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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
暖色と寒色のリゾートワールド
158/406

巨獣のウイークポイント

「王女サマが危ねぇって思って飛び出したのに、あんまり意味無かったな」

「流石直属の護衛です。余裕あり過ぎでしょ。ネフテリア王女様も」


 合計10名にも満たないシーカーと植物園係員。元々植物園にいた彼らは、少し前までバルナバの津波に巻き込まれて埋まっていた。それでも近くにいた者達を救助しながら這い出ていたのだが、『スラッタル』がいつ暴れても対処出来るように注意を払っていたのだ。

 そこへ聞き覚えのあるパルミラの大絶叫が響き、一斉に集まった。その時シーカー数名がネフテリアを見て驚いた。少しだけ離れて様子を見ようとした矢先、極太の蔓がネフテリアへと伸びた所で飛び出した……という訳である。

 オスルェンシスの影が解除され、その判断と能力を褒め称えていった。主に男性陣が。しかし、その視線は水着美少女へと向かっている。


「? な、なんですか?」


 恥ずかしそうに杖と手でその身を隠す。ほぼ肌色なので余計に煽情的になっているが。

 それを見た男性陣は……


「み・な・ぎ・っ・て、きたぜー!!」

「ありがてぇ!」

「ご褒美を先に頂いてしまっては、本気を出さざるを得ませんね」


 思わぬ目の保養に鼻息を荒くしながら、ある者は全力で『スラッタル』に向かって駆け出し、ある者は伸びてきた蔓の排除、ある者は倒す手段を探す為に物凄い勢いで回り込んでいく。


「男って……」

「ミューゼ、ヨクヤッタワネ」

「哀れみを籠めた目で褒めないでください!?」


 恥ずかしさで身を縮めたミューゼだったが、女性陣だけが残ったお陰でなんとか落ち着きを取り戻した。ネフテリア、オスルェンシス、ツーファン、ミューゼの他に、植物園係員であるアイゼレイル人の女性と、シーカーであるファナリア人の女性がいる。

 男性陣が暴れているお陰で、『スラッタル』は簡単には動けなくなった。コーアンの活躍もあって、足が一部壊されている。それを確認したネフテリアは、真剣な顔で状況を整理する事にした。


「さて、ピアーニャが『スラッタル』って呼んでるらしいから一旦そう呼称します。シスは警戒を」

「はっ」

「それじゃあ対策を考えたいところだけど……なんでミューゼは水着なの?」


 ネフテリアが一番気になっている事を聞くと、他5名の力が抜けた。


「それ今聞くんですか?」

「いやだってすっごい気になるし……ミューゼって露出趣味あったっけ?」

「ないよ!」


 このまま露出疑惑持たれてはたまらないと、ミューゼは急いで説明を始めた。

 バルナバの実が植物園を埋め尽くし、その後さらに急激に増えたバルナバの実によって、海へと飛ばされていた。

 ピアーニャが『雲塊(シルキークレイ)』を操作しようとしたが、妹分を護ろうとしたアリエッタ(エルツァーレマイア)によって抱きしめられ、視界や体が封じられてしまい、思うように雲を広げられずにいた。仕方なくパルミラがボール状に変形し、全員を包んだところで宿の近くの海に落下。その衝撃の為か恐怖の為か、アリエッタは途中で気絶。そのままだとパルミラごと沈んでしまう為、すぐに解除して陸へと戻ったのだった。

 そのままずぶ濡れになってしまった服を替えに宿へと移動したのだが、部屋はグチャグチャになっており、よりにもよって着替えが全て潰れたバルナバの実によってベチョベチョになってしまっていた。

 仕方ないので同じくベチョベチョになっていた水着を魔法で水洗いし、4人ともそれを着て、寝たままのアリエッタにも楽しく水着を着せた。その直後アリエッタが目を覚まし、真剣な顔でパフィに何かを伝えようとしていたので、パルミラと一緒に先行で戻ってきたという訳である。


「水着だから濡れたままでもってのは理解したわ。どうせ服屋さんも埋まってるし」

「ここまで来るのも恥ずかしかったですよ……」


 その説明を聞きながら、ツーファンは遠くに落ちているパルミラを見た。丁度近くで暴れていたワグナージュ人の男が、「水着美女ゲットだぜぇぇぇ!!」とか言いながらパルミラを抱え、あえて滑走せずに少しゆっくり走ってくる。もちろん周りの男達は、羨ましそうに見ていた。

 ちなみにケインは見て見ぬふりをされている。


「で、結局ピアーニャとパフィが遅れているのは?」

「アリエッタが何かし始めたんだけど……先に行けって言われたから知りません」

「アリエッタちゃんが?」


 理由を聞いて考え込むネフテリア。

 ネフテリア達にとって、アリエッタの力は未知のもので、何が起こるか分からない。本人は悪い子ではないのだが、その考えや行動が読めないという恐ろしさがあるのだ。加えて女神の娘の力という、人が抗えるかどうか怪しい代物である。不安要素は抜群だった。

