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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
世界の夢幻と色彩の少女達
178/405

いきなり神の立場へ

「うぅ……」


 夜が明けて、元の水晶煌めく空洞に戻ったその場所で、ピアーニャは涙目になりながら遠くを見つめていた。


「ぴあーにゃ、おいでー」


 覚えた言葉を駆使して、アリエッタが手を広げながらピアーニャの向いている方向にあわせてジリジリと移動し、一定以上近づかずに待ち構える。


「いや、その……」

「ぴあーにゃ?」(どうしたのかな? お姉ちゃんが抱っこしてあげるよ?)


 見た目は3歳程度のちびっこだが、100年以上生きた大人であるピアーニャ。子供に見られるのが嫌とかいう以前に、抱っこされる時点で抵抗があるのは当然なのだ。

 普通だったら怒って大人である事を主張し、全力で断るのだが、相手は言葉の通じない善意たっぷりの子供という認識。しかも逃げたら泣いてしまうくらい泣き虫なのも知っている。

 もし泣かしてしまえば、保護者が物凄い形相で飛んでくる。そんな状態の2人には、王族やピアーニャですら逆らえない程の気迫があるのだ。それだけは避けねばならない。


(ど、どうする? このまましたがえば、オトナとしておわる。しかしにげたら、イノチがおわる……つんでるじゃないか!)

(ふふふ、恥ずかしがってるなぁ。そういう所も可愛い。留守番を任されたんだし、ぴあーにゃの事はしっかり面倒みないとな)


 視線だけを横に向けると、離れた場所でパフィが何かを探しているのが見える。流石にアリエッタをピアーニャに任せるだけだと不安がると思い、目の届く範囲で捜索は続けているのだ。

 近くにパフィがいる安心感から、アリエッタは全力でピアーニャの面倒を見ようとしている。パフィ達が何をしているのかは分かっていないが、妹分の世話をする事で役に立ってみせると意気込んでいる。


「ぴあーにゃ♡」(よーし、優しく優しく。笑顔になって、あま~いお姉さんという感じで……)

「あ…ぅ……」(なんで、かーさまとおなじようなカオになってるんだ。オトコにむけたら、おなじくらいのトシゴロじゃなくても、いっしゅんでおとせるぞ!? テンネンのマショウか! なんてすえおそろしい……)

(おっ、やっぱり笑顔って大事なんだな。もうちょっとで落とせそう。これは使いこなさないと。よーし、慌てず忍耐強くだ)


 アリエッタの笑顔を見て、ピアーニャは戦慄していた。それを照れと感じたアリエッタは、ピアーニャが根負けするまで付き合おうと考え、さらに今度から笑顔の練習をする事を心に決めた。

 こうしてちびっこ2人の真剣でほのぼのとした戦いは、この後も続くのだった。そしてその光景は、離れた所にいるパフィに観察されていた。




 こちらはミューゼとラッチの捜索ペア。

 2人とも真面目に辺りを見回し、大きな鳥を探している。


「うーん、探すのはいいけど、魔法でどうやって探せってのよー……」


 ミューゼが憤りを感じているのは、仕事内容ではなく、ピアーニャに全部丸投げされた事に対してである。

 本来ミューゼはシーカー歴1年も経っていない新人。対してピアーニャは長年シーカーをまとめてきた超ベテランの総長。任され方が雑過ぎて、本気でどうしたらいいのか分からないのだ。


「水浸しにして……いや、鳥だし飛んでるだろうし。火責めはあたし達も危ないし……光は眩しいだけ、風とかどうしようもないよねぇ。探し物する魔法なんてあったっけ……」


 言われた通り方法を考えるも、いい方法が浮かばない。経験が足りないせいもあって、1人で最適な運用など出来る筈もない。

 ピアーニャも魔法についての知識はかなりあるが、そもそもミューゼが使える魔法を把握していないのである。丸投げした理由はそこにもあるのだが、役立たず扱いされた事に対する意趣返しでもあった。

 ここでネフテリアがいれば、何かいい方法を提示していたかもしれないが、パルミラの手紙にはボコボコにされて城に捕まっていると書かれていた為、期待は一切出来ない。


「くそー、総長め。今度みんなの前でアリエッタけしかけてやる……」


 上司に対する最大級の嫌がらせを計画しながら、何か魔法のうまい使い方が無いか実験しながら辺りを捜索し続けていった。

 しかし、ミューゼが困っているのはそれだけではない。


「神よ」

「………………」

「創造神フェリスクベルよ」

「あたし神様じゃないよ! そんな呼び方しないでっ!」


 ラッチの神呼びに、明らかな拒絶反応を示すミューゼ。朝起きる時に仰々しく起こされ、朝食を渡される時に儀式でもするかのように目の前にお供えされ、出発してからも必ず数歩分後ろに下がり、方向転換してもそのポジションを変えないという徹底ぶりである。

 そんな状態が真面目な顔でずっと続けば、ミューゼの精神は耐えられないわけで……


「ミューゼって呼んでよ。もっと普通でいいから」

「いいえ、神の機嫌を損ねる訳にはいかないリムですよ。是非とも我を手足のように使役していただきたいリム」


 ラッチにとってミューゼは超高級品を自由に生み出せる、いわば創造神と同等の存在となっている。だからこそ、敬い、崇め、畏れ、そして仕えるべきと考えた。

 あわよくば素敵な木を生み出して、何か作って欲しいというセコい想いも、もちろんある。


「そういう風に話すのが、一番嫌なんだけど……いう通りにしなかったら絶対に木を出してやらないんだから」

「ひいぃぃ! ごめんなさいごめんなさい嘘ですあーしが悪かったです許してくださいフェリスクベル様ぁ~!」

「そのフェリスクベル様ってのをやめてよー!!」

「だって神様っぽい名前でカッコいいなーって思ったから……」

「普通のファミリーネームですからっ!」


 実は家で自己紹介をしていた時、ミューゼとパフィはフルネームで名乗っていた。それを覚えていたラッチは魔法の事を教えてもらった後、こっちの方がカッコいいという理由のもと、2人の事をファミリーネームで呼ぶようにしていた。

