↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からふるシーカーズ  作者: 白月らび
乙女の悪夢はトラブルの元

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
297/460

森林破壊

『アリエッタ!』


 慌ててアリエッタに駆け寄り、抱きしめるパフィ。ミューゼも駆け寄り、心配そうに手を伸ばす。

 周りは蔓に囲まれているが、上にいるムームーからは何が起こっているのかはよく見えている。糸を使ってビルの横にぶら下がったまま、戦慄していた。


「みんな逃げて!」


 周囲に向かって叫んだ。すぐにツインテールの少女が呟き、同じ集団のメンバーが動きを止めた。少女達は無線で連絡をしているようだ。

 敵対する集団が迷いを見せる。一旦下がって様子を見るか、このままかまわず追撃するか。そもそも何に対して『逃げて』なのかが分からない。

 しかし、リーダーは迷わなかった。


「逃がさねぇよ」


 焦っていたムームーの横に、リーダーの男が飛んでいた。エーテルガンの銃口を、ムームーに向けている。

 そのまま容赦なく、ムームーが振り向くと同時に引き金を引いた。


 バチュンッ

「っ!」


 撃たれたムームーは、勢いよく吹き飛ばされてしまった。




 撃ったばかりの銃口から散った、光の粒子が収まったエーテルガンを眺め、ネフテリアは感心した。


「へぇ~、これはなかなか……」

「はい、充填してあるエーテルを発射して、目標を撃つ道具『エーテルガン』です」


 ネフテリアとピアーニャは、クォンによってとある店へと案内されていた。そこは『アームズショップ』と言い、クォン達サイロバクラム人が装着している『武装(アーマメント)』と呼ばれるパーツを取り扱っている店である。


「一般人でも手に入る程度のものですから、そんなに危ない物ではないですよ。小競り合いや変質者撃退用にも愛用されてるんですよ」


 クォンの説明を聞いた2人は、嫌な単語を聞き逃したかった。


「わたくしは何も聞いていない……」

「なんか、メンドクサそうなヨカンがするなぁ……」

「ミューゼ達大丈夫かなぁ」

「ムームーをしんじろ。しんじるんだ」

「そうよね。まだ外出したばかり。慌てるような時間じゃないわ」


 既に手遅れなどとは、考えたくもない様子。嫌な単語と予感を振り払い、手に持ったエーテルガンに意識を戻した。


「……このエーテルガン、殺傷能力は無いけど痛いよね。威力はテキトーに撃った【魔連弾(ラピッドショット)】程度かな。お腹とか顔に当たったら痛そー」

「これくらいなら、ひるませるのにイイかもな」




 飛ばされたムームーの手が動き、敵リーダーに向かってパーツを飛ばした。


「……ったいなぁもう!」


 落下に逆らわず、糸を使って振り子のようにビル間を移動するムームー。同時に空中で驚いているリーダーの男に対し、糸で操るパーツを全方位から連続でぶつけて、撃墜した。

 エーテルガンの直撃は受けたが、殺傷力の無い銃撃では、殴られた程度の衝撃を受けるのみ。驚いて飛ばされはしたものの、自分の状態を早く理解し、反撃に出たのだ。


「ぐっはっ……」

「逃げてってのは、あんた達もだよっ! じゃないと──」


 そこまで言って、ムームーは言葉を切った。


「やばっ……」


 何かを感じて振り向いた先で、アリエッタが気を失っているのが見えた。大人が痛いと感じるレベルの衝撃を、全くの無防備の状態で食らったのだ。ひ弱な少女の身体ではひとたまりもない。外傷が無いのは、せめてもの救いかもしれない。

 しかしムームーが危険を感じたのは、アリエッタにではない。その横でゆらりと立ち上がり、ゆっくりと振り向くミューゼにである。

 ムームーは力の限り大声で周りに呼びかけた。


「全員逃げて! そっちの人達も、そっちの人達も! ここに残ったら命の保証が出来ないから!」(これが本当に最後のチャンス。これで逃げなかったらもう無理! 諦めるしかない!)


 最後の警告に対し、意味が分からず眉をひそめる者、構わず攻撃を続ける者、様子を見ながら後退する者、リーダーの指示を待つ者など、反応は様々。そもそも全員がムームーの事を知らないのだ。信じる方が難しい。それでも、ムームーが付けている見た事も無いパーツを見て、只者ではないと判断して言う事を聞く者もいる。

