装備品
結局、金庫の中にはかなりたくさんの思い出の品が遺されていた。その中でもひときわ目を引いたものがある。
"もしメガネが壊れた時"と書かれた大きめの箱だ。
話はそれるが、じいちゃんの書斎の机の中身は遺品整理がされていたので、机の中に入っていたものをまとめた箱の中からおばあちゃんと俺が鍵を探すことになった。
古い写真、遺書など書類に紛れていた古い鍵が見つかるまでには1時間もかからなかったが、おばあちゃんへ宛てた手紙を見つけたときはまさかこんなに時間がたってから...
と、おばあちゃんが久しぶりに本気でおどろいた顔をしていた。
そして。
金庫の中にあったものをいくつかおばあちゃんから譲り受け、俺はもう一度"裏"の世界へと向かう。
「反転。」
金庫の中に置かれた手紙を読んでわかったことがある。俺の予想が正しければ、俺はもう2度とあいつに負けることはなくなるはずだ。
ありがとう、じいちゃん。
「よし、じいちゃんの道具は一式もちこめてるな。ここまでは予想どうりだ。」
セーブ地点から復帰すると、町の中にあるテストルーム、いわゆる武器の機能などを試す修練場に向かった。
じいちゃんが金庫の中に遺したもの、特に"メガネが壊れた時"のために遺してくれたものは4つの道具と、何故"メガネが壊れた時"用なのかについての書置きが1つ。
さらにそれぞれに使用方法や説明などが添えられていた。
書置きには、じいちゃんが大学で研究していた内容についてと、"20年前の事故"についてがそれぞれ1枚ずつの紙にまとめられている。
じいちゃんは、亜空間理論や多次元空間、いわゆる"裏"世界について研究していたこと。
20年前の事故によって、じいちゃんが"裏"世界の1つに...おそらく人類で初めてだが...転移したこと。
転移先で《空間の扉》という空間の形を変え空間をつなげることができる固有能力、いわゆるユニークスキルのようなものを手に入れたこと。
1000回以上の転移を行い、やっとこの世界に帰ってきたこと。
俺がもらったメガネや、この時の転移の旅の最中に作った道具こそがじいちゃんが遺してくれたものらしい。
などなど。
その中に気になる表記があった。[この"表"世界ではおじいちゃんの作った道具の一部が能力を使えなくなった。]という1文の「能力」という部分についてだ。
もしその能力が使えないのは、この"表"の世界に存在しない概念を含んでいるからである、という可能性がある。
「"表"世界では使えない能力は、"裏"世界である〈マイルグランド〉内でなら使える可能性があるのでは?」
俺は考えた。もし別の世界で使われていた能力が使えたならば、《敵性魔法無効化》では無効化しきれない能力の可能性がある、という結論に至った。
もちろんすべての道具が使えなければ意味はない。その部分については完全なる賭けだ。それでもいい。あいつに勝てる可能性をじいちゃんがくれたんだ。足掻いてみるしかない。
「よし、やるか。」
そうつぶやくと俺はテストルームに入室した。
半日ほど後...
「はあ...つかれた...」
そこには自室で倒れこんでいる俺の姿があった。
半日の特訓の成果で何とか道具の使い方がわかったのだが...
1番身に染みて密室で火を燃やすことの恐ろしさがわかった。一酸素中毒なんて状態異常初めて見たぞ...
もしかしたら、というある1つの検証は現実世界で行うつもりだ。
"表"世界はいい。安全で、何より快適だ。