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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
乙女の悪夢はトラブルの元

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料理勝負

「なんだ? どうした?」

「どういう事ですか総長さんっ。毒を食べされられないって?」

「え、あ、あーそれはだなー、いやそれよりもパフィが……」


 色々な事が起こって、ピアーニャの思考が鈍っているが、隣にはそれ以上に現状が分かっていないクォンがいる。

 幸いにも触れた時にパフィの生存は確認出来ているので、ピアーニャは自分の頭の中を整理する為にも、順を追ってクォンに説明していく事にした。


「まずラスィーテのヒトビトは、ショクザイをあやつるノウリョクをもっているんだ」


 クォンへの説明だが、周囲のサイロバクラム人にも聞こえるように話し始めた。シーカー達にとっては知っている事なので、サラダや食材に誰も近づけないように、場所を整えて始めている。

 ラスィーテ人の能力の1つである調理についてある程度語ったピアーニャは、続いてその能力の別の特性について触れていく。


「で、その『ショクザイをあやつる』ノウリョクだが、『たべられないモノはあやつれない』のだ」

「はぁ、え? 当たり前じゃないですか?」

「だとおもうだろ? だがその『アタリマエ』がジュウヨウでな。それはつまりドクがまざるとタベモノではなくなる。つまりあやつれなくなるというコトだ。だからラスィーテじんは、ドクブツをまったくつかえない」

「ほぁー……なるほど?…………!?」


 首を傾げたクォンだったが、すぐにその説明の矛盾に気付いたのか、倒れているウベルを見た。こちらはレジスタンス達によって生存が確認されている。


「きづいたか。パフィのリョウリでたおれるフカシギに」

「はい」

「で…だな。そんなノウリョクとおなじように、ラスィーテじんは、みただけでソレがたべられるかどうか、わかるのだ」

「えっ!?」

「ドクをたべさせるコトはほぼムリだというのは、そういうコトだ」


 食べ物に特化した能力は、どんなに微量であろうとも、異物の混在を見分ける事が出来る。故に、パフィが自らサラダを食べて倒れるという不可思議な現象に、ピアーニャは困惑していたのだ。


(ホカにもあるが、いまカンケイあるノウリョクは、こんなものだな)


 パフィのカトラリーによる戦闘技能については今は無関係なので、省く事にしたようだ。

 と、ここでパフィの指がピクリと動いた。


「ん?」

「あ、パフィさん。起きて」

「うぷっ……ここは……あ」


 気持ち悪そうにしながら、ゆっくりと身を起こすパフィ。

 同時にウベルも気が付いたのか、ゆっくり立ち上がり、顔色を悪くしながらもパフィに不敵な笑みを向けていた。


「ふぅ、ふぅ……どうやらアイツを甘く見てたのよ。でも負けるわけにはいかないのよ」

「いったいナニが──」

「提案があります!」


 両者が再び向かい合った時、水を飲んでサッパリした顔になったウベルが大きな声で語り掛けてきた。


「ワタシ達だけが食べるのは面白くない。なので改めて料理勝負のルールを提案する!」

「……いいのよ、言ってみるのよ」


 パフィと何をしていたかが明らかになった。


「リョウリショウブっていったか?」

「たぶん……あの美味しい方が勝つっていうアレですよね?」


 だったら先程の倒れたのはなんだったのか。その疑問を口にする前に、険しい顔をしたウベルが説明を始めた。

 ウベルの提案した『料理勝負のルール』とは、

 ・体に良い料理であること。

 ・料理の蓋(クローシュ)内に納めること。

 ・チームは自分を含めて5人まで。

 ・相手から出された皿を、必ず完食する。出来なければ即座に敗北。

 ・パフィかウベルのどちらかが倒れたら決着。立っていた方の勝ち。


「……なんじゃそりゃ? セイゲンおおいな?」

「5人って、食べる量減っちゃうんだけど……」


 話を聞いたピアーニャとクォンは首を傾げるが、周囲のレジスタンス達の顔は絶望に染まっている。


「なるほどなのよ。根性があるのを選ばないといけないのよ」

「はぁ?」


 ますます意味が分からないと、ピアーニャが眉をひそめる。

 パフィがケインを見るが倒れてピクピクしたままなので、仕方なく周囲のシーカー達を見回した。


『ひぃっ!』

「えっ、どーゆーコト?」


 何故か1歩後退ったシーカー達の中から、まずは2人を選んだ。屈強そうな男と、男勝りな感じのする女である。2人は選ばれた瞬間、この世の終わりかと思う程の絶望を、全身で表現した。