 その様子を見たムームーは、糸を使って弧を描くように飛び回り、大回りでミューゼの後方へと離脱した。


「さようなら、知らない人達。君達の事は忘れない……のは無理か。そもそも知らないし」


 ちょっと感動的な決め台詞は、知り合いですらないという現実によってかき消された。

 そしてその時、ミューゼが動いた。

 周囲に伸ばしていた蔓を、牽制で振り回しながら引っ込め、ツインテールの少女の横に立った。


「っ!?」


 ツインテールの少女が、ミューゼの顔を見て声にならない悲鳴を上げた。一瞬で汗が全身から噴き出し、凍り付くかと思うくらいの寒気を感じている。

 ミューゼの髪は魔力によって揺らぎ、表情が抜け落ち、目からは光が完全に消えている。

 後ろではパフィがその目に欲望を込め、荒くなりそうな鼻息をなんとか押し止めながら、唇をアリエッタに向けている。目覚めのチューをするつもりのようだ。

 特に遮る者などはいなかったので、すんなりとアリエッタの唇を奪ってしまった。そんな奇行と同時に、殺気しか出していないミューゼが、指をクンッと勢いよく上に向けた。


 ゴバァッ

『うぎょあああああああ!?』


 沢山の悲鳴と共に、地面から勢いよく衝撃が発生。残っていた人々を巻き込み、ビルよりも高く立ち上った。


「【禍林樺(バーチラフォーレ)】」


 衝撃が収まりかけると、ミューゼが魔法名を呟いた。その時既に、ビル街は林へと姿を変えていたのだった。


「こらーっ! 詠唱(くち)より先に魔法(て)を出すのはやめようね! ビックリするから!」

「えっ? 問題なのはそこでしたっけ? えっ? なにこれ? 新兵器?」


 遠回りして戻ってきたムームーが、無駄だと分かっていながらミューゼを嗜めた。

 ミューゼの近くにいて巻き込まれなかったツインテールの少女が、状況を全く理解出来ず、オロオロしている。

 後ろではパフィのキスのお陰か、ただ驚いただけか、アリエッタが少し身じろいだ。

 アリエッタの無事だけは確認出来たパフィは、鼻から一筋の赤い涙を流しながら喜んでいる。


「ちょっとそこの変質者! いたいけな少女に変な事してないで、ミューゼを止めて!」


 ムームーの苦情もなんのその。アリエッタの健康を確認する為、ボディースーツ(うすぎ)を纏ったアリエッタのお腹を撫でまわし、息を荒げている。


「アリエッタが悪いのよ。そんな恰好で私を誘惑するかバッ!?」

「こんな所で欲情するなぁっ!!」


 ムームーは、先ほどまで糸で操って攻撃に使っていたパーツを、手つきの怪しいパフィの後頭部に思いっきり投げつけていた。


「ん……」

「あら、気が付いたのよ?」

「スルーすんなっ!」


 アリエッタが再び身じろぎ、目をゆっくりと開き、身を起こした。そして、パフィが目を見開いた。

 その時、ミューゼの隣でも、ツインテールの少女が目を見開いていた。


「あ……いやいやいやいや! なにこれえええええ!?」


 ようやく正気に戻って現実が見えたツインテールの少女は、辺りの風景を見て改めて叫び直していた。

 突然の密林に巻き込まれた仲間は、四角の木に引っかかって目を回していたり、訳が分からず怯えていたり、慌てて逃げて様子をうかがっていたりと、状況は様々である。敵対していた相手の方も、同じ状態になっている。

 敵味方どころか、コロニーの大惨事を目の当たりにして、一瞬戻った正気が壊れようとしていた。それに待ったをかけたのは、仲間達である。


「リーダー! これは一体……」

「はっ。貴方達、無事だったのね! 実はこの方が何かをしたらしくて……」

「ん?」

『なんか怖いんですけど!?』


 ミューゼを見た者達は、例外なく震え上がった。ありえない場所に密林を作っておいて、未だに目に光が戻っていない。アリエッタの恨みは深いようだ。

 名前を呼ばれて振り向いたのをチャンスと見たのか、敵対する面々が一気に林から飛び出した。狙いはもちろん元凶のミューゼ。


「てめぇっ!」

「せめて一撃!」

「うおらああああ!!」


 強力な敵とみなして、可能なメンバーで総攻撃を仕掛けてきたのである。それに気づいたミューゼは向き直り、杖を構えた。しかし、魔法を発動する前に総攻撃は終わりを告げた。


『【白の護膜】』


 ミューゼの前に白い壁が伸びてきた。それに突っ込んだ相手は大きくはじき返され、エーテルガンの攻撃も跳ね返していく。攻撃した本人達が、痛い目を見ていた。ついでにその後ろにいた者も、敵味方問わず巻き込まれていたりする。

 ハッとしたミューゼが、目に光を戻して振り返った。

 視線の先には、白い壁の先端を握るアリエッタ。その髪は虹(・)色(・)に輝いている。


「ふっふっふ……」(私の可愛いアリエッタを、痛い目に合わせたのは……どなたかしら?)




「な、なぁ」

「うん? どうしたの?」


 妙にそわそわしているピアーニャが、ネフテリアとクォンに声をかけた。


「ダイジョウブだとおもうか? アリエッタになにかあったら……」

「あ~らピアーニャちゃん。やっぱりお姉ちゃんが心配?」


 アリエッタを心配するようなその姿に、顔が思いっきりニヤけるネフテリア。


「ちがうわっ! なにかにまきこまれたら、まわりがコワイことになるだろ!」

「そんな事にならないように、ミューゼとパフィがいるんでしょ。ムームーもほぼベテランだし、心配しすぎるのもよくないわ。シーカーなら責任もあるし、あまり構いすぎると失礼でしょ」

「それはそうなんだが……」


 嫌な予感がぬぐえず、不安ばかりが募っていく。先程の『小競り合い』という単語が引っかかっているのだ。


「やっぱりプロになったら、あんまり構われるのは屈辱よね。ムームーさまなら大丈夫ですよ」


 クォンもネフテリアと同意見。何よりもムームーの事を無条件で信頼している。


「そうだなぁ……まぁ、このコロニーをメチャクチャにするようなコトはしないか……」

「そうそう。みんな根は大人しいんだから、大丈夫だって」


 2人の説得の甲斐もあって、ピアーニャの心は少し落ち着いたのだった。

 まさかコロニーどころか、現在進行形でリージョンの危機かもしれない……などとは夢にも思わずに。

森林を使って破壊するから森林破壊ですよっと。


某名探偵の脱出ゲームをやってきました。

USJのゾンビのアレ以来だったけど、結構楽しめたかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※ 他の投稿作品 ※

【流され系魔女の無人島ライフ】

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。