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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
暖色と寒色のリゾートワールド
147/405

異変のグラウレスタ

「……で、説明してくださいますか?」


 赤い輝きに包まれた森の中、水着姿のネフテリアはこめかみに血管を浮かべながら、目の前の()()()()に問いかけた。


「ああ、ごめんごめん。今回はちょっと急いだ方がいい気がしてね。あの子の近くにいるキミに相談したかったんだ」

「急ぎ? わたくしも急いで戻りたいので、手短にお願いします。夜にドルネフィラーから出たら死んでしまいますから」


 ジト目で急かすネフテリア。この場所に来る直前にその物体を見ている為、目の前の存在の正体にはすぐに気づいた。

 それはもちろんロンデルなどではなく、夢のリージョン『ドルネフィラー』そのものである。


「ああ分かってるよ。前にここの夢貰った時に、事情知ったから。まぁ炎の世界と氷の世界に挟まれたこの世界は、気候が極端だからね」

「えっ? あの──」


 聞き捨てならない事を聞いたような気がし、思わず聞き返そうとするも、ドルネフィラーは構わず話を続ける。


「キミも今の状態は恥ずかしいだろうから、要件だけさっさと伝えておくね」

「………どゆことですか?」

「いやぁ、人の多い場所だったから、キミの気配だけに絞って取り込んだんだよ」

「えっと……ああ、確かに困りますね」


 ドルネフィラーに取り込まれるという事は、その場に紫の物体が存在するという事になる。つまり、砂浜によく分からない物が鎮座し、その中を覗こうとすれば、たちまち眠ってしまって夢の中に入り込んでしまう。

 無関係な人々を巻き込むのはマズイと考えたネフテリアは、すぐに納得した。

 しかし、ドルネフィラーから現状を詳しく聞き、戦慄する事となる。


「頭を球状のドルネフィラー(ボク)で包んでるだけだから、他の人が入る余地はないんだけどね。ただ女の人がそんな悩ましい体だけをさらけ出して、人々の中心で寝るのは流石に可哀想かなと」

「わたくしを今すぐ起こしてっ!?」


 自分の状況を事細かに説明してもらい、想像してしまったネフテリアが悲鳴をあげた。

 その頃砂浜では、倒れているネフテリアを囲んだ一同が、複雑な表情で眺めていた。

 身体はセクシーだが、頭が紫のマーブル模様の球体なのだ。はっきりいって不気味以外のなにものでもない。

 一応ミューゼがドルネフィラーの事を説明して、周囲のシーカーにもハウドラントで直接見た人もいたお陰で、大きな混乱にはならなかった。

 なお、これがドルネフィラーか…と見学するふりをして、その横にある可愛らしい水着を着た体を凝視する人々が多発。それに気づいたフレアが、ネフテリアの体を砂で埋めるよう指示を出していた。


「ははは、じゃあ説明するね」


 可哀想とは言ったが、その感情自体は理解しているわけではないドルネフィラー。軽く笑い飛ばして事情を説明し始めた。

 その異変とは、今現在夢で見せているグラウレスタの赤く輝くレウルーラの森の事。ハウドラントでアリエッタ達から離れたドルネフィラーは、そのまま世界を渡り、なんとなく不思議な気配があったグラウレスタへと引き寄せられていった。

 その時丁度調査にきていたロンデル達シーカーと鉢合わせ。不思議な気配と一緒に、夢も回収していた。


「はい、ロンデルからの報告でその辺りの事はだいたい想像出来ていました。でも不思議な気配か……」

「あのアリエッタって子の母親は女神だって教えたろう? あの気配と同じなんだよね」

「え、まさか……」

「その力は『外』へと向かっていた。たぶんアレは道だと思うんだけど、詳しい事は本人にも聞けないから分からない」

「はぁ……」


 スケールがでかすぎて、ネフテリアがうまく反応できていない。しかし、光による道はファナリアでも使っている為、どういうものかは想像出来ていた。


「まぁアレにはボクも直接干渉できなかったから、キミ達が行ってもどこかに飛ばされるなんて事にはならないだろうけど、ちょっと問題が起きちゃってね」

「問題?」


 普段から別の世界(リージョン)へと行き来可能なこの次元の住民にとって、今更異なる世界への扉が開いていようと不思議に思う事は無い。安全かどうか、人が行けるかどうかなどの調査対象にはなるが、その程度である。そういった意味では少し残念がっていたが、神の世界に繋がっても困るので、ネフテリアはとりあえずスルーする事にした。


「別の神の力を取り込んでしまったボクの一部が、いきなり自立してしまってね。ボクに取って代わろうとしてきたから、グラウレスタって呼ばれてるあの世界に慌てて捨ててきちゃった☆」

「えぇ……何してるんですか……」


 グラウレスタのレウルーラの森で、ロンデルの夢ごとあたりの力も取り込んでしまったドルネフィラー。外部の神の力によってドルネフィラーの一部である夢そのものに、自我のようなものが芽生えてしまったのである。その時点で()()は『ドルネフィラー』ではなくなっていた。さらに世界を侵食するかのように広がり、一部隔絶出来る分のみを残してその場に世界(ゆめ)を切り捨て、グラウレスタを去ったのだった。


