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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
王女の策謀とダンジョンの世界

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エルトフェリアと外交の準備

 エルトフェリアが出来てからというもの、ネフテリアは基本的に城には帰らず住み着いている。

 目的はアリエッタの管理と保護、運営の勉強と経験、ミューゼと一緒に暮らしたいなど色々あるが、今では外交のような事もやっていた。

 というのも、エルトフェリアが本格的に始動した時点から各国から注目され、他国からやってくる人が多くなったのだ。もはやニーニルがエインデル王国の玄関口と言っても、過言ではない程である。

 半年すら経っていないのにこの繁盛っぷりは異常だが、実際商品も食事も最上級なので、多くの人が支持している。もちろん反発する人々も存在するが、人が多すぎて全く目立たない。


「えーっとなになに?『高い! もっと安くしてくれ! いっぱい食べたい!』はぁ……」

「分からなくはないですけどね」

「たまの記念日ならいいけど、安くすると他の店の客まで取っちゃうからねぇ。これでもラスィーテ人の料理にしてはやさしい価格になってるし」


 エルトフェリアの入り口付近には、ご意見用の掲示板が設置されている。ここに店へのメッセージを残せるのだ。

 万人にも見えるようにしたのは、客同士で書かれた内容を精査出来るようにするため。質の悪いメッセージは別の客によって捨てられるという仕組みである。逆に多数の人が同意した内容は、閉店まで残り続け、オスルェンシスやヴィーアンドクリームの経理担当のメイド長が問題無いと判断して、初めてネフテリアの元に届くのだ。

 他にも、客同士のコミュニケーションツールとしても役に立っている事もある。


「これは……『可愛いアリエッタちゃんに会いたいです』か。うん、わかる」

「本当に可愛いですからね。手伝ってもらったら、客の命が危ないくらい」


 アリエッタがヴィーアンドクリームで手伝うと、その頑張る姿と可愛らしい笑顔、そしてカタコトに成長したしゃべり方に当てられ、多数の人が胸を押さえて悶えてしまう。時々気絶者も出たりする。


「他には……『黒い廊下ってあるんですか?』『オスルェンシスさん美しい! 護衛でなく配膳してください!』ちょっとシス。なんでこれ選んだの」

「嬉しかったので、つい」

「『ムームーさんを嫁にください』……これは誰が?」

「ナーサです」


 ナーサとはメイド長の名である。


「なんで? 2人の間に何かあった?」

「分かりません……」

「男同士以外にも目覚めたのかしらね?」


 ナーサは男性同士のカップルを眺めるのが生きがいという、腐の精神を持ったメイド長である。王城の兵士達や王子とその側仕えを見ては、妄想を膨らませている。ネフテリア達もその事は知っているのだが、ムームーという女(・)性(・)がターゲットになる理由が分からないのだ。

 実は仕事の関係上、ノエラがナーサにムームーの正体(せいべつ)を明かしていた。その為、最近の趣味は手伝いで出ているムームーを追う男達の熱い視線の数を数える事。不特定多数の同性に狙われるムームーの姿に楽しみを見出したのだ。


「最近はアリエッタがくれる新作の服の絵に感銘を受けて、真剣に絵を描く事を考えているらしいわよ。なんでも後世に残さねばとかなんとか……」

「えっ、何を残す気なんですかね?」


 実際は何も変わっていないどころか、ますますエキサイトしているナーサの心境の変化が分からない2人はしばらく悩んでいたが、この問題は一旦放置する事にした。


「ああそれと、王妃様から手紙を預かって参りました」

「……いつ?」

「昼頃ですね」

「早く言いなさいよっ。こんなに時間経ってからの報告要請だったら怖いんだけど」


 オスルェンシスから手紙を奪い取り、急いで目を通すネフテリア。徐々に顔が歪んでいく。


「えぇ……めんどくさ……」

「何かありましたか?」

「他国の王族をまとめて連れてくるから、大きい部屋を用意しておきなさいだって」

「おぉぅ……」


 各国から密偵が送られてくるように、エルトフェリアは世界の注目の的なのである。友好国のみならず、あまり関係を持っていなかった国からもエインデル城に使者が派遣されていたのだが、中心人物であるネフテリアは知らん顔。

 結局王妃フレアが各国の要望をまとめ、エルトフェリアで国際会議を行う事にしたのである。

 もちろん堅苦しい目的は表向きで、本当の理由は『密偵ばかりずるい。我々王族もフラウリージェを見たい』といった欲望丸出しな感じなのだが。


「部屋はどうします?」

「んー、壁ぶち抜くかな」


 来賓数が多いという事で、急遽奥の部屋の工事が行われる事になった。もちろん装飾も含めて。


「飾りはノエラさんと……アリエッタちゃんはどうかなぁ」

「ノエラさんに伝えておきますね」


 内装については、服や他のリージョンの風景を描くように部屋も描いてくれないかなーという淡い期待を持って、なんとなーくアリエッタへの打診をしてみようという事になった。

 翌朝、詳しい話をする為に、ネフテリアがヴィーアンドクリームの裏へとやってきた。クリムとナーサが食材チェックと下準備を進めていて、ノエラとルイルイがキッチンの隅にある休憩用テーブルに待機している。


