11話 人里防衛戦①
こんばんは、狼天狗です。
本日もお越し頂き誠に感謝します。
先週は休載を取らせて頂きました。申し訳ありません。
さて、今回から妖怪暴走異変開幕です。首謀者は魅魔な訳ですが、実は裏に怪しい影が潜んで居ます。その正体は、お話を読み進めて見てくださいね。
それでは、お楽しみ下さいませ。
人里へと足を急かす。先ずは森を抜けなければいけない。
魅魔に誘導してもらいながら、後を追いかける。しかし、妖怪達は行く手を阻む。
空雅を右腕に装着し、先端部分を妖怪に向け構える。そして、大きさが合わない弾丸を撃つ。
続いて、チェーンを出しながら素早く回り込む。妖怪達は案の定、飛び掛かってきた。
次々に薙ぎ払い、先を急ぐ。こんな事してる場合じゃ無いのに。朱鷺子が…朱鷺子が危ないかも知れないというのに!
焦っていると、魅魔が肩に手を置く。振り返ると、真剣な表情が見られた。
「慌てたら命拾いするわよ」
「だが…」
「これ。また新作なんだけど、使って見てくれない?」
魅魔に渡されたのは、槍だった。それも、大罪の力が備わった武器だ。
その大罪は、強欲。常に力を欲すその大罪をもったこの槍は、相手の力を吸収し、吸収した力を打ち返せる能力を持つ。
正直こんなに武器を渡されたら困るし、持ち運びが面倒くさい。その事を話すと、近々武器を変化させる携帯出来る物を作ってくれるらしい。空雅を除いてだが、それなら安心だ。
やっとの思いで森から出る。此処から見た人里の様子は、戦乱中に思える。
香霖堂に寄ってみるが、人気は無い。霖之助も援護に行っているのだろうか。
考えていても仕方ないと、足を早々に急がせ、人里へと入る。魅魔は、暴走した妖怪を抑える為の薬品を作る為、非戦闘員となるらしい。その為、一度家に戻るとの事。
人里・西
里の人達は何処にいるのだろうか。保護されているといいが…と歩き回っていると、逃げ遅れた子供が妖怪に襲われそうな所を目撃する。
背中に担いでいた槍を抜き、これでもかと言う速さで妖怪に向かって投げた。
寸での所で妖怪を貫いて、子供を救った。
どうやら足を挫いてしまったらしく、人が集まっている所に背負って行く事にした。
道中、見知らぬ人物と遭遇する。
腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪で、頭には頂に赤いリボンをつけ、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せている。この帽子には、赤い文字のような模様が描かれていた。
衣服は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服。袖は短く白い。襟は半円をいくつか組み合わせ、それを白が縁取っている。胸元に赤いリボンをつけている。下半身のスカート部分には幾重にも重なった白のレースがついていて、長い。
その人物は、俺の背負っている子供に気が付いた。
「その子は…! 貴方が助けてくれたんだな、感謝する。私は上白沢 慧音と言って、寺子屋で教師をしている者だ。失礼だが、名前を聞けるか?」
「……大丈夫だ。俺は紫月 封太。この子は道中妖怪に襲われている所を助けて、足を挫いたらしく、此処まで背負って来た」
慧音と名乗った女性は深々と頭を下げる。俺のいた学校の先生は、こんなに生徒を思っている人徳な人間では無かったな。
慧音は一人で、今背負っているこの子を探していたらしい。こんな危険な場所に来るとは、人間では無いのかも知れない。だとすると、嫌われている凶暴な妖怪とは違う。
考えていると、俺はある事を思い出す。朱鷺子だ。慧音に稗田邸の事について聞き出す。
「彼女達か? 見ていないな…」
「そうか……避難場所とか、あったりするか?」
「ああ。博麗の巫女による結界の空間があってな。一度出たら入れないらしいがな。位置はあっちだ」
