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ロリ剣士  作者: 依依恋恋
遊戯神編
14/51

第十四話「命を賭けた遊び」

 この遊びのルールは以下。


 1.サイコロを振って出た目の数を当てる。

 2.選べる目は1か2~6の二択。

 3.サイコロを振るのはプレイヤーである愛夏。

 4.遊びはこの場で行い、場所の移動は無し。

 5.バケモノ男は一切の手出しが不可。

 6.同じくディーラーである遊戯神も手出し不可、ただし喋る事は可。

 7.プレイヤーが勝てば不死の塔の場所までの案内。負ければ死ぬ。


「以上で相違ないね?遊びが始まったら二度と変更は出来ないよ?」

「ええ、構わないわ」


 私の承諾を得ると、少年は1番の問題と言わんばかりにバケモノ男を睨み付ける。

 当の本人は自分に問い掛けられてることにようやく気付き、不思議そうな顔をして答える。


「ん?俺もそれで構わないぞ、そもそも俺は見ているだけだからな。なんの邪魔もしない」


 その言質を貰ってようやく笑みを浮かべる遊戯神。

 随分と念を入れてるのね。事実その言葉通りバケモノ男は本当に何もしないと思う、あくまでいつも通りだ。

 だからこそ私は改めて覚悟を決めなければならない。──負けた時の覚悟を。


「それじゃあお互いに改めて自己紹介でもしようか、それが遊びの開始の合図という事で──」

「愛夏よ、見ての通り人間でこの世界じゃ取って食われるような柔い存在ね」


 食い気味で皮肉を込めた返事をする。

 そして、ゲーム開始の合図は少年へと移った。


「──僕の名前はトリック・スター、常識を破り続けてきた遊戯の神だ。と言っても僕の名前を知って生きてる人間なんて過去に一人もいなかったけどね」


 互いの皮肉が入り混じる中、ついに遊びとは名ばかりの命を賭けたゲームが始まった。


「愛夏さん!」


 同時にエントランスに繋がる廊下からその叫びと共に、私と同じ人間である桜が走ってきた。


「愛夏さん、神様と命を賭けて勝負をするって本当ですか!?危険ですよ!」


 息を荒らしながら何を言いに来たかと思えば、私の心配だった。

 はっきり言って余計なお世話なのだけれど。


「どんな報酬があって勝負を受けたのかは知りませんが、命をそんな簡単に天秤にかけちゃダメです!」


 勝つ事を報酬という辺り生粋のヴァンクール帝国の兵なんだなぁと思いつつ、やはり余計なお世話だ。

 こういうのは聞くだけ時間の無駄、時間は私にとって大切なものだから無駄にしたくない。


「ごめん、ちょっと黙って。そもそもこのゲーム、神様の力で絶対に受けないと駄目らしいから」


 どうでもいい返事をしながら私はバケモノ男を一瞥する。桜が来たにも関わらず、バケモノ男はずっと黙ったままで私を見つめている。やはりゲームが終わるまで自分からは一切口出ししないつもりなのだろう。


