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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
暖色と寒色のリゾートワールド
131/404

襲撃のペルヴェルス

 ロンデルがシーカー数名を連れて、報告された場所へと向かっていった。何かトラブルがあれば、事前に解消するべきと思ったのだ。

 その事は、アリエッタと一緒にいるピアーニャにもこっそり伝えられ、遊んでいるシーカー達にもさりげなく周囲を警戒するよう指示していた。


「アリエッタちゃん、暑い? 今クリムさんがおやつとジュース持ってくるからね~」

「じゅーしゅ…?」


 少し慌ただしくなった中で、ほのぼの過ごしているアリエッタ達。今はネフテリアがアリエッタの傍で面倒を見ている。

 クリムが売店からおやつを買って、小走りで戻ってきた……その時だった。


「ん?」


 浜辺がざわついた。

 波打ち際を、何者かがハイテンションで走っている。


「ワハハハハハハ!!」


 野太い笑い声と水しぶきをあげながら、それは物凄いスピードでアリエッタ達のいる方へと突き進んでいる。


「なんだし?」


 ……と疑問を口にしている間に、それは間近へとやってきた。


「フンスッ」

「……えっ」


 なんとアリエッタの元へと戻ろうとしていたパフィの前で立ち止まった。そしてその肉体を見せびらかすかのように、ポーズをとる。

 それは、屈強な体に()()()()()()()()を纏った仮面の男だった。


『変態だーーーー!!』


 満場一致の大絶叫。

 ただでさえ目立つ集団の中でも、一際目立つ巨乳水着美女(パフィ)の目の前に立つ大きな変質者。そんな存在に気づかない者など、この場にはいない。

 あの美女達とお近づきになるチャンス!と、身構える浜辺の男性陣。しかし間には屈強なシーカー達がいるせいで、動く事が出来ない。


「なななな…のよ……」


 パフィもまた動くことが出来ない。目の前に強そうな変態が立ったせいで、体が竦み上がっている。

 そして変態もまたポーズをとったまま動かない。


「パフィさんっ!」


 なんとか我にかえったネフテリアが、魔法を構えて声をあげる。しかし見ることすら本能が拒絶しているのか、腰が引けて涙目になっている。

 自分の名を呼ぶ声がかろうじて聞こえたパフィは、なんとか動こうとしたが、足に力が入らず転んでしまった。


「きゃっ」

「!! うおぉっ!!」


 悩ましい倒れ方をしたパフィを見て、変態は腰の辺りから拳を上に向けて突きあげ、そのまま再び固まった。


「いやなんでだ……」

(えっ、何かのお笑い芸人?)


 目が点になっているが、どうやらこの場で一番冷静なのはアリエッタの様子。恐怖に囚われる事無く、全身を細かく観察している。


(おぉすごい……大胸筋ピクピクしてる。ぱひーが倒れたらポーズ変えてたから、何かすれば反応してポーズ変わるのかな? いやそれよりも、ぱひーを助けないといけない気がする)


 腰を抜かして必死に後退するパフィ。その目は何故か下半身を怯えたように見ている。

 少しパフィが動くと、変態も少しすり足で接近する。ゆっくりとだが、付かず離れずの距離を保ったまま移動しているのだ。


「うぇぇ……いやぁ……」

「パフィの嬢ちゃん!」

「離れろ変態!」


 パフィが涙目になったところで、ついに周囲のシーカー達が動いた。変態の左右から2人が同時に飛びかかる。右からは頭を狙って飛びかかり、左からは体勢を低くして猛スピードで胴を狙う。

 しかし変態は何事も無いかのようにポーズを変え、突き出された拳を躱した……いや、躱しただけではなかった。


「なにぃっ!?」

「ぐっ!」


 頭を狙った拳を上腕二頭筋で捕らえ、胴を狙った拳を太腿で捕らえ、そのまま体を急激に捻った。シーカーの2人は同時に振り回され、体勢を崩す。そのまま1人は上腕二頭筋によって投げ飛ばされ、1人は太腿の根本で挟まれ組み伏せられた。


「ってうわ゛ああああ!! 当たってるなんかでかいの当たってる生ぬるい気持ち悪い離せエエエエエ!!」

「ふっ……お前なかなか可愛いな。この俺様が良い夢を見させてやろう」

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」


 なんと筋肉粒々の変態男が、逞しいシーカーの男の顎をくいっっと上げ、口説き始めた。かつてない程の危機感に、逞しい男が錯乱している。

 それを見て、ピアーニャが我に返って声を張り上げた!


