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泣いていた私の顔を見てその人は
「この子は辛い人生を送ってきました。今この子には天の風の神の教えにより、救いの手が沢山あるのですよ」そう言って高い声で笑いました。
そして、それだけ言うと、いかにもその人の存在が高貴であるかのような振舞をしながら「後はゆっくりしなさい」そう言って帰って行きました。
その人はいつもそうなんです、修業などには、一切来ませんし来たとしてもすぐに帰るのですから、呆れかえるほどにいい身分ですよね。
「ありがとうございます…ありがとうございます」両親は何度もそう言ってその人を見送っていました。
そんな両親を間近で見て、末っ子である私は何としてでも家族を取り戻さなくてはならないと、その思いで一心でした。
その日はもう夜でしたので、母が
「泊まって行くところがなければ泊まって行ってください」
そうやって言うので、私はそのご厚意に甘える事にしました。
*
「どうして天の風に入ったんですか?」
「そういう運命だった・・・としか言いようがない…」と父が暗い顔をして言う。
「今も修業はしていらっしゃるんですか」
「いいえ…今は家族の為に農業をして忙しいので…」父はあまり聞かれたくないかのように言ったのだった。
「農業…?」
「そう、野菜を沢山作っているのよ、さっきのカレーのお野菜もうちで作ったものなのよ、自分で作ったお野菜は特別美味しいのよ」母は少しでも私に良いところを伝えるように言ったのだった。
きっと今までその人に操られていたせいで苦労したに違いない…そう思うと涙が枯れ果てる程に私の頬を伝っていったのだった。
「あなたは私たちに感謝してくれているといったけど、私たちは会う人が沢山いたからあなたの事を思い出せないんだけど…ごめんなさいね…」
「いえ…そんな…」
…違うよお母さん、それはお母さんたちに会う為についた嘘なんだよ…。
「その時、私たちは幸せそうに見えたかしら…?」
意外な質問だった。
少なくとも私がお母さんたちに会えている時には幸せそうにしていたじゃない…。
「…どうでしょう」答えに困りながら、そう言った。
「さっき、あなたぐらいの娘が居るってそう言ったでしょう。私の娘は昔からすごく意志の強い子でね…私たちが良いと思ってやっている事でもきちんと自分の目で確認して自分の意見を流されないで言う様な子でね…」母はそう言いながら涙をポロリと流した。




