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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
何も知らない転生少女
24/404

最年長=最年少

 体を硬らせるピアーニャ。

 しかしアリエッタは、ピアーニャを抱擁し、頭を優しく撫で始めた。


(よしよし、いいこいいこ。もうイタズラしちゃだめだぞ)

「なっ……もしかして、ゆるしてくれるのか?」


 アリエッタの心の言葉とピアーニャの生の言葉では会話は成り立つが、内容はかなりかけ離れている。

 そもそもアリエッタは、何の話をしているのかも分かっていないのだ。ただ謝って落ち込んでいる小さい子を、慰めようと行動しているだけである。


「うぅ……やっぱりアリエッタちゃんはとっても良い子です」

「そうですね……それだけに今回の事が悔やまれます」


 言葉が分からないという事に慣れていないリリとロンデルは、当然のように勘違いして感銘を受けている。

 数日で慣れてきているミューゼとパフィだけが、この状況に疑問を持っていた。


「ねぇパフィ……もしかしてとは思うけど」

「私もなんとなく妙な予感がしてるのよ……」

(今の僕にだって出来る事はあるからね! まずは小さい事からコツコツだ!)


 やる気が出たアリエッタは……そのままピアーニャを抱っこして、ミューゼ達の対面のソファにピョンと座った。そして膝の上のピアーニャを、撫で始めた。


(おっと、撫でるだけかと思ったのに、まぁアリエッタより小さいもんね)

(思った通りなのよ……)


 アリエッタの行動を理解した2人は困り笑顔に、他の3人は目が点になっていた。


「…………え? なんで?」

(この子の事は任せて! 2人はそっちの偉い人と話してて!)


 今抱いている人物が一番偉いなどとは、知る由も無く、知る事も出来ないアリエッタは、自信満々な顔でミューゼ達を見て、子守を始めた。

 抱っこされて、撫でられて、手をヨイヨイと上下に動かされている最年長者のピアーニャは、自分の置かれている状況が理解出来ない。

 振り解いて降りる事も出来るが、相手は子供、力で抑えるのは問題、言葉は通じない、何も危害は加えられていない、そして巻き込んだ罪悪感…と、いろんな考えが頭に浮かび、動く事を躊躇ってしまう。


(よしよし、ちゃんと大人しく出来て、いい子だねー)

「……ど、どうしたらいい?」


 困り果てたピアーニャは、とりあえずパフィに助けを求めた。2人一緒の時は、大抵年上のパフィに話が振られる。

 聴かれたパフィは少し考え……


「そのまま頑張ってください」


 良い笑顔で答えた。


「うぉい!? おまえたちセットクできんのか!?」

「無理ですよ、通じないのに」

「私達としては羨ましいのよ」


 ピアーニャは最後の希望とばかりに、ロンデルを見た。

 目が合ったロンデルは、一筋の汗を流した後、しれっとパフィ達の方に向き直る。


「えー、謝罪の理由としては以上です」

「まて! たすけてくれぇ!」

「逃がして巻き込んでしまったのは事実なので、シーカー同士であろうとも謝るべきですから」

「まぁそういう事なら、謝罪は受け取っておくのよ」


 3人はピアーニャをアリエッタの生贄にする方針に決めた。

 なお、リリは暖かい目で小さい子2人を眺めている。


(あぁ、だめだめ可愛すぎる。抱っこされる総長とかヤバイでしょ。アリエッタちゃんのお陰で、もう子供にしか見えないよ)

(なんだか妹が出来たみたいだな~。どうやって名前教えてもらおうかな)


 リリに見守られながら、もう仲良くなる気満々のアリエッタ。ずっと頭を撫でている。


「うぅ……わち、オトナなんだぞ?」


 そんな説得力の無い言葉も、アリエッタには全く通じない。

 アリエッタに大人である事を伝えるには、言葉以外で伝えるしかないのだ。どう頑張っても不可能である。

 子供同士のじゃれ合い?をよそに、ロンデルは話を進めていった。


「お二人の治療費は、当然本部持ちです。戦闘によって壊れた物も、本部が弁償します」

「ありがたいのよ」

「大怪我だったからね。借金まみれになったらどうしようかと思った」

「こちらのミスで巻き込んだのに、そのまま放置なんてしませんよ。組員としての仕事もあるでしょう?」


 真面目な話をする3人を、アリエッタの膝の上から恨めしそうに眺めるピアーニャ。

 そんな幼女を宥めるべく、リリが動いた。


「はい、アリエッタちゃんと()()()()()()()()にジュースのおかわりよ」

「おいっ!?」

「はいっ」


 2人とも元気に返事をした。アリエッタは返事の仕方を覚えたばかりで嬉しいのだ。

 もちろんピアーニャは、そんなわけないが。


(キミもよく出来ましたねー。偉いなぁ)


 返事が出来た幼女を笑顔で撫でる新米おねえちゃん…という構図に、間近で見ているリリの心は癒され、穏やかに……ならなかった。


(ふおおおお!! 何この可愛い生き物達! 私もうここで転げ回りたい! もしやこれが母性? 私の中に眠る欲望!)


