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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
世界の夢幻と色彩の少女達
201/412

星の世界へ

 ── エテナ=ネプト ──


 (そら)に浮かぶ数多の星々…見上げてごらん、きっとあなたも見上げた先から見上げられているよ。

 そこは上も下も無い無限の空間。浮かぶ星々は小さな大地。

 大地の形は千差万別。ちょっとそこの星の引力、一体何がどーなってるの?

 さぁ出かけよう、あの星へ。ちょっと飛べばすぐだから───




「きゃあああああ!! どこがちょっとなのよおおおおおお!!」

「にゃあああああ!!」(なにこれ楽しいいいいいい!)


 何も無い空中に響くパフィとアリエッタの声。同じ絶叫でも、アリエッタの方は随分と楽しそうである。


「ちょっと待つのよおお怖い怖い怖い怖いぶつかるのよおおお!!」

「こわいこわいこわいこわいー♪」


 物凄い勢いで飛んでいくアリエッタ達の先には、小さな薄緑色の球体がある。パフィからしてみれば、大きな緑色の物体が急接近してぶつかりそうなのだ。


「うひいいいい!!」

「むぎゅ!?」(あの、ぱひーさん!? そんなにその…胸に押し込まないでくださいますか!? よくないです! なんかよくないです!)


 恐怖のあまり、アリエッタをがっつり抱きしめている。事前に大丈夫だとは説明されていても、やはり怖いものは怖いのである。

 やがて球体に接近し、その全貌がよく見えるようになった。薄緑色なのは草が生えているからで、その大きさはエインデル城がすっぽり収まる程度。

 向かう先には人影と、大きめのリングがある。アリエッタ達はその場所へと向かっているようだ。


「ああああああそこなのよっ!? どどどどうすればいいのよ!? 何もしないのよ!?」


 パフィは混乱中の頭で、必死にどうするのか思い出そうとするが、何も分からない。

 そうこうしているうちに、リングへとたどり着いた。


「ひあああぁぁぁ……あ?」

「ぅおお~!」


 急にふわりとした感覚があったと思ったら、2人の体は緑色の地面の近くにある、柔らかいマットのような物にゆっくりと、足から降り立った。が、怖かったパフィはそのままへたり込んだ。


「い、生きてるのよ……」

(なんだろう、風も重力も感じなかったから、VRで見るジェットコースターみたいな? また乗りたいなー)


 アリエッタは前世で絶叫マシンが好きだったようで、今の移動が気に入っていた。キラキラした目で先程通ってきた上の空間を見つめている。すると、


「わあああああああ……おお?」


 ミューゼが降りてきた。パフィよりはずっと落ち着いた様子で、少しだけへたり込んだパフィからずれた位置に、足からしっかりと着地した。


「みゅーぜー!」

「アリエッタ大丈夫だった?」

「だいじょうぶ!」

「おぉ、すっごい元気ね。楽しかったのかな。ねぇパフィ……あ」


 すっかりハイテンションなアリエッタを撫で、ようやく動けないパフィに気が付いた。


「なんか離れてても声が聞こえたから、アリエッタかと思ってたんだけど……パフィだったの?」

「怖かったのよ……」

「総長の雲の上は平気だったのに」

「さっきの速さは別格なのよ。しかも何にも乗ってないのよ」

「なるほど?」


 そんな話をしている間に、近くにはミューゼと同じ様に少し離れた位置に、ネフテリア、ピアーニャ、ロンデルを始め、巨大なニンジンとシーカー達が着地してきた。


「あれ? パフィ? 怖かったの?」

「なのよ」

「あはは、すぐ慣れるってー」

「のよー……」


 しばらくして立ち直ったパフィは、アリエッタに慰められながら、シーカー達から少し離れた場所に集まった。

 アリエッタをお菓子で落ち着かせながら、多数のシーカー達がロンデルからの指令を聞いているのを眺めている。巨大なニンジンと共に。


「……あたし達ってシーカーよね?」

「すっかり特別枠よねー」


 子守りしながら人の仕事を眺めているとしか思えない自分達の現状に疑問を感じつつ、こちらも準備を始めていく。


「それじゃあマンドレイクちゃん、よろしくね」


 ミューゼが巨大なニンジンに声をかけると、それは動きだした。リリのペット?で、リージョンシーカーのマスコット予定になっている「マンドレイクちゃん」である。

 どう見ても歩く巨大な野菜だが、今回の調査に…というより、アリエッタに同行する事になったのだった。その理由はというと、


(……アレか! アレをやるのか!)

「あ、アリエッタ、怖かったら言うのよ?」


 アリエッタがワクワクしながらマンドレイクちゃんを見ている。

 そのマンドレイクちゃんはというと、体の横から触手の様に2本の腕?を伸ばし、片方を頭に突き刺した!


「おぉっ!」


 そのまま引っ張り……上蓋を開けるようにパカリと開いた。


 ぱちぱちぱち

(すごい! 面白い!)

「アリエッタの好みって……」


 ミューゼとパフィも呆れる中、マンドレイクちゃんは開いた頭の中に伸ばした手を入れ、大きな箱を取り出した。


「いやいや、やっぱり大きさがおかしいのよ! どうやって入ってるのよ!」


 箱はどう見てもマンドレイクちゃんの半分以上の大きさで、中に入れられるような幅ではないのだが。

 当たり前のようにそんなものを収納するマンドレイクちゃんの謎は、アリエッタにとって面白いものでしかなかったようだ。


(流石異世界! 不思議だねー!)


