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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
世界の夢幻と色彩の少女達
192/405

魔王の新たな戦いへ

 殺気に満ちた空気から一変、その場はある意味緊迫が支配した。魔王も完全に硬直している。

 男が1人いる状態でスカートをたくし上げて見るわけにはいかず、パフィはスカートの中に手を差し込んだ。


「間違いないのよ。すべすべぷにぷにの生なのよ」

「言い方」


 いらない感想まで述べるパフィ。呆れるネフテリア達だが、ショックから立ち直り、アリエッタが無事である事に安堵した。


「でもどうして……」

「いつからなんでしょう?」


 空中で目を泳がせている魔王を無視し、ミューゼとパフィとオスルェンシスは一緒に悩み始めた。


「まさか最初から?」

「どうでしょう。ずっとミューゼさんに照れてましたし、途中で脱いでしまったというのは……」

「どういうシチュエーションなのよ。そういえばさっき1人で離れたような? トイレ行ってたのよ?」

『う~ん……』


 現状放置で真剣に考えている。


「いやあの、無事だったんだし、今はそれで良いじゃない? あっちの魔王……」

「アリエッタのパンツの方が大事なのよ! 風邪ひいたらどうするのよ!」

「そーよそーよ!」

「ネフテリア様、子供の健康はしっかりと管理してあげないと……」

「えっ、何? わたくしがおかしいの? 殺気とか向けられてたんだよ?」


 現状が気になり、ネフテリアは魔王の方を見た。

 魔王はそわそわしながら、チラリとアリエッタの方を見る…という挙動を繰り返している。


「………………」


 何かを察したネフテリアの顔から、恐怖どころか表情まで抜け落ちてしまった。そのままアリエッタを魔王の視線から隠す為に、魔王のチラ見の視線上にしれっと立ちはだかる。

 すると、魔王の眉が片方だけピクリと跳ね上がり、非常にゆっくりとだが、空中の魔王の体がスススッと下降しながら横に移動した。そして時々チラ見する。


(うわぁ……)


 その動きの意味を察した瞬間、ネフテリアの中で魔王の評価が『幼女好きムッツリ童貞』へと変化した。もう腐ったゴミを見る目でしか、魔王を見る事が出来なくなったのかもしれない。

 ある意味魔王に失望したところで、ミューゼがアリエッタの現状についての推理(もうそう)を述べ始める。


「アリエッタはとっても良い子で、自分からあたし達に迷惑かけるような事はしないわ」

「もちろんなのよ」

「ですね」

「という事は、やむにやまれぬ事情で、パンツを履けなくなっちゃったんじゃないかと思うの」

『なるほど』


 ミューゼの希望的観測は、アリエッタにやや盲目的なパフィはもちろん、アリエッタが良い事をする所しか見ていないオスルェンシスをも納得させる。

 間違った事をする筈が無いと思われるようになったのは、少女の日頃の行いの賜物である。


「さっきコッソリ離れた時、パンツを失う何かがあったという事」

「やはりトイレでは?」

「あたしも最初はそう考えたわ。でも、失うような行動じゃないと思う」

「確かに……」


 真剣に話しているが、話題の中心はパンツ。

 横ではネフテリアが、魔王の視線を牽制しながら呆れている。


(何でもいいから、替えとかないの!?)

「という事は…よ。奪われたと考えるのが自然じゃない?」

「ほう……」

「確かになのよ」

(いや無理があるでしょ! シスまでどうしちゃったの!?)


 傍から聞くと無茶苦茶な理論展開が始まってしまい、ネフテリアは話に加わりたくないと思いつつも、内心ツッコミをいれていく。

 それでもどんなバカな結論にたどり着くのか少し興味が湧いてしまい、大人しく魔王の前に立ちはだかり続ける。


「それで、そのパンツを奪った犯人は?」

「それは……」

「おっと! 私には分かったのよ! 任せるのよ!」


 ここでパフィがミューゼの後を引き継ぐ。

 仲の良いミューゼは、全く嫌な顔をせずに、ワクワクしながらパフィの答えを待つ。


「さっき私達は、集まって魔王の話を聞いていたのよ。つまり、私達には犯行は不可能なのよ」

「ほう…もしや……」


 オスルェンシスの相槌で、さらに良い気になったパフィが片腕を上げ、人差し指を突き出し、ある方向をビシッと指し示した。


「犯人は魔王なのよ!」

「なるほ……いないですよ?」


 指差した方向には魔王はいなかった。ゆっくりとずれていた事を、パフィは全く察知していなかった。

 オスルェンシスに指摘され、一気に顔が熱くなり、動きを止めてしまった。

 その横で、ミューゼの目が点になっている。


(えっ……あたしはテリア様が犯人だとばかり……)


