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鉄の王  作者: ぴよっち
第一部
6/61

サノスの町

翌朝目を覚まし、色のついたお湯を勧められるがままに啜る。

焦げたよう風味と苦味で思わず吐き出しそうになるが、せっかくの好意に対して失礼かと思い無理やりに胃に流し込む。


「目が覚めたかね?」


「うっぷ……え、えぇまぁ。一応は。」


「酷い味だろう?だけどこの魔力茶は身体の中の魔力の巡りを整えて、体力の回復を早めてくれるんだね。」


(魔力とはつまりリンパ的な何かなのかな。)

などとくだらない事を考えながらトッシュは魔力茶と呼ばれる泥湯を一気に流し込む。


熱々のまま流し込んだので口の中を火傷し、ヒリヒリと痛んだが

体感で一時間もしないうちにいつの間にか痛みは消えていた。



「さ、出発するのね。今ならまだ日の出ている内に到着出来るのね。」






ーーーーーーーーーーーーーーー





歩き出してから数時間、焼け野原はやがて街道へと変わり前方に石造りの大きな門が見えてくる。

町、と言うより城塞都市と言った方が良いと思える程の大きな門だ。


「止まれ!何者だ!?ここ、サノスの町は現在火竜エキュロス討伐の前線基地として部外者の立ち入りは禁止されている!」


「エリスロ王国子爵カルネ様に雇われた、牙を持つ燕の団長セシル。子爵殿はおられるか?撤退の途中生き残りを拾ってきた。」


セシルの風貌、その名前はポピンの言うとおり本当によく知られているようで

名前を聞いた瞬間、衛兵の表情がほんの少しやわらぐ。


「牙を持つ燕……前線に配備されていた傭兵団か。よく生きていたな。

だが、子爵殿はまだ戻って来られていない。

今は弟君のチェコ様と戻られた部隊長らでこの先の対応を決める会議を開かれているところだ。」


「そうか、分かった。ならば帰還の挨拶は後にさせてもらおう。

治療を必要とする奴がいるから、先に教会へ行くが構わないな?」


「どちらにしろ今から行っても会議室には入れてもらえないだろうからな。

子爵様が戻られたら宿へ知らせを送るので、気にするようにしておけ。」


「わかったぜ。宿には部下を残しておくから、出来るだけ早めに頼む。」



営業と言葉を交わしたセシルを先頭に団員達も門をくぐる。

トッシュは列の最後尾から見えてきた町の景色に息を呑んだ。



そこには綺麗に敷かれた石畳で作られた通り、その先に見える噴水。

両脇にはズラリと出店が並び、沢山の人で活気にあふれ賑わっている……と、言った事はなく

怪我をした兵士がそこかしこに並べられており、救護と思われる女性が忙しそうに走り回っていた。

町自体の作りも立派なものではなく、馬車の作った轍には水が溜まり茶色の水溜まりを作っている。


(立派なのは門だけか……これも今回の戦いのせいなのか?

それとも、もともとこの世界の町ってのはこんな感じなのか?)


「さて、と。トッシュ、お前はポピンと神殿に行き治療を受けてこい。

一緒に行っても良いが、ちょっと人と会う約束があるんでな。」


「あ、はい。分かりました。」


「治療が終わったらどこかで服を調達するんだな。

流石にその格好は奴隷か捕虜にしか……」


「セシルさん!!」


話の途中で一人の女性がセシルに向かって駆け寄ってくる。


「トッシュ。さ、行くね、神殿はこっちね。」


神妙な面持ちをしたポピンに促され、トッシュはその場を離れる……

途中、気になって振り替えって見ると、お腹を抱えて泣き崩れる女性と、申し訳なさそうな顔で佇むセシルの姿があった。


「……そうか、あの女性が……」


「旦那のグインは良い戦士だったね。

私たちは来なくて良いって言ったんだけど……本人がとうしても最後に団の皆と戦いたいと言って聞かなかったのね。

あの時、火竜エキュロスが現れ半数以上の団員と一緒にブレスに焼かれて骨も残らなかったのね。

……せめて、遺品でも持ち帰る事が出来れば良かったんだけどね。」


「……残された人はきっと辛いでしょうね。」


言いながらトッシュは、自分が前の世界で鈴木俊之として車に轢かれた後、残された母と祖母の事を思い出していた。

小説情報からPVが見られるって事にきづきました。

しかも累計じゃあなく一日毎、時間毎に表示されててスゴい。

数字が増えているのを見るとやる気がムクムクしてきますね。

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