「そ、そんな……」


 桜は腕を降ろすと諦めたような哀しい表情をする。

 この子、賢いが故に現実を見過ぎね。


「さっきからゲームゲームって……これは遊びだよ」

「遊びもゲームも同じよ」


 軽い煽りをかけて遊戯神を名乗る少年のペースを乱す。

 このゲームは単純が故に1回で決まる、そう。1回、1回振ったら私の命が簡単に消し飛ぶと思った方がいい。


 だからここは慎重に行かなければならない──

 と。思っているだろう遊戯神を私は掻い潜る。


「もうゲームは始まってるわよね、それじゃ2~6にするわ、──はい」


 私はなんの躊躇いもなく賽子を上に振り上げた。

 それを見た遊戯神は驚愕する。


「なっ!?───ッ!」


 焦燥した遊戯神は私が賽子を手放す寸前で口から何かを発した。

 今までに聞いたことない発音と言語だったが、それを聞いた私は微かな違和感を感じ賽子を手放す。

 ほんの一瞬の出来事だった。


 賽子が上空で回転する。外れる確率は6分の1、普通なら勝てる確率だ。

 しかし私は上空で回る賽子から目を離し遊戯神へと視線を移す。

 その時既に遊戯神は賽子ではなく私を見ていた。


「危なかった、まさかこうも簡単に賽子を投げるなんて思わなかったよ!命が懸かってるというのに……」


 遊戯神は私が命を顧みず、すぐさま賽子を振ったことへ驚愕を示している。

 けれど、その言葉を聞いた私にとってはその驚愕すら些細な事に書き変わる。

 ──なぜなら、遊戯神は既に勝ち誇った顔をしているからだ。


 賽子はまだ空中で回り続けている。

 その意志が、私の意思ではなくまるで遊戯神の意思によって回るかのように。

 私の頬から冷や汗が流れ始める。やがて表情が険しくなり、凍る。


 無音の風に揺られて賽子はボードに落ち、跳ね上がる。

 1回、2回、3回と──。

 遊戯神は最早私の顔など見ていない。私の真上、バケモノ男の方を見て口角を上げている。


「──お前のオモチャ、壊してやったよ」


 やがて賽子は回ることを止め、ひとつの目が天井を向ける。

 ──"1"が出た。


「あははっ、ははははっ!」

「そ、んな……」


 私が選んだのは2~6、出た目は1。運が悪いことに6分の1を引いてしまったのだ。

 遊戯神は高笑いを続け、桜は真っ青な表情になり目を泳がせ、そして私は苦笑いをした。

 ──対してバケモノ男は無言のまま表情ひとつ変えてない。


「見ての通り僕はイカサマをしていない!僕に許されたのは喋る事だけだからね!超越神、お前もこの勝負は僕の勝ちだろう!?認めろ、今!」


 狂人のように審判の確認をバケモノ男に投げかける遊戯神。

 バケモノ男はそう言われても未だ表情ひとつ変えない。ただ正否を判断する。


「ああ、この勝負はお前の勝ちだぞ」


 遊戯神の行為は実にルールに則っている。誰がどう見てもこの勝負は遊戯神の勝ちで──私の負けだ。


「アハハハっ!ざまぁみろ!いつまで余裕な表情を保っているつもりだい?君にとって大切なオモチャが今死ぬぞ!」


 そんなに私を殺すのが嬉しいのだろうか。いや、目的はバケモノ男を蔑む事だろう。

 この男はいつもは屋敷に引きこもってる癖に、多方面から恨みを買ってるのね。


「確かに、愛夏が居なくなるのは非常に困るな」

「あははっそうだろう!でもやめてあげなーい!この子はもう死ぬ事が決まった、僕が殺す!お前はそれを目を逸らさずに見てるんだな!」


 よほどのことなのか、遊戯神は本性を見せた本当の笑顔で嬉しそうに笑っている。これは子供のしていい笑顔じゃない。


「愛夏さん……!」


 桜の声が虚しく響き渡る、私はゆっくり目を閉じた。

 ──覚悟は既に決めたのだから。


「それじゃあ殺してあげる!」


 私の等身はある大きな斧を出現させ軽々と手に取った遊戯神は私を捉えると無慈悲と伝える無為な表情で斧を振り上げた。


「──あははっ!」


 最後にその笑い声が聞こえ、私は目の前が真っ暗になる感覚に苛まれる。


 ああ、──この感覚。

 弱者が強者に敗れ落ちる瞬間、そして何もかもが無くなる。自分の物語の終焉を迎える死の間際。

 痛くて、痺れて、冷たくて。



 ──もう何度も味わった。



 ◇◇◇



 辺りは急に静まり返る。

 周りには僕と、僕が殺した少女の死体。そして未だ余裕の振りをしている超越神と、わんわんと泣き喚いているただの人間が転がっていた。


「それじゃあ僕は目的を達成したし帰らせてもらおうかな!」


 僕は悦びを表現しながらステップで帰ろうとすると、超越神がそれを引き留める。


「──何を言ってるんだ?まだ勝負は始まったばかりだろう?」


 自分の玩具が壊されてよほど悔しいのか、超越神は苦し紛れの言い訳を放つ。なるほど、負け犬の遠吠えらしくて実に愉快だ。


「勝負は始まったばかり?何を馬鹿な事を、言っておくけどこの遊びのプレイヤーは愛夏と言う人間だけだよ。交代制があるなんてルールは作っていない」


 僕は完膚無きまでに異論を許さない。そもそもただの人間が遊びで僕に勝つなんて不可能だと知っているはずだろうに。

 だが、超越神は未だに腕を組んだまま狼狽えることすらない。幾ら此奴でも勝敗を認めないほど愚かじゃないはずだ。

 確かに僕は勝った、勝者なのだ。それは超越神自身が認めている。なのに勝負は続いているだって?頭のネジでも外れたのか?

 それにしてもこいつがずっと余裕でいるのが逆に不気味だ。最初はハッタリや痩せ我慢だと思ったが、何か違う……?


「その通りだぞ、交代制なんてルールは無い。だからまだ勝負はついていないと言っているのだ」

「いい加減しつこいよ、結局何が言いたいんだ?」


 流石に遠回しな言い方にイラつきを覚え始め、超越神を睨み付ける。

 すると超越神は僕から目をそらし、廊下の方を見つめた。


「先程からお前は観戦者である俺を見てどうする?お前が見るべきは対戦するプレイヤーだろうに。お前もそう思うだろう。なぁ?──愛夏?」

「──は?」


 エントランスに流れていた風の向きが変わる。

 僕が完全に操っていた空間の経脈に穴が開き、流れ出るかのような感覚。廊下から身に覚えのある1つの気配が流れてくる。

 僕は固まった。既視感のある影の主は、先程自分が手に掛けたはずの少女に見える。事実僕の手に持っている斧には血が付着してあり、死体もすぐそこに……死体が、ない……!?


 「そんな、馬鹿な……!」


 やがて暗がりの廊下からは明確な足音が聞こえ始める。聞き覚えのある、小さな子供の足音。

 僕は目を見開いた、声が出ないほどに驚愕した。

 だって、だって僕は人間と遊んでいたはずなのに。人間だと聞いていたからこのルールを持ち掛けたのに。そんなの、こんなの聞いてない……!


「ええ、全くね。何ひとりで勝手に終わった顔しているのかしら、これからが長い戦いでしょう?」


 ──僕が殺したはずの少女は、無傷で目の前に現れた。


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