 2人そろって迷探偵だった。実に仲が良い。


「パフィ、パフィ。魔王はこっち」

「えっあっ、犯人なのよ!」


 ネフテリアに教えられるも、完全に無理して進めている。

 ここでなんとなく頑張って覗…傍観していた魔王が、指を差されて反応した。


「ふむ? 俺が犯人とはどういう事だ?」


 アリエッタのノーパン発覚で毒気が抜かれていたのか、魔王のテンションが低い。


「貴方がトイレ中のアリエッタのパンツを盗ったのよ!」

「は?」


 魔王が完全に停止した。動きだけでなく、思考も。

 ついでにネフテリアも停止していた。

 その隙に、ミューゼとオスルェンシスが立ち上がる。


「確かに、さっきからアリエッタちゃんに向けて視線を飛ばしていましたね」

「なんですって!? それじゃあ確実じゃないの!」


 何が確実なのか分からないが、とりあえず納得したようだ。半分程嫌悪感による理不尽である。

 あまりに酷い冤罪に、我に返った魔王が反論し始めた。


「ちょっと待て! 何故俺がそのような事を!」

「そ、そうよ。流石に証拠が無いのにそんな決めつけは……」


 ネフテリアが弁護するが、魔王を逆上させたらどうなるか分からないという恐怖から、刺激を与えないように可能な限り穏便に済ますつもりである。

 しかしアリエッタ関係で冷静さを欠いているパフィ達は、そんな気遣いが出来ない。


「国を滅ぼすような男が、下着ドロボーという大罪を犯してないわけないでしょう!」

「大罪がセコいな!?」

「アリエッタだけを吹き飛ばしたのも、きっと事故に見せかけて中を覗くつもりだったのよ!」

「するかああああ!!」

『えっと……』


 ミューゼとパフィにとって、アリエッタの下着は国よりも重いようだ。

 無駄に真剣な2人を見て、ネフテリアとオスルェンシスがちょっと引き始めている。


「貴様等……この俺を下着ドロボーに仕立て上げようとするとは良い度胸だ」


 ちょっとテンションが下がっていた魔王の心が、再燃し始めていた。ネフテリアは顔面蒼白で成り行きを見守るしか出来ていない。


「そっちこそ、アリエッタの下着を盗むとは良い度胸なのよ。絶対に許さないのよ」

「しておらんと言っているだろうがっ!」


 既にパフィの中では犯人が確定している。それも完全なる濡れ衣である。

 横にいるミューゼに至っては、自分の推理が外れていたかもしれない…というのが恥ずかしく、なんとなく合わせる事で誤魔化している。

 そんな調子で、感情丸出しのやり取りが何度か続き……、


「ゆるさん……許さんぞ貴様等ああああ!!」


 とうとう魔王がキレてしまった。魔力がほとばしり、魔王の体が燃えているように見える。

 パフィはアリエッタをオスルェンシスに預けた。広範囲でサポートしつつ、いざとなったら影の中に素早く逃げる事が出来る能力は、こういう時に都合が良いのだ。


「許さんのはこっちも同じなのよ。ミューゼ、魔王退治なのよ」

「わ、わかった! ほらテリア様も!」

「ええええっ!? もうやだ帰りたい!」


 とうとう怖がるネフテリアも巻き込み、正面から怒れる魔王と対峙した。

 遥か昔に散った魔王本人の夢による、しょうもない冤罪を広めない為の戦いが、今始まる。

 そしてその時……アリエッタがゆっくりと目を開いた。




「もう抗う事も許さぬ。いらぬ罪ごと塵となって消えろ!」


 すっかり逆上した魔王が大きな火の玉を作り、パフィに向かって撃ち出した。それほど早くは無いが、その見た目は触れたものを焼き尽くすであろう事が見て取れる。


「そうはいかない! 【木の壁(ウォールツリー)】!」


 ミューゼが木を複数生やした。この地の木を利用した為、見た目はただの黒い壁となっている。

 魔王の火の玉が壁に衝突、爆発した。


「む……」


 魔王は目を見張った。怒りに任せて放った魔法は、1200年前では国を滅ぼす為に使った攻撃魔法の1つである。そして本人にとっては「これから国を滅ぼす為に使う」筈だった魔法。

 それほどの魔法が、まだ若いミューゼによって防がれた事に驚いていた。


「これは……何ッ!」


 黒い木の壁に興味を持った魔王だったが、木の壁の左右からパフィとネフテリアが飛び出した。


「【魔連弾(ラピッドショット)】!」(なんでこうなるのぉぉ!)

「フン……当たらぬわ」


 ネフテリアの弾速の速い魔法による連射をあっさりと躱し、魔力の衝撃波でネフテリアを牽制。逆の方から飛びかかってくるパフィを迎え撃つ。

 衝撃波を撃たれたネフテリアは慌てて身を守り、そして首を傾げた。


(えっ、今の…どういう事?)


 接近したパフィは、魔王へ向けてフォークを突き出した。

 魔王は余裕でフォークも躱すが、もちろんそんな直線的な攻撃が当たるとはパフィも思っていない。避けられた瞬間にナイフを振り下ろした。


「このぉっ!」

「ムンッ!」


 ナイフによる一撃は、魔王の腕で止められていた。ただローブを着ているだけの素手である。

 一瞬パフィは驚くも、ナイフと腕の間に淡い光を見て、それが魔法による防御だと気が付いた。先日のフレアとの鍔迫り合いの記憶から、押されたら負けだと思い、力の入れ方を変えて斜め前へと切り抜けた。


「ほう……やるな」

「最近強い相手が多くて困るのよ」


 感嘆する魔王に、軽口を叩きながら距離をとった。

 しかし魔王もただ見逃すわけがない。空いているもう片方の手には既に魔力を込めており、パフィへと追撃する…かと思われたその時だった。


 ボッ

「ぐあっ!? なんだ!?」


 ナイフを防いでいた腕が、突然発火した。

このまま200話まで到達するのが先か、PVが50万行くのが先か……(なんとなくPV数で喜べばいいらしいという事を知って、試しに乗っかろうとしているアホな作者の図)


今回は辻褄が合うように見えにくくて、書いてて混乱する!

ひと狩りいかなきゃ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに初めての殺伐とした知性体が! いままでは本能のままに動くけものか、煩悩のままに動くけだものばかりでしたのに。
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