 となると、ネフテリアの選ぶ手段は決まった。


「彼らと協力して『スラッタル』の調査! 今まで壊した所以外が怪しいと思う。なぜかわたくしが狙われるから、空から注意を引くわ。ミューゼは一旦パルミラを護っててくれる?」

『了解!』


 丁度水着姿のパルミラをわざとおんぶして、背中で幸せを感じていたワグナージュ人の男が到着した。少し前屈みで動きがぎこちなくなっているが、パルミラを下ろしてからそのまま冷えた視線から逃げるように『スラッタル』へと向かって行く。

 その後を追うように、ミューゼ以外が駆け出して行った。




「【空跳躍(スカイリープ)】」


 ネフテリアは予定通り、空を駆け上がり『スラッタル』の上へと向かう。途中でその目の前を通り、注意を引く事を忘れない。


「ミュッ!?」


 目標が目の前に現れれば、獣は当然反応する。更に上に逃げるネフテリアに対し、蔓を数本伸ばした。しかし足場の悪い地上よりも俊敏に動ける空中ならば、慌てずに避ける事が出来ている。


「そういえば上から観察してなかったわね。丁度良いわ。何か手がかりでも見つかれば良いけど」


 植物であろうと動物であろうと、それが生命である以上、不死身という事はあり得ない。そういう考え自体は持っているが、ただ単純に何の成果も無ければ、後でピアーニャの説教がうるさいと思い、真剣に『スラッタル』の動きを観察するのだった。

 下では男達が木の足を抉り続けている。ここから動かしてはいけない事は全員が理解している為、観察や頭脳労働が苦手だと自負する者は、交代制で『スラッタル』の足止めに専念していた。表面はバルナバの実によって固く護られているせいで、同じ場所を再生に負けない速さで砕いていく、

 その中にいるコーアンの肩がガシッと掴まれ、引き寄せられた。振り向くと、そこにはニコニコと黒い笑みを浮かべたツーファンの姿が。


「げっ……」

「ふふふ……」


 一方、剣や斧の他に、糸や影などの切断する事が出来る者達は、尾の方に群がり、蔓を斬り続けていた。

 根元は1人1撃で斬り落とす事が出来る太さではなく、攻撃しようとすると他の蔓が邪魔をする。


「3、2、1、今ッ!」


 ならばと、オスルェンシスの号令に合わせて、数人で一気に斬り落とす。長く伸びた蔓はドスンと落ち、そのまま動かなくなる。

 しかし、切断面はゆっくりと盛り上がり、再生していく。


「む……ならば全部斬り落とすまで!」

『おうっ!』


 調子を上げて連続で蔓を斬っていくオスルェンシス達。蔓の妨害には合っているが、上のネフテリアを狙う蔓も斬るなどして、順調に数を減らしていった。


「ん? これは……」


 やがてその奥に、他の蔓とは違う少し細い蔓を見つけた。くすんだ色をして、少しだけ向こう側が透けて見えている。

 オスルェンシスがそれに触れた瞬間、『スラッタル』が大きく震えた。


「! 今の!」


 空中にいるネフテリアには、その全貌がハッキリと見えていた。

 すぐにオスルェンシスに伝えようと下に降り……ようとした時、『スラッタル』が急に寝そべり、家や木を倒壊させながら転がった。


『うわあああああっ!』


 足の中にいた者達や、尾に乗っていた者達は、思いっきり振り落とされてしまう。突然の事で受け身は取れなかったが、バルナバの実に突っ込むだけで怪我をする者はいなかった。

 これまで見せなかった緊急回避行動を見て、ネフテリアは確信。

 それと同時に、『スラッタル』は一気に警戒を強めた。


「ミュイイイイイイッ!」


 伏せた状態のまま叫んだその全身、鱗のように身を護っていたバルナバの実から、ひと際細い蔓が無数に伸びた。


「うわ気持ち悪っ!!」


 全身から伸びている蔓は、『スラッタル』を護るように、蠢いている。

 ネフテリアは今度こそ発見した弱点を伝えようと、下に降りようとした。しかし、


「なんなのよおおお!?」

「わーーー!!」

「ぐえぇ……」


 聞き覚えのある声が『スラッタル』の近くから聞こえた。

 見ると、巨体の横で水着の少女達が蔓に絡まれている。


「って、パフィ!? アリエッタちゃん! ピアーニャ!?」


 パフィは片足を持たれて逆さに吊るされ、アリエッタは抱っこしているピアーニャと共に胴を縛られ、仰向け状態で持ち上げられていた。

エロスは世界を救う。

いえ、ただ単に水着の状態で釣られてるだけですよ。何も邪な事はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] どさくさに紛れてパルミラを抱えたワグナージュ人の彼は 変態のモロ出しを見ればいいと思います
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