 蔦の様に細長い腕でどうやって持ち上げているのかもまた謎だが、ともあれミューゼの前にその箱は置かれた。

 ピアーニャを苦しめた、通信機の絵が描かれた箱…を大きくした物である。

 ミューゼ達が本部から帰って数日間、時々ピアーニャも嫌々訪問しては、なんとか大きな通信機を作ってもらう事に成功したのである。

 ミューゼ達が喜んだ事で、役に立てたとアリエッタは大喜びだったが、その後お菓子やナデナデでひたすら甘やかすというご褒美が大量に与えられて困惑したのは、まぁいつもの流れである。

 そして今、初めてやってきたリージョンという、これまたアリエッタが喜ぶ新しい景色の元へとやってきた。ネフテリアの命令によって、イーゼルやキャンバスも運ばれている。

 今回はどうするのかを事前に聞かされているミューゼ達は、ロンデルの説明を聞き流しながら、通信機やお絵かき道具の配備を進めていった。


「ねぇ、結局これってなんて名前なんだろうね」

「聞けばいいんじゃないのよ?」

「あ、そっか」


 新しい道具の名前は、制作者や企画者によってつけられる。この場合はもちろんアリエッタ。


「別に保護者がつけちゃってもいいよ? まだアリエッタちゃんそういうの分からないでしょ」


 流石に、言葉が分からない人物が発明をするといったことが無かったので、そんな規則でもない事に拘る必要は無いと、ネフテリアが助言。

 しかしミューゼはとりあえず本人の意見を尊重してみることにした。


「アリエッタ、こっちおいでー」

「う?」

「いや、どうやって聞くの……」


 困った顔のネフテリアをよそに、アリエッタはトテトテとミューゼの元にやってきた。ピアーニャの手を繋いだまま。


「何やってるんですか総長。仕事は?」

「コイツが! はなしてくれんのだ! どうにかしろっ!」


 大人達の仕事の邪魔をしてはいけないと、アリエッタが拘束していたのだった。大事な事はロンデルがやっているので問題は無いが、シーカー達からチラチラ見られ、クスクス笑われ、総長としての面目は丸つぶれである。

 状況を見て問題無いと判断したミューゼは、そんな総長を放っておいて、アリエッタを近くに寄せた。


「をい」

「ねぇアリエッタ。これなーに?」


 通信機の箱を指差して、その言葉を発した。すると、アリエッタが箱をジッと見た後、ミューゼの方を向き、口を開いた。


「コールフォン」

「こーるふぉん……『コールフォン』ね。ありがと、アリエッタ。よしよし~」

「にひひ♪」

「というわけで、これの名前はコールフォンだそうです」

「いやちょっと待って!? 今、会話しなかった!? したよね!?」


 今のやり取りは、完全に言葉のキャッチボールである。ついにアリエッタが会話をしたと、ネフテリアは驚き、ピアーニャも口をパクパクさせて震えている。

 一方アリエッタは、笑顔のまま内心安堵していた。


(ふぅよかった。変な名前とか思われなかったみたい。コールとフォンだもんなー)


 何故同じ意味を持つ前世の言葉を2つ並べたのか。そこに深い意味は全く無く、ただの思いつきと名前の響きがちょっと可愛いなと思っただけである。

 こちらの次元では、ただの固有名詞として扱われる事だろう。

 それよりも大人達にとっては、アリエッタが会話した事の方が大事だ。


「そうか……ついにカイワへのだいいっぽをふみだしたか。ながかった……ここまでホントーにながかった!」

「アリエッタちゃん賢いから、ここからが早そうよねー」


 既に子供の成長を見守る感じになっているネフテリア。避けられぬ子供扱いという苦行から、解放へ確実に進んだ事で、感涙にむせぶピアーニャ。

 大方予想通りなので、ミューゼとパフィは苦笑しながらテキパキと準備を進めていった。


「そっかークリムがね。流石仕事の出来る女は違うわ」

「それ関係あるのよ?」


 アリエッタに『これなーに』という言葉を覚えさせたのはクリム。

 ミューゼ達が本部に出向いている間に、根気よくその言葉と仕草を伝え、アリエッタから同じように『これなーに』と物に指を差しながら聞かれる事に成功したのだった。その日の夜、ミューゼの家はお祝いに大きなケーキまで用意される程の大騒ぎとなった。

『これなーに』を使った事で、アリエッタは良い事を思いついたとばかりにピアーニャに声をかけた。


「ぴあーにゃ、これなーに?」

「え、あ、おう……『くさ』」

「おおーよしよし~♪」

「えっ…ちょっ…」


 そのまま流れるように褒め、そしてキラキラした目でピアーニャを見つめた。その意味をピアーニャは察してしまった。


(や、やるのか? やらねばならんのか……)「こ、これなーに?」

「! いし!」(ぴあーにゃと話が出来た! うおおおおー!)

「やめ…やめえええええ!!」


 第一歩を踏み出したと思われた子供扱いからの解放。その一歩目に待っていたのは、言葉を覚えた事による、これまで以上に濃厚な子供同士としてのコミュニケーションの増加だった。

 ピアーニャの望む未来に通じる道のりは、果ては見えても尋常じゃない程険しそうである。

違うんです!

ゼノブレイド3が次話を書く邪魔をするんです!

悪いのはあんな面白いゲームを作るモノリ…(あまりに酷い責任転嫁のため割愛)

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