「あ、来たし? こういう話はナーサに任せるし。ボクはもうちょっとキリの良い所まで進めてから参加するしー」

「はいはい。出来るだけ聞いてほしいから、早めにお願いね」


 実際クリムに頼む事は当日の料理だけなので、話し合いの参加は一応程度のものである。


「今回来るのは3カ国。我が国公認の密偵がいるサンクエット、ユオーラ、ミデア」

「公認してたら密(・)偵じゃないですよね?」


 話始めたとたん、ナーサが遠慮なくツッコむが、


「…………視察と交流が目的で、各国から王妃と王子か王女の合計2~3人。あと宰相レベルの人が1人と、護衛が数人来るわ」

「聞き流しましたね」


 まずは手紙に書かれていた予定を共有した。

 今回やってくる3カ国は密偵達と連携し、それぞれの牽制と友好を兼ねて、一緒にエルトフェリアを訪問するという事にした。その事前挨拶として、まずはエインデル城に訪問。続けて後日、フレアに案内されてエルトフェリアに来るという。

 エインデルからの要望は、変に住民に威圧感を与えない為に、出来るだけ身軽な人数で来ること。警備はエインデルの兵士と、リージョンシーカーがメインで行う事。エルトフェリアを一時的に貸し切りにする為、数日の準備期間をいただく事などが挙げられている。


「流石お父様とお母様。パフィとサンディさんが直接関わらなければ完璧ね」

「……国のトップにする評価とは思えないですわね」

「貸し切りにするから、10日以上は準備期間欲しいわね。部屋は奥の2部屋の壁を壊して準備。テーブルや椅子の手配と、内装はアリエッタちゃんに頼めるか次第で変わるわ」


 状況が状況なので、話し合いは至極真面目に、順調に進んでいる。しかし、この後から状況は一変する。


「どのような装飾をするか悩みますわ」

 ぽんっ

「まぁ頼めるかは分からないから、すぐに打診してみましょ」


 妙な音が部屋の中に響き、クリム、ノエラ、ルイルイ、ナーサがネフテリアを凝視。口が半開きになっている。影の中でもオスルェンシスが唖然としている。

 しかしネフテリアは何も気づいていない様子で、話を続ける。


「プランとしては、フラウリージェの視察と発注、ヴィーアンドクリームで食事、最後に完成した服のお披露目ね」


 真面目な話をしているのだが、4人の頭には入ってこない。その視線はネフテリアの頭上へと注がれている。


「? どうしたの?」

「いえあの……」

「あたま……」

「頭?」


 何かがあるのか、気になったネフテリアは自分の頭に手を伸ばす。すると、


 しゅっ

「ん~? 何もないわよ? お菓子でもついてた?」


 いつも通りのツヤツヤな黒髪しかない。

 何もない事を確認し、改めて話し合いを進行しようとする。


 ぽんっ

『!?』

「どこまで話したっけ。ああ、料理に関してはおまかせで……どうしたの?」


 再び自分の頭が注目されているのに気づき、ネフテリアが首を傾げる。


「あの……」

「何?」


 ナーサがおずおずと手を上げ、恐る恐るネフテリアの頭を指差した。


「頭、大丈夫ですか?」

「えっ、いきなり何? なんでわたくし、おかしい人みたいに言われてるの?」

「いやその、そうじゃなくてっ」


 いきなり失礼な事を言われて、流石にムッとするネフテリア。頭に何かいるのかと思って、虫を逃がさないというような勢いで、両手を頭の上でパンッと合わせてみた。

 しかしそこには何も無い。ただ両掌が痛くなっただけ。


「んー? みんなどうしちゃったの?」

 ぽんっ

「……悪かったし、なんでもないし。今は話を続けるし」


 これは自分達が何を言っても何をやってもどうにもならないな、と判断したクリムによって、この場は何事も無いかのように話を進めていった。時々突然「ぐふっ」と誰かが噴き出すという謎のやりとりを除いて。

 ネフテリアは気づかなかった。話し相手の4人が、時々肩を震わせていたこと、たまに目を逸らしては、自らの太ももを思いっきり抓っていた事を。

 話し合いが終わり、それぞれ準備を開始する為に解散。しかしネフテリアが部屋に入ったのをオスルェンシスが確認した後、話し合いにいた4人とオスルェンシスが必死の形相で走り、誰も使ってない空き部屋に突入。一斉に壁に頭突きをした。


 ゴゴゴンッ

「はぁ、はぁ。死ぬかと思ったし」

「なんですかアレ! 一体何の呪いですか!」

「わか…りません。ですが犯人には心当たりがあります」

「……聞きに行くのが怖いですわね」


 オスルェンシスだけでなく、全員がある人物を想像していた。頭をちょっぴり腫らしながら真顔で。それは身近な人物なのだが、今は話を聞きに行くのがちょっと怖いと思っている相手。


「なので、クリムさん、よろしくお願いします」

「ボクだし!?」

「そこはほら、幼馴染ということで、頼みますわ!」

「チクショウ! 今度なんか奢れし!」


 本日の営業終了後、クリムはミューゼの家へと入っていった。そして無事に帰ってきた後、フラウリージェに集まったみんなに向かって、首を横に振った。


「30日あのままらしいし」

「……ノエラさん、特製の帽子をお願いします。ちょっとピアーニャ総長に助言を頂いてきます」

「了解しましたわ」


 急遽、ノエラとルイルイが超高速で帽子を作り、オスルェンシスが全速力でエインデルブルグを行き来した。

 その後日エルトフェリアでは、ハウドラント人のシーカーが警備として雇われ、頭の周囲に雲が漂う不思議な帽子を被ったネフテリアが、度々目撃される事になったのだった。

一体ネフテリアの頭に何が。


前フリは1話で充分。

次回はさっそく自国と他国の王族をいじりましょう(

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