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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
プロローグ
3/398

不思議な世界の逃走劇

2作目になります。書いてみたかった話があったんです……つまり出来心です。

流され系魔女の方とは違う書き方で、視点も3人称です。

更新頻度はまだ分かりませんが、10話までは巻きでいきますので、よろしくお願いします。

 淡い虹色の空の下、黄色の森の中から爆発音が鳴り響いた。


「いぃぃぃやああああぁぁぁぁ!! いくら何でもこれはナイでしょぉぉぉ!!」

「あぁぁぁぁぁ!!」


 森の中を必死に走る2人の少女がいる。そしてそれを追いかける巨大な獣。

 しばらく走って森から抜けた少女達は視線を交わし、頷きあう。

 ピンク色の髪の少女は杖を、銀色の髪の小さな少女は筆を手に持ち、振り返ると同時に行動を開始した。


「少しの間、あたしが相手になるよ!」


 2人を追いかけて森から出てきた獣に向かって、(ピンク)髪の少女は水の弾丸を連射した。

 獣は全てを避ける事が出来ず、当たる度によろめく。その様子から苦痛ではなく苛立ちを感じた桃髪の少女は、なおも撃ち続ける。

 その後ろでは、髪の毛先が赤色に変化した銀髪の少女が筆を振り回し、赤いインクで少し離れた空中に大きな模様を描いていた。

 大きな円に大きなバツという簡単な絵。出来上がると同時に桃髪の少女に向かって声を上げる。


「キテ!」


 その合図と共に桃髪の少女は絵の後ろに飛び退き、銀の少女は筆を掲げる。すると赤いインクが一瞬淡く輝いた。

 その光を見て獣が一瞬怯み、少女達は再び駆け出す。

 しかし今度は地面ではなく、空中に浮かぶキノコや雲を足場に、上へと昇っていく。

 それを見た獣は大きく吠え、2人を追いかける……が、見えない壁によって阻まれた。


「ギャウン!?」


 丁度赤い絵のある場所で弾かれた獣は、体勢を整えると、逃げた2人を見て怒りをあらわにした。


「ルウゥゥゥゥ…ガアアァァァァ!」


 吠えると同時に、獣の毛は黄緑色の炎へと変貌する。


「うわ、ヤバッ!」

「んぃっ!?」


 それに気づいた少女2人は、駆け上がるペースを上げて必死に逃げる。

 下から聞こえる衝撃音を聞きながら、空に浮かぶ虹色のシミへと向かい……それに飛び込む寸前、獣が見えない壁を突き破るのが一瞬見えた。




「ぅわっつぅ!」


 2人は鮮やかな色の中から飛び出した。


「うぅ……」

「なんとか…()()()に戻ってきたっぽいね」


 桃髪の少女が見渡すと、横には壁のようにそそり立つ地面がある。そして反対側を見ると、空が広がっていた。2人は虹の側面にへたり込んでいるのだった。

 銀髪の少女が立ち上がり、桃髪の少女に手を差し伸べる。


「そうね、帰ろっか」


 2人仲良く虹のふもとの方向へと歩き出す。しかし……


「ガアアアッ!」


「うげっ! しつこい!」

「!!」


 虹の中から先程の獣が飛び出してきた。

 流石に障害物の無い場所では、獣の足には敵わない。そう悟った2人は迎撃する為に、杖と筆を構えた。

 視線を交わし、桃髪の少女が地面を目で指すと、銀髪の少女が頷き返す。

 簡単なやり取りで意思を確認しあった2人は、一斉に動き出した。


「食らえっ!」


 桃髪の少女が杖から植物の蔓を伸ばし、獣の身体を絡めとった。しかし獣は物凄い力で引きちぎろうともがく。

 しかしすぐにもがくのを止め、桃髪の少女に向かって黄緑色の炎を吐いた。


「わちちち!? 危ないなぁもう!」


 間一髪躱すが、杖から伸びていた蔓が半分ほど燃えてちぎれてしまった。

 少し自由になった獣は、桃髪の少女にではなく、側面にいる毛先が緑になった銀髪の少女に向かって同じく炎を吐く。

 同時に、空中に緑色の渦巻きの絵を完成させていた少女は、筆を突き出し、絵から竜巻を放った。

 竜巻は炎をあっさりと散らし、獣へと迫る。


「グルオオオォォォォッ!!」


 雄叫びと共に、黄緑色の炎の毛が逆立ち、竜巻を真っ向から受け止めた。

 竜巻と獣の力はほぼ互角。力尽きた方が負けとなる。だが、獣の相手は1人だけではない。


「お水の追加をどうぞっ!」


 銀髪の少女の横から竜巻に向けて、桃髪の少女が水を放った。

 水を含んだ竜巻はその重さを増し、獣を圧倒し始める。そのまま虹の外へと押していき……


「ゴアァッ!!」


 獣が虹から落ちると思った瞬間、足元に向かって力いっぱい炎を吐いた。

 それは水の竜巻を巻き込み、爆風となって辺りの全てを吹き飛ばす。……そう、虹の上にいた2人も。


「ふえっ!?」

「う?」


 一瞬2人は状況を理解出来なかった。完全に優勢だったから、油断していたのだ。

 爆発を起こした獣は、すでに虹から落ちて地面へと向かっていった。雲の高さからの落下なので助かる筈もない。

 そして吹き飛ばされた2人は虹から離れ、同じく地面へと落ちていく。


「いやああああああああ!!」

「うあああああああああ!!」


 空に2人の少女の悲鳴が響き渡った。

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