慧音が指した方向は、西と反対の東。其処を目指しつつ、朱鷺子達を探そう。
足を挫いた子供を背負ったまま、慧音と共にその場所を目指す。だが、その道中で妖怪が立ちはだかった。
子供を一度下ろし、慧音に様子を見ていてもらう。空雅を装備し、地を蹴り一体の妖怪目掛けて殴る。
妖怪が味方に当たり一緒に吹き飛ばされ、呆気に見ている合間に次々と殴って行く。所詮雑魚には変わりない妖怪達。これぐらいの連中に手こずる訳にはいかない。
そう思いながら戦闘を繰り広げていると、土煙が巻き起こる道の先から、突進をする様に巨大な生物がやって来る。
避けようにも後ろには慧音がいる。受け止めるしかない。
槍を構え、突進の衝撃を受け止めようと試みる。体が後ろに押されるが、何とか食らい付き衝撃を吸収し力へと変換する。
受け止めた後素早く後ろに飛び、吸収した力を纏った槍を投げる。しかし、その妖怪は只者では無かった。その大きな手で槍を掴み、俺の元へ投げ返す。
寸での所で後ろに避け、目の前には地面に突き刺さる槍と、大きな妖怪がいた。
「手荒い歓迎だな」
「オウオウオウ。よくモ俺様の子分達を可愛ガッテくれたな…アァ?」
あの幻影を見せた妖怪と同じ様に話せるのか。それにしても、口が悪い奴だ。二度と会いたくないな。
「俺様を他の奴ら見たいニ舐メテモラッチャ、困ルゼ? フン!」
荒い鼻息と共に、拳が飛んで来る。いち早く後ろへ飛び下がり、慧音に逃げる様伝える。慧音は了承し、子供を炙ってこの場を去った。
周りに気を使う事と言えば建物の破損だが、構ってられない。アギトを取り出し大物妖怪に刃先を向ける。妖怪は、口元をニヤリと動かす。
次の瞬間、妖怪は獣の様に四足歩行で突進して来る。ゆっくりとアギトを横に移動させ、大きく振って斬り込んだ。
アギトを収めると同時に妖怪の腹元が斬り刻まれ、血を吐いて嘆きながら力無く倒れた後、灰となって消えた。
一息付いていると、誰かが俺の名前を呼びながら走って来る。霧雨魔理沙だ。
内容を聞くと、博麗の巫女が貼る結界の場所で作戦を練るとの事。俺の居場所は慧音から聞いたらしい。了承して、魔理沙の後を付いて行く。
暫く歩くと、人々が集まる結界近辺へと辿り着く。第一に朱鷺子を探すが、それらしき影は無い。魔理沙にも一応聞いて見たが、見覚えは無いらしい。
因みに、阿求は何とか無事だった。そして気に食わぬ男、俊哉も一緒に居た。
阿求にも朱鷺子について問うが、帰って来て居なかったらしい。何だか胸騒ぎがする。良からぬ事が起こるのでは無いか? そう考えるだけで心が落ち着かない。慌ててはいけない事は分かっているんだ。
魔理沙が作戦会議をするという事で、俺を呼びに来た。今いる場所は、人里の南に当たる。比較的安全な場所となっているらしい。一応話だけでも聞いておこうと、顔を出すことにした。
其処には、魔理沙除く三名が集まって居た。
一人目は博麗の巫女。
二人目は寺子屋の教師。
三人目は姉貴存在のあの方。
華扇に関しては、此処で里人達を護って居たらしい。
「作戦を話す前に、言いたい事が二つあるの。まず一つ目は、小鈴ちゃんが行方不明。そして二つ目が、霖之助さんが行方不明という事。察してくれたとは思うけど、その二人の救出に向かうわ。小鈴ちゃんの救出を魔理沙と華扇が。霖之助さんの救出を私と…あんたよ。慧音先生はここの守備を任せたいんだけど…」
ガンッ! という音が突然その場に響き渡る。その発生源は、紛れもなく俺。この巫女は朱鷺子の事を何も思って居ないのか? 周りの皆が、驚いた表情を見せながら此方を向いて居た。
「…悪いが、俺は朱鷺子を探しに行く。其方は勝手にやってくれ。救出は一応耳に入れておく」
「あ…! ちょっと!」
巫女の叫ぶ声が耳に響き渡り、俺は走ってその場を去った。
【人物紹介11】
喜梅 俊哉
当作品のオリジナルキャラクターの二人目。過去に両親が妖怪に殺された以来、妖怪を恨み続ける人間。気分屋で、一見怖いが内心明るかったりする。