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ロリ剣士  作者: 依依恋恋
遊戯神編
9/51

第九話「常識破りな遊びの神」


 命をかけて1つ、勝負をしてみないか?


 とても簡単なゲーム。

 そこに賽子(サイコロ)が置いてあるだろう? 1から6の目まである、ごく普通の賽子。

 今から君はこの賽子を自分で振って出た目の数を当てるゲームさ、もし成功したら君は無事逃がしてあげる。簡単だろう?


 ただし選べるのは2つ。


【2から6の目が出るか、1の目が出るか】


 君はどちらを選んでもいい、ただし外れたら君は死ぬ。


 そしてこの賽子がいかなる目を出しても反論は許されない。

 君が選んで、君が振る。もしこの賽子が例え1しか出ない賽子だとしても当然ゲームは成立するよ。

 僕から言えるのはこの賽子は普通の賽子だと言うこと、それが嘘かどうかは君自身で判断して構わない。


 さぁ、選んでよ。振ってみてよ。


 普通なら2から6の目が出る方を選ぶハズだ。確率は6分の5、選んで当然じゃないか。

 振るのだって君自身だ、全身に神経を集中させたら1の目を回避することくらいは出来るかもしれない。


 何を迷っているの?

 もし1の目が出たら、もし僕の言っていることが嘘だったら。

 そんな余計な事は考えてないかい?


 確率は絶対不変で絶対収束する。と、君達の世界ではそう結論付けられているんだろう?


 なら迷わず2から6の目が出る方を選ぶべきだよ。

 何もおかしくない、ちょっと命がかかっている程度で普通に気分で賽子を振る時と何も変わらない。

 とっても簡単、誰でも出来る。当たりが6分の5か、6分の1か。君だって馬鹿じゃない、当然6分の5を選択するだろう?迷う必要はないんだよ。


 さぁ、選んでみてよ。そして振ってみてよ。

 ──ただし間違えたら。



 ◇◇◇



「……それで、その人はどっちを選んだの?」


 食卓のテーブルを囲んで私と対極の位置に座るバケモノ男は珍しく昔話をしていた。

 この世界の常識を破り続けた神──"遊戯神"の話らしい。


「そいつは1が出る目を選んだ。そして自ら賽子を振って、──2が出た」


 第三者から見れば愚行だろう、私もそう思う。

 だが勝負の世界にいる者達は外野と違う世界にいる。


「そう、……確率を信じないでその遊戯神とやらの話を信じた結果ね」

「1が出る確率は少なくとも6分の1はあったはずだが、運が無かったな」


 当然の結果だ、遊びなら迷わず2から6の目が出る方を選ぶだろう。

 だが命がかかっていて、かつ常識のない言葉をかけ続けられた者が嘘を信じず確率を信じてその賽子を振ることが出来るかと言われれば。否だ。


「このゲームの肝は確率の低い方を選ぼうが高い方を選ぼうが負けが存在する事だ」

「それは分かるわ、じゃあ結局何が最善だったの?遊戯神はそもそも賽子に何か仕掛けをしていたの?」

「賽子には何もしてないさ、本当にただの賽子だ。だから勝負の行方は誰もわからない、例え遊戯神でもどの目が出るかは分からなかったと言っていたな」


 言っていた、ね。


「だが結果はわかっていたらしい、賽子を振るやつが選択を誤って死ぬという結果が」


 そこで初めて私は首を傾げる。

 賽子の出る目がわからないのに外す結果はわかっていた?それはおかしい。


「矛盾してないかしら?外すとわかっているなら振る人がどっちを選ぶか分かってるということ、それは言葉で誘導すればいい話。だけどどっちを選んでも確率で助かる可能性が残るわ。なのにどうして失敗するって分かってたの?」

「さぁな、未来でも見えてたんじゃないか?この世界には魔法があるしな」


 それこそ矛盾を認めてるようなものだ。

 賽子に魔法をかけて好きな目を出せる、なんて初心者でも考えるような答えなら納得出来る。

 けれどバケモノ男は賽子には何も仕掛けていないと言った。


 この男、嘘はつかないけど真実も言わない。だから余計怪しい。

 まさか賽子には何も仕掛けていないけどそういう未来を確定できる力を持っている、なんてふざけた内容ならあり得るわね。神なんだしそのくらいは出来るはず。


「どうあれ最初から負ける前提の勝負だった、なんて話なら興味なくなったわ。勝つ可能性が無い勝負なんて勝負ですらないわ」


 いくら遊戯神を名乗る神だろうと同じ立場で戦わないのならそれはただの一方的な攻勢、遊びね。

 勝負を始めてから確定された勝利に導かせるのならまだしも、勝負を始める前から確勝が定められていたなんてただの作業と変わらない。勝負とは勝ち負けが存在するから勝負と言うのだ。


 私は人間の生肉を食べ終えると席を立つ。先日アーク達が死んだので腐らないうちに食べてしまおうというバケモノ男の粋な計らいだ、嬉しくもなんともない。

 隣で何故か桜が涙を流しながら絶句してるが無視することにした。

 血生臭い食器を重ね、配膳係のミットに渡す。


「いや、勝つ可能性は当然あったぞ」


 食事が終わった者に対して食事中にしていた話をするのはマナー的にどうなんだろうか。と、些細な疑問を持ちつつも最大の疑問点はその言葉に刺さった。


「どうやって勝つのかしら?単純に確率的な問題だったってこと?それならあんたがさっき言ったことが矛盾するわよ」


 そう、バケモノ男はこういった。「遊戯神は賽子を振る者が負けるとわかっていた」と。

 これは誰がどう考えても魔法やそれを超越した何かによる単純なイカサマだ。

 だから面白くないと、そう思ったのだけれどさっきからこの男が言っていることがその真逆だ。意味がわからない。


「ふむ、遊戯神はとても努力家で勝負に全力をかける奴だ。だからこそ非常識に見えるんだろうな」


 また遠回しな言い方を、全然意味がわからない。

 遊戯神は努力家で勝負に全力?賽子を振る事すら出来ないのだから全力も何もないじゃない。

 いよいよもって理解できなくなった私は不貞腐れるように食卓場の出口を開けた。それを桜が追うようについてくる。

 ドアが閉まるほんの数秒、バケモノ男が声を風に乗せるように呟いた。


「一つヒントをやろう。──神は賽を振らない」


 そんなのさっき私が思った事と同じだ、遊戯神は賽子を振ることが出来ない。だから疑問が浮かぶというのに、なんのヒントにもならないじゃない。


 私はため息をつきながら部屋を出ていった。


 ──そして後に後悔することになる。この時の私はもっと考えるべきだったと。


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