「なんでだ……」

「あとは総長とクォンでいいのよ」

『ゐ゛っ?』


 意味も分からず指名された2人は、なんだか怖くなって変な声が出た。


「こちらも決まりました。さぁ始めましょうか」


 ウベルの後ろにも、人生を諦めきったという顔をしたレジスタンスが4人立っている。


「ふっ。負けないのよ。サンディ・ストレヴェリーの名にかけて!」

「いやいや、ナニにオヤをまきこんでるんだ……」

「はははっ! では参りますよ! マズさで相手を倒した方が勝ち! ワタシが勝てば全ての異世界人には帰っていただきます!」

「はぁ、えっ……ええええええっ!? ちょっと待っ──」


 倒れているケインと、先程の惨事の理由を完全に理解したクォンが抗議しようとした。しかし2人は止まらない。


『いざ味勝負!!』

「っざけんなオマエらあああああ!!」


 ピアーニャの叫びとともに、の火蓋は切って落とされた。




『ぶぐっ、んごおおおおおおおっ!』


 2番目に作られたのはスープ。

 それを一口含んだシーカーの屈強な男は、いきなり吐きそうになったが、対戦相手と目が合いなんとか留まった。その相手も、鋭い目つきで涙を流しながら、口に含んだスープを呑み込もうとしている。


「なんでそのミタメで、そんなフウになるんだ……」


 ピアーニャの言う通り、料理の見た目は何の問題も無い。それどころか、どう見ても美味しそうとしか思えない。ウベルが出してきたスープは美しい黄金色で、見るものを引き付けていたのだ。


「んぐっ……はぁっ、はぁっ。と、とてつもないエグみとクサみがしっかりと別々に残っていて、口の中で糸を引いたような……何故なんだ、口に入れるまではあんなにサラサラだったというのに……」

「なにそれこわっ……」


 逆にパフィが出したスープはほぼ透明で、艶やかな野菜や肉が見えていた。これがラスィーテの技術かと、全員目を見張ったものだが……。


「ぐお…ぉ……スープはまだ耐えられない程では無かったのに、具を口に入れた瞬間に臭みと強烈が刺激が一気に頭の中にまで浸透したようだ……。まるで激マズの爆弾……」


 レジスタンスはなんとか気を取り直そうと、味が薄めのスープを飲んである程度リセットした。しかしそれは悪手であった。


「ふぐっ!?」(な、なんだ。まるで初めて口にいれたかのようなマズさ……しまった!)

「ど、どうした!」

「落ち着いて! スープで流し込んで!」


 レジスタンスの女が応援をし、一気に流し込むようアドバイスするのだが、食べている男が首を振る。そしてなんとか飲みこみ、震える口で言葉を紡ぎだす。


「っぐほぁ……ダメなんだ。味をリセットしてしまっては」

「なんでよ!」

「マズさに慣れ…色々マヒした状態でないと、ゲホッ、続けて食べる事は、困難だ。スープでリセットしたら、またマズいのが全身に染み渡るのを最初から体験してしまう……」

「ひっ」


 スープの味が普通に耐えられる程度だったのは、パフィの作戦だった。味のリセット。それは美味しい物を何度口に入れても新鮮な気持ちで味わう事が出来るという、趣(おもむき)のある食べ方である。それを悪用したのだ。


「なんてモノ作りやがる! 人でなしかっ!」

「……そもそもこの勝負は、そっちが持ち掛けてきたのよ?」


 生の部分があったサラダとは違い、スープには謎の技術によって極限まで凝縮されたマズさが溶け込んでいる。しかしこれを完食しなければ、敗北が決定する。

 覚悟を決めた男2人は、スプーンを置いて皿を手に取り、一気に口の中に流し込んだ。


『ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~!!』


 しかし流し込めたのはお互い3分の1程度。皿を置き、死人のような顔色になって、胸をドンドンと叩きながら頑張って飲み込んでいった。そして同時に地面に膝をつく。


「はあ゛っ……はあ゛っ……ヴごっ……」

「んぐぐ……も、ムリ……ぅお゛ぇっ……」


 2人とも死にそうになっている。それでも吐き出さないのは、開拓と交渉を受け持ったシーカーのプロ根性と、異世界を排除する事に使命感を燃やすレジスタンスとしてのプライドか。

 そんな男達と控えている仲間(イケニエ)達に向かって、パフィとウベルは優しい笑顔で言い放った。


「では、残りをアナタが飲んであげてください」

「仕方ないのよ。クォン、飲んじゃっていいのよ~」

『悪魔かアンタらあああああっ!!』

2品目はスープ。

勝負は相手を倒した方が勝ち。基本ですね。

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