 興奮して、歪んだ解釈を始める美人受付嬢リリ。

 そんなまったく噛み合わない3人の横では、順調に話が進んでいた。


「では、アリエッタさんへの謝罪の気持ちと、あの生物を止めてくれた報酬として、これくらいで」

「わ、こんなに?」

「私達がやったんじゃないのよ?」

「ええ、ですからあの子の生活費として、管理してあげてください。気になる事も多いですし、我々も協力しますよ」


 ロンデルが言う気になる事とは、アリエッタの力の事である。

 本人に聞く事が出来ない以上、監視する者が必要と考えたピアーニャとロンデルは、パフィ達を保護観察役にする事と、それを可能にする程度は支援するべきと考えた。


「なるほどなのよ。たしかにアリエッタのあの力は気になるのよ」


 偉い人が協力してくれるという時点で、パフィはその理由まで察知していた。


「アリエッタさんには特に申し訳ない。この事は、ここにいる我々5人しか知りませんので、何かありましたら受付のリリに申し付けてください」

「今後もよろしくお願いしますっ」


 話を聞いていたリリは、テンション高く応えた。ヨダレを垂らしながら。


「よろしくなのよ。リリなら安心なのよ」

「ある意味不安だけどねー」


 もう既に2人の中では、リリは「頼りになる残念な美人受付嬢」という地位に落ち着いている。

 アリエッタが関わるとおかしくなっているが、仕事面では非の打ち所が無く、実は男性シーカーからの人気も高いのだ。

 それで何故彼氏が出来ないのか……それには彼女自身の多忙さと、シーカー達との接点はカウンター越しという事。なによりも『高嶺の花』扱いされていて、声をかけてくる男性が少ないという悲しい環境が、リージョンシーカーという組織に存在していた。


「さて、用件は終わりましたが、お二人はこれから何かご予定はございますか?」

「いえ、特にないですよ」

「でしたら6人で食事に参りましょう」


 特に反対する理由も無かった為、パフィは快く頷いた。

 一緒にロンデルが贔屓にしているニーニルのレストランへ行くのだが……


「な、なぁ。どうやったら、はなれてくれるのだ?」

「アリエッタが嬉しそうなので、諦めてください」


 ピアーニャはアリエッタに手を繋がれて、困った顔で大人達を見上げ、そしてあしらわれた。

 もうどこからどう見ても、小さな姉妹にしか見えない。


(今からどこに行くか知らないけど、この子は僕が守るよ!)

「ふふふ、あ、そーだ」


 アリエッタのやる気を感じ、ミューゼはある事を思い出した。

 そしてピアーニャを指差して、


「ピアーニャ」

「ぴあー…や?」

「ぴ・あー・にゃ」

「ぴ…あーにやー」(むむ…ちょっと難しいな)

「惜しい、ピアー・ニャ!」

「ぴあー…にゃ」

「よしよし」


 ミューゼが撫でると、次は自信を持って、


「ぴあーにゃ!」

「よくできましたー♪」


 ピアーニャの名前を教えてもらったアリエッタは大喜び。

 少しの間、何度も名前を呼びながら、ピアーニャの頭を撫で回した。


「うう……なんでわちがこんなアツカイを……」


 その問いには、敢えて全員答えなかった。そのかわり、


「それでは参りましょうか。()()()()()()()()はアリエッタさんを離さないように、ついてきてください」

「ロンデルおまえっ!」

「2人が迷子にならないように、あたしがアリエッタの片手を繋ぐね」

「先を越された! じゃあ私は()()()()()()()()と繋ぎます」

「おまえら、わちをコドモあつかいするなっ」


 この状況で、子供扱いしないのは無理である。

 結局4人並ぶと邪魔なので、大人達は小さな子2人を見守りながら、ゆっくりと歩いてレストランへと向かう。

 当然ニーニル支部ではピアーニャが総長だという事は全員知っていた為、驚いた後に笑いを堪える人が多数発生。ピアーニャが睨みつけて仕事へと逃げていくという事が何度かあった。

 しかし後日、そんな事は些細な事とばかりに、とんでもなく可愛い幼い姉妹がリージョンシーカーの施設から手を繋いで出てきたと、町のあちこちで話題になってしまうのだった。

見た目7歳くらいの姉(前世32歳男性)と、見た目4歳くらいの妹(現百歳超え)

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【流され系魔女の無人島ライフ】

― 新着の感想 ―
[一言] いくら見た目幼女といっても随分舌足らずな発音だと思っていましたが、外見年齢4歳ならば確かにここまで舌足らずになってしまうのも納得です。おいたわしや、ピアーニャ閣下……。
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