「パフィ、クリム! そいつをオトリにしてにげろ!」

「そうちょおおおおおおお!?」


 選ばれたのは、オトリ作戦である。捕まったシーカーだけが非難の声をあげていた。


「パフィ! クリム!」

「ミューゼ!」


 少し遠くから観ていたミューゼも復活し、数人のシーカーを引き連れて救援に入った。しかし肝心のシーカー(男)は腰が引けている。


「急げミューゼちゃん! 俺達じゃ大して役にたたねぇ!」

「なさけない事言わないでよ、もう! ほらパフィ立って!」


 肩を貸して、必死にパフィを立たせようとする。しかし、


「ふっ、逃がさん。そのレディに用があるのでな。お前達の相手はその後でネットリとしてやろう」

『ヒィッ!?』


 一般的な価値観を持つ男にとって、存在そのものが恐怖でしかない強き変態。仮面から覗く獰猛な視線は、シーカー達を震え上がらせるのには十分過ぎた。


「な、何の用なのよ……」

「そう怖い顔をするな。俺様は老若男女全てイケる方だから、安心するがよい」

「不安しかないのよ!? 節操無さすぎなのよ!?」

「は、はやく逃げるし!」


 最悪なカミングアウトをされ、さらに慌てるパフィ達。しかし、変態は何かをしてくる事も無く、ただ静かに語りかける。


「俺様は聞きたい事があるだけだ。手を出してほしいというなら遠慮なく出すがな。ワハハハ」

「おおおお断りなのよっ」

(ぱひーが怖がってる! むむむ……)


 やたらと自信満々なお誘いだが、この場にいる全員が引いている。

 ポーズを決めたまま動かない変態を見続けて少し慣れたのか、クリムがパフィを庇うように前に出た。


「で、聞きたいことって何だし?」

「ふむ、お前もなかなか……いや、今はいい。俺様が気になっているのは、その水着だ」


 そう言って、パフィの胸元を指差した。


「水着……ボク達が着てるのは全部新作だし、気になるのはまぁ分かるし」

「やはりか。その新作、今ここで脱いで見せてもらえぬだろうか」


 周囲の男達が全員ざわついた。


「なん……だと……」

「あいつ変態だけど、めちゃくちゃ良いヤツなんじゃ?」

「すまねぇパフィちゃん。俺達じゃこの男の足止めすら出来ねぇようだ」

「なに爽やかな顔で寝返ってるの!?」


 パフィに注目する男達に、ネフテリアからツッコミが入った。

 脱げと言われた本人は、体を隠すように身構えながら、必死に否定し、回避を試みる。その仕草もまた、男達の感情を掻き立てていく。


「いや脱ぐわけないのよ!? ええっと、水着はいま売り込みに行ってると思うのよ。後日お店探してみるといいのよ」

「そうか。ならばその大胸筋が隠れながらも強調される素晴らしい水着、いずれ必ず手に入れてみせよう!」


 叫びながら、ポーズを変える変態。購入して着るのは決定事項のようだ。

 パフィの言う通り、現在ノエラが現地の大きな店の店長に水着をアピール中であり、商談相手も新しい水着の数々に興味津々となっている所だった。


「さて、教えてくれた礼だが……この俺様が、天国へと連れていってやろうか? この男の後になってしまうが」

「いいいいやあああああ!?」

「嫌なのよ帰れなのよおおおお!!」


 変態が捕らえた男の顎を撫でながら、新たな提案をしてきた。もちろん返事は男の悲鳴とパフィの絶叫である。


「そう邪険にするな。大きさには自身が……ん?」


 ここでパフィの絶叫に反応したアリエッタが、パフィを庇うように前に出た。


「ぱひー! みゅーぜ! くりむ!」(ここは僕が、男をみせるときだ! 女だけど!)

「アリエッタ!? 危ないのよ!」


 後ろから状況を頑張って分析していたアリエッタだったが、何度も叫んでいるからとりあえずピンチなのだろうと結論付け、変態と対峙する事にした。相手は大きいので流石に怖いが、パフィ達を守る為になりふり構っていられないのだ。


(女…男…おとこ……むー……)


 しかし、変態を間近でまじまじと見たアリエッタは、急激に不機嫌になっていく。


「ほぉ……これはこれは、将来有望なお嬢さんじゃないか。なんだい、ペロペロして欲しいのかい?」

「ちょっとアリエッタに何しようとしてるの!?」


 ミューゼがアリエッタを守ろうと手を伸ばした。

 しかし、アリエッタは突然変態に向かって駆け出し、その手をスルー。


「えっ……」

「やああっ!」(やっぱこいつ許さん! 僕の敵だ!)


 いきなり変態を敵認定し、向かっていった。


「ワハハハハ! 良いぞその心意気! 俺様の嫁にしてやっても良いぞ!」

「駄目に決まってんでしょ!? アリエッタ戻っておいで!」


 ミューゼの静止もアリエッタの耳には届かない…というか言ってる意味が分からない。

 その勢いのまま、シーカー達の真似をして拳を突きだした!


 ぺち


 可愛い音がして、沈黙が広がる。

 変態が仰け反りながらポーズをとり、愉しそうに笑った。


「ハハハハ! 可愛いヤツめ、もっと打ってくるがいい。気が済むま゛ばあおぉっ!?」


 喋っている最中に、変な声を出し、反っていた体を前屈みに折り曲げた。

 そして変態は見た。男の急所にジャンピングアッパーカットをめり込ませる、純白の美少女の姿を。


『ノオオオオオオォォォォォ!?』


 怒りがこもったアリエッタの攻撃は、変態の肉体はもちろん、浜辺にいるほとんどの男達の精神に、クリティカルヒットしていた。

無駄にカッコいいタイトルになりました!

二つ名モンスターとか冒険者みたいでカッコいいですよね、襲撃のペルヴェルス。


ドイツ語やフランス語でPervers=変態という意味で使われる単語です、ハイ。

中身が死ぬほど残念なところが我が作品にピッタリですね(

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