 家同士の付き合いでは別に珍しい行為ではないが、理由が理由なせいで、ただ無駄に恥ずかしい。


「ど、どうしてもダメ…ですか?」

「うん、絶対ダメ」


 上目遣いで素の口調のラッチにお願いされるも、涼しい顔で全力却下。そもそも大人として認定されたのはラッチの方が早い事を知っているので、ミューゼから甘やかす対象としては見られていない。


(パルミラってばなんて子を紹介してくれるのよ。やる気は確かにあるけどさぁ……)

「ぐぬぅ、我はどうしたら……」


 顔を片手で覆って、何故かポーズを決めてスタイリッシュに悩み始めるラッチ。ミューゼはそんなラッチを扱いきれる自信が無い。


「はぁ……とりあえず探すよー」

「心得た!」

(普通にしてればいい子だと思うんだけどなぁ……そもそもその口調は何?)


 しばらく探し回るも、結局何の成果も無く、昼食を食べにキャンプ地へと戻る事になるのだった。


「あぁもう疲れた……なんか甘いもの食べさせてもらおう……」

「疲れたんですか!? あーしに出来る事ないですか!?」

「いや、うん……あれ?」


 早くも疲労困憊で戻ってきたミューゼが見たのは、疲れ切った顔で座り込むピアーニャと、困った顔のアリエッタ。そして幸せそうにアリエッタに膝枕されてナデナデしてもらっているパフィの姿だった。


「……何やってんの?」

「あ、ああ。ミューゼオラ。おかえり。いやまぁなんてゆーか……」


 ピアーニャはそう言うと、困った顔でパフィの方を見た。すると、アリエッタがミューゼを見て慌て始めた。


「!! みゅーぜ!」(こっこれは違うんだよ! いきなりぱひーが甘えてきて、離れないんだよぉ!)

「あ、おかえりなのよー。もうたまらないのよー。メロメロなのよー」

「どゆこと?」


 アリエッタの浮気がバレた時のような心配をよそに、唖然としながらパフィに説明を求めた。すると、パフィはムクリと起き上がり、いきなりアリエッタを抱きしめて、真面目な顔で話し始める。


「無理なのよ。アリエッタのお姉さんぶった優しい笑顔を直視してしまったら、抗う事なんて出来ないのよ」

「えっと、ストレヴェリー様は何言ってるリムか?」


 要領を得ない説明をするパフィの代わりに、疲れた顔のピアーニャが説明し始めた。

 アリエッタの恐ろしい程に優しい笑顔の事。長い間抗っていたら、パフィがいきなり飛び込んできた事。そのままアリエッタのお腹に顔を埋め、甘え続けた事。


「アリエッタの可愛さであの母性はヤバいのよ。ミューゼも確実に堕ちるのよ」

「はぁ……なんとなく言いたい事は分かったわ」

「分かったの!?」


 状況はよく分かっていないが、アリエッタの母性にパフィが飛び込んだという情景を想像したミューゼには、パフィがそうなったのも、自分も危うい事も理解していた。既に堕ちる気満々である。

 驚愕するラッチをよそに、疲れたからと甘い物をパフィに要求した。もちろん真面目に探していなかったパフィは即了承。デザートのケーキは疲れ切ったミューゼとピアーニャをしっかりと癒していった。

 食事の間、ミューゼはピアーニャに使えそうな魔法について質問していた。


「こういう捜索に使える魔法って知らないんですけど、何か知ってます?」

「……すまん。テリアのベンキョウにふくまれるマホウだったから、ミューゼオラもにたようなマホウをしっているとおもっていた。そうかオウゾクとはちがうよなぁ」


 ミューゼの得意な魔法は物質的なものが多い。習得した環境のせいか、空間把握出来るような魔法はあまり知らないのだ。

 ネフテリアの勉強に同席した事もあるピアーニャが、知っている捜索系魔法の概要を教え、練習がてらやってみる事にした。


「結局闇雲に探すのは意味無さそうなのよ。ここはミューゼに期待するのよ」

「そうだな。ダメだったらファナリアにもどるだけだ。ヨークスフィルンのようなヒガイはないから、きにしなくていい」

「アリエッタも喜んで絵を描いていたから、旅行だと思えばいいのよ」

「うん、わかった」


 捜索はあと2日だけにして、ひとまずのんびりと過ごす事にした一行。無人の大空洞といえど、日中は人がチラホラ通る事もあるが、夜になれば暗すぎて人は出歩けない為、野宿でも灯りを消せば安心して休めるのだ。

 ミューゼとピアーニャは捜索魔法の練習に。パフィとラッチは一緒に捜索に。そしてアリエッタはミューゼの近くで絵を描き始める。

 そんな5人の行動を、大きな鳥が離れた場所から見守っていた。

むむぅ、メンバーいぢってただけで、あんまり話進まなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >もうちょっとで落とせそう。これは使いこなさないと。 籠絡する気満々の小女神。(汗)
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