの?」

「うむ。服はいくらあってもいいが、少々困った事があってな」


 話によると、最近ヨークスフィルンに不審な団体が現れるらしい。

 その団体はファナリアからやってきては、いくつもの転移の塔の転移先を今更調べているという。さらに調査すると、他のリージョンでも同じ事をしているそうだ。


「それだけだったら社会勉強かもしれんのだが、恐ろしい程に高圧的でな。しかも気に入らない事があると魔法で攻撃されるらしい」

「おーぅ、ファナリア人が一括りで非難されそうなヤーツー……」

「そんな人いるんですね」

「んー、いくつかの国がそんな感じかなぁ」


 サンクエットなどの友好国はともかく、ファナリアには沢山の国があるので敵対国家も存在する。その中には魔法至上主義や、ファナリア至上主義的な考えを持つ国もあり、そのような国は危険と判断し、意図的に転移の塔を設置していなかったりする。

 もちろん犯人が敵対国家とも限らない。現時点で判明しているのはファナリア人であることだけ。


「なんかもっと詳しい情報無いの?」

「俺様も何か知ってる事がないか聞きに来たってくらいには、無いな」

「そっかー」


 今ケインから得られる情報はもう無い。そう判断したネフテリアは少し考え、一度部屋の外に出た。

 ここまでの話の間ニオはというと、アリエッタに気を使われ、失神寸前になっていた。


「ニオ、だいじょうぶ?」(やっぱりさっきから元気ないなぁ)

「ハヒ……」

「おかし、あーん」(ほら元気だして)

「あ゛、あ゛、あ゛あ゛あ゛」

「あの、その子、口から出してはいけない音出してない?」

「気のせいです」


 微笑ましい(?)2人を眺めながら待っていると、ネフテリアが戻ってきた。一緒に5人の密偵と思われる男達と1人の兵士が入ってきた。


「その者達は?」

「他国の密偵のリーダーよ。あとウチの兵士の伝令」

『は?』


 ケインもエンディアも、それは大丈夫なのか?という顔になっている。

 ついでにミューゼも不思議そうに首を傾げている。


「なんか増えてません?」

「うん。2カ国増えたから」

「いつの間に……」


 少し前は、サンクエット、ミデア、ユオーラの3カ国だったが、最近増えたらしい。

 友好国に店員募集した際に、他の国からも応募があった。その国の名は「コスタダリエ」「フェニーゼン」。どちらもフラウリージェの熱狂的なファンになった王妃と王女を抱えている。

 今回の件はファナリア全体の評価に関わる事なので、各国に共有しておこうというネフテリアの判断で連れてきたのだ。

 確認を兼ねて、ケインと共にもう一度同じ話をし、しっかりと密偵達に伝えた。この後兵士と密偵は別の場所で会議を行い、対策を練るであろう。と思ったら、


「あの、何かご褒美は……」

「何その期待するようなキモい上目遣いは……」


 密偵だけではなく兵士まで、なにやら物欲しそうにしている。

 その目に反応したのはエンディアだった。


「ええっと、踏んで差し上げましょうか?」

「だっ誰だ……いや、しかし、ううむ……」

「こらこら迷うな迷うな」


 セクシーなお姉さんの被虐的な誘惑に、密偵達の3人が狼狽えていた。

 狼狽えていない者は普通かというと、


「でしたら私の方は、ニオたんに踏んでいただきたい」

「ふえっ!? うち!?」

「俺はアリエッタたんがいいです」

「?」


 明らかにもっとヤバかった。

 こいつらどうしてやろうか、と考えるミューゼを制し、ネフテリアはとある紙を取り出した。描かれているのはノエラ、エークタルトの2種類。それを6セット。しかも手のひらサイズではなくその何倍もある大きさの紙になっている。壁に飾るのによさそうだ。


「まだ販売してない大きいサイズのブロマイド」

『王女ネフテリア様の仰せのままに!』


 エインデル兵士が代表として受け取り、迅速に密偵達と共に部屋を後にした。

 その姿にミューゼは呆れるしかない。


「それでいいのか王族直属の人達……」

ケインは女装させ放題。

他国の人は操り放題。

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