「それで、今その捨てた夢がどうなってるのか分からなくて、しかもボクが戻ってもどうする事も出来ないから、ちょっと調べてもらえないかなーと……」

「いや貴方神様でしょう!? なに他のリージョン引っ掻き回してるんですか!」

「それはあのエルさんって(ひと)に言ってよ! 漂っている力と夢が変な風に干渉しちゃって、ボクにもわけわからないんだってば!」

「もうやだ神様こわい!」


 ネフテリアは頭を抱えるしかなかった。ただでさえ謎と危険と不明点の多いグラウレスタに、2人の神の力で何が起こっているのか分からない状態になったのである。しかもその原因は、普通では信じられないようなスケールの大きい不手際である。しかも片方は確実に自覚も認知もしておらず、会話も出来ず、また会えるかも分からない。


「そんなわけで要件は伝えたから。あとはよろしくね! そうそう、この前人に干渉できるようになったじゃん? せっかくだから、時々あの大きな家に引っ越したあの生き物を使って、あの家のルミルテって人と話してるんだよ。何かあったら伝言頼むといいよ。それじゃあね!」

「あっまだ聞きたい事があ…るん……」


 ドルネフィラーが早口でまくし立て、慌てた様子で去ろうとした。それを止めようとするも、ふいにネフテリアの意識が遠のいていった。




「はぁ……」


 ドルネフィラーの言葉通り、割とすぐに目覚めたネフテリアは、ピアーニャを抱っこしてため息をついていた。


「はなせ」

「ごめんもうちょっと……」


 いきなりとんでもない話を聞かされて、心底疲れた様子で、小さなピアーニャのぬくもりによって療養中。

 動けないピアーニャは、羞恥に加えてアリエッタのナデナデも同時に味わい、ストレス蓄積中。


「まさかあのネフテリアがここまで思い悩むなんて……どこかのリージョンが滅ぶ前兆かしら?」

「お母様ひどい」

「フレアよ、いちどテリアをつれてヤドにもどってくれ。よるにはなしたいコトもまとめればいいだろう」

「そうですね。行きますよテリア」

「……はぁ~い」

(ふぅ、やっとはなれた)


 ピアーニャは早く解放されたい一心で、ネフテリアを宿に送り返す事に成功した。思惑はともかく、その行動自体に間違いは無いので、全員納得している。

 少しだけ離れて、フレアの護衛も一緒に宿へと戻っていった。


「ぴあーにゃ」

(しまった! わちもいっしょにもどればよかった!)


 抱っこによるストレスで忘れていたが、解放されればアリエッタに構い倒される。その事を思い出したのは、アリエッタに手を取られてからだった。ピアーニャの悪夢はまだ終わらない。

 しかし、ここでピアーニャの手を取ったアリエッタが、ふとした疑問を抱いた。


(……あれ? そういえばこれだけ日光に当たっているのに、日焼けしないな?)


 ピアーニャの肌…自分自身の肌…パフィの肌…と、順番にその事を確認していく。

 赤い半透明のパルミラや、黒一色のオスルェンシスはともかく、暑さを感じる以上、長時間いれば肌に変化があってもおかしくない。

 事実、自分達以外の人々の肌は、しっかりと焼けている。


「どうしたアリエッタ」

「? ??」

「さっきからしきりに体を気にしてるのよ。なにか怪我でもしたのよ?」


 アリエッタが何を考えているのか、パフィ達には分かっていない。しかし、アリエッタの挙動に気付いた者がいた。


「あのぅ、もしかして肌の色が変わらないのが不思議なんじゃないでしょうか?」


 横から見守っていたパルミラである。


「え?」

「ほら、自分の白い肌と、あっちの人の焼けた肌を見比べて首捻ってますし。えーっと『日焼け』ってやつでしたっけ?」


 肌が日に焼ける事のないパルミラにとって、馴染みの無い日焼けという現象。

 もちろんファナリア人のミューゼや、ラスィーテ人のパフィが日に焼けない体質なのではない。


「もしかして、魔法で肌を守るのって、やらない方がよかった?」


 ミューゼが魔法で防護していたのである。何という事は無い、肌を綺麗に保ちたいというファナリア人女性の簡単な生活用魔法だった。


「あー……最初は止めた方がいいかもしれないし。なんで守るかとか教えようがないし。それともミューゼはこの魔法の事アリエッタに教えられるし?」

「うっ……」

「まほう?」


 魔法大好きなアリエッタが、『魔法』という単語に反応した。

 だからといって目に見える魔法ではないので、会話が通じないアリエッタには説明のしようが無い。


「ミューゼ、全員分解除するし。アリエッタだけ焼けるのも可哀想だし」

「ええ~!!」

(え? なになに? 魔法見せてくれるの?)


 アリエッタがキラキラした目でミューゼを見つめると、その圧に負けたミューゼはガックリ項垂れてしまった。


「うん……ソウダネ……はい、解除したよ……」


 こうしてアリエッタの教育の為、全員が日に焼ける事を選んだのだった。宿に戻って何も知らないネフテリアを巻き込んで。


(……あれ? 魔法見せてくれるんじゃないの? どゆこと?)


 雰囲気と単語で魔法を見せてもらえると思っていたアリエッタは、一体何を間違えたのか…と、見せてもらえなくなった原因を真剣に究明中である。ピアーニャの面倒を見ながら……。

若い水着姿の兵器ブリオンとか扱いに困りますね(

相変わらずあの女神は碌な事をしでかさない。本人何もしてないけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここ数章で心身共に一番の被害者な気がしますネフテリア
[一言] 神様なのに力が